戦争の元凶は帝国主義だ 反帝・反スタ世界革命のみが世界戦争・核戦争阻止する道
戦争の元凶は帝国主義だ
反帝・反スタ世界革命のみが世界戦争・核戦争阻止する道
ウクライナでの戦争が果てしなく激化し、民間人の犠牲、戦火を逃れる難民、破壊し尽くされた街の様子が連日連夜報道される中で、世界中の人々が「どうすればこの戦争を止められるのか」と真剣に考え、闘いの方向性を必死に探し求めている。「人道」や「民主主義」を語ってロシア・プーチンを罵倒(ばとう)する米バイデン政権は、ウクライナ戦争を止める気などないばかりか、「最大の敵」である中国との戦争に向けた策動を一層加速させている。その先にあるのは破滅的な世界戦争・核戦争だ。この破局から人類を救い出し、一切の戦争と搾取・抑圧から全人間を解放できるのは、帝国主義とスターリン主義を打倒するプロレタリア世界革命だけである。このことを今こそ明らかにしなければならない。水樹 豊
米「最も重要な相手は中国」
イラクやアフガニスタンでの米軍によるおびただしい民間人虐殺や、イスラエル軍によるパレスチナ人民への数知れない残虐行為をほとんど無視してきた「西側メディア」は、ウクライナで発生した虐殺については即刻かつ無条件にロシア軍の仕業と断定し、猛然と糾弾している。日本の政府・マスコミも、ウクライナ側の発表を「すべて真実である」との前提で垂れ流し、戦争の原因についてはプーチン個人の「悪意」や「大ロシア帝国復活の野望」によるものとして描き出している。
他方、こうしたキャンペーンと一体で、米バイデン政権は過去最大規模の軍事予算(2023会計年度予算教書で総額8133億㌦)と核による先制攻撃をも辞さないとした核戦略の継続を発表し、ドイツをはじめとした欧州帝国主義諸国も安保・軍事政策の歴史的転換に乗り出し、日本では自民党や極右勢力がここぞとばかりに改憲=9条破棄や「核共有」などを声高に叫んでいる。これに対し、多くの労働者人民が強い違和感を抱き、怒りと危機感を募らせ、新たに行動に立ち上がっている。
今、必要なことは、かつてレーニンが「戦争と革命」と題した講演で強く訴えたように「この戦争がどういう階級的性格をおびているか、この戦争はなにが原因でおこったのか、それを遂行しているのはどの階級か、どのような歴史上、経済史上の条件がそれをひきおこしたのか、という根本問題」(レーニン全集第24巻、1917年5月)を解明することである。
まずもって明らかにすべきことは、この戦争を引き起こした最大の元凶であり、世界戦争・核戦争を準備してきた張本人はアメリカ帝国主義であるということだ。それも、第2次大戦後の世界体制における「唯一の基軸国」としての地位から没落する米帝が、その地位の維持と延命をかけて中国侵略戦争(世界第2の経済大国となった残存スターリン主義国家中国の転覆・打倒)を決断したことが、ウクライナ戦争の背景にあるということだ。
3月28日に米国防総省が議会に提出した「国家防衛戦略(NDS)」の概要はそれを如実に示している。NDSは中国を「最重要の戦略的競争相手」と位置づけ、「インド太平洋地域での中国の挑戦を優先し、次に欧州でのロシア」と優先順位を明確にした。ヒックス国防副長官は「ロシアによる悪の行動に立ち向かう時でさえ、国防戦略は中国が最も重要な相手だ」と記者会見で重ねて強調した。
ウクライナ戦争における米帝の狙いは、この戦争を通じてロシアを弱体化させ、国際的に孤立させ、中国とロシアの結託を阻止することにある。だからバイデンは、3月下旬の訪欧の際にも「停戦」や「和平」に向けた動きを一切見せず、それどころかトルコの仲介による停戦交渉のさなかの4月1日、新たに長距離砲撃可能な戦車のウクライナへの供与を発表するなど、停戦への動きを妨害してでも戦争の激化・長期化を図っているのだ。
