教員免許更新制廃止を口実に 戦争に向け研修制度を大転換
週刊『前進』04頁(3238号03面03)(2022/04/04)
教員免許更新制廃止を口実に
戦争に向け研修制度を大転換
新自由主義の大崩壊が世界戦争・核戦争に転化する中で、岸田政権は今国会で教員免許更新制廃止に向けた「教員免許法の一部改正」案と「教育公務員特例法(教特法)の一部改正」案を上程し、7月1日から施行しようとしている。免許更新制廃止は新自由主義教育の大破綻を示している。だが、免許更新制の廃止・「発展的解消」と称して出された教特法改悪案は、戦後研修制度を大転換させ、教育労働者に再び戦争教育を担わせる攻撃だ。連合の崩壊と産業報国会化が激しく進行している。教育労働者は連合幹部をぶっとばし、今こそ改憲・戦争阻止へ立ち上がり、戦争教育攻撃を粉砕しよう。
新自由主義教育の崩壊と新たな攻撃
昨年8月、萩生田光一文科相(当時)が教員免許更新制の廃止・「発展的解消」を表明し、中央教育審議会が教特法改悪案の基となる「新たな教師の学びの姿の実現」を答申した(以下「答申」)。免許更新制は、過労死ラインの過重労働を強いられている教員が10年ごとに講習を受け、試験で認定されなければ免許状剝奪(はくだつ)で職を失うという制度である。その核心的狙いは国・当局にとって都合の悪い教員を〝不適格教員〟として排除することだ。だが、この負担と脅しの制度は、若者の教職希望を激減させると共に、免許状の更新切れで教員不足に拍車をかけた。産休、育休などの代替教員が見つからず授業が出来ないという深刻な事態を生み出し、教育