バイデンがしきりに「民主主義と専制主義の戦い」と繰り返すのも、ロシアとともに中国を「専制主義陣営」と分類し、米帝を盟主とする「民主主義陣営」を対中国戦争同盟として「結束」させようとしているからだ。これ自体が、第2次大戦時に連合国が掲げた「民主主義とファシズムとの戦争」になぞらえたスローガンであり、米帝が世界戦争級の大戦争を本気で構えて動きだしていることを如実に物語るものだ。
NATO拡大が戦争招いた
ウクライナ戦争の今一つの決定的な背景は、ソ連崩壊以降の北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大と、米欧諸国によるウクライナの「反ロシア化」工作である。これらに追い詰められたロシア側が昨年来、NATO不拡大とウクライナのNATO非加盟の約束を求めたのに対し、米帝がこれをはねつけたことが、プーチンにウクライナ侵攻を決断させた直接の原因となっている。
もともとNATOとは、「ソ連の侵略に対抗する」という口実のもと、帝国主義諸国の軍隊の中で圧倒的・絶対的な実力をもつ米軍をヨーロッパ各国に展開することを法制度的に可能とするものとして、1949年に結成された巨大軍事同盟にほかならない。それは日米安保条約と並んで、米帝を基軸とする帝国主義戦後世界体制の最も重要な軍事的支柱をなしてきた。
だが、「ソ連からの防衛」を名目としていたはずのNATOは、91年ソ連崩壊とワルシャワ条約機構の解散後も存続し、「緩衝地帯」とされてきた東欧諸国を次々と加盟させた。99年から2020年までの5次におよぶ東方拡大で加盟国は16カ国から30カ国へと膨張。21年の推計で加盟国軍隊は約332万人、加盟国の国防費総額は約1兆485億㌦で全世界の国防費の実に57%を占める。
しかも、この東方拡大はそれ自体が極めて暴力的で犯罪的な人民虐殺の侵略戦争を伴った。1999年の旧ユーゴスラビアへのNATO軍の空爆では、78日間で総計1万回以上もの爆撃が行われ、民間人だけで死者1500人以上、負傷者は5千人以上に達し、150万人が避難民となった。またNATO側が認めただけでも約3万1千発もの劣化ウラン弾が使用され、想像を絶する放射能汚染が広がった。2001年以降20年にわたるアフガニスタン侵略戦争にも参戦した。それらは、バイデンや岸田がロシアを非難して言う「戦争犯罪」「力による現状変更」以外のなにものでもなかった。
こうしたNATO拡大を経て、今やロシアから見た「緩衝地帯」はベラルーシとウクライナの2国を残すのみとなった。しかも、08年4月のNATO首脳会合で、当時の米大統領ブッシュが仏独の反対を押し切ってジョージアとウクライナの「将来的な加盟」を認めたことにより、これに猛反発するロシアとの間で、ウクライナ国内は親ロシア派と親欧米派が大統領選などで毎回激突する分断状態に追い込まれたのである。
反ロ軍事国家へとウクライナを改造
NATO拡大と一体で、ファシスト勢力をも使ったウクライナの「反ロシア」化工作が進められた。
それは特に2000年代以降顕著となったが、決定的な転機となったのが14年のクーデターである。13年11月〜14年2月にかけて、親ロシア派=ヤヌコビッチ政権の腐敗、汚職、経済格差、新興財閥(オリガリヒ)の支配に対する怒りが、首都キエフなどで巨大なデモとなって爆発した。だが、この運動はやがて、社会主義者への武装襲撃や労働組合事務所への放火など白色テロルを繰り返す極右ファシスト勢力に乗っ取られてしまう。他方、この過程でヌーランド国務次官補(当時)や米共和党の元大統領候補マケインといった米政界の実力者が次々と現地入りし、反政権派を「激励」して回った。
そして極右勢力のテロや銃撃が相次ぐ中でヤヌコビッチはロシアに逃亡、代わって成立した親欧米派=ポロシェンコ政権にはファシスト団体メンバーが数多く入閣した。また、この過程でウクライナ内務省管轄の国家親衛隊に正式に編入された武装勢力「アゾフ大隊(後に連隊)」は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書でも、親ロシア派とみなした地域や住民に対し集団略奪、不法拘束、強姦(ごうかん)、拷問などの残虐行為を繰り返したと明記されていた。
米政府はそれらをまったく意に介せず、その後7年間にわたり総額25億㌦以上の軍事援助を供与し、ウクライナを「反ロシア軍事国家」へとつくりかえたのである。
5・15闘争は歴史的決戦に
19年のウクライナ大統領選では、ロシアとの交渉による東部問題の解決や「言葉や宗教による分断を終わらせる」といったスローガンを掲げたゼレンスキーが圧倒的支持を得て当選した。だが政権獲得後は、国際通貨基金(IMF)から支援を受ける条件の一つである農地売買の自由化など財閥に有利な新自由主義改革を続け、支持率は今年冒頭には19%まで下落していた。もともと基盤の弱いゼレンスキーは、政権運営が困難化する中でますます強くNATO加盟を求め、昨年6〜7月にはNATO諸国と日本、韓国、オーストラリアなど32カ国と合同で過去最大の海軍演習「シーブリーズ2021」を強行するなど、あからさまな戦争挑発を繰り返した。
そして戦争開始と同時に戒厳令・総動員令を発し、18〜60歳の男性の出国を禁止し、また議会第2党を含む11の野党に活動停止を命じた。民間人に避難することを禁止した上で、武器を持たせてロシア軍と戦うよう仕向けたのである。米欧を後ろ盾とする新自由主義者ゼレンスキーは、ウクライナ人民を逃げ場のない戦火に追いやった張本人だ。このゼレンスキーの国会演説を自民党から日本共産党までが絶賛したのは、国家の命令で戦争に行くこと、そして戦争で死ぬことへの賞賛にほかならない。
そして今、米帝がウクライナを地獄のごとき戦場にしながら、自らの利益のための対ロシア戦争をやらせているのとまったく同じように、次は中国との戦争で南西諸島を丸ごと戦場に変えることが狙われているのだ。「復帰」50年5・15沖縄闘争を、世界戦争・核戦争阻止をかけた歴史的決戦として全力で闘おう。
レーニンは先に引用した講演の中で、「労働者革命は全世界で成長しつつある」と語り、「資本家の政府がはじめた戦争は、労働者革命によってのみおわらせることができる」と訴えた。また、同じく第1次大戦中に亡命中の党員を集めた会議で、次のように決議した----「労働者階級を愚弄(ぐろう)する一つの形態は、平和主義であり、平和を抽象的に説くことである。......革命的大衆行動への呼びかけを伴わない、現在の平和宣伝は、ただ幻想をひろめ、ブルジョアジーの人道主義にたいする信頼をおこさせることによってプロレタリアートを堕落させ、彼らを交戦国の秘密外交にもてあそばれるものにしかねないものである。一連の革命がなくとも、いわゆる民主主義的平和は可能であるという考えは、とくにひどい誤りである」(レーニン全集第21巻「ロシア社会民主労働党在外支部会議」、1915年2月)
政府間の交渉や取引で現在の戦争が「平和的に」解決することはありえず、また社会の根底的変革を伴わない「護憲運動」では戦争をなくすことはできない。「私たちが闘うべき相手は自国政府だ」(洞口朋子杉並区議)----この階級的立場を全人民に押し広げ、労働運動・学生運動を力強くよみがえらせよう。国境を越えて団結した労働者人民の国際反戦闘争と自国政府打倒の闘いで、帝国主義とスターリン主義を打倒するプロレタリア世界革命への道を切り開こう。これが世界戦争・核戦争を阻止し、この世界から一切の戦争をなくす唯一の道である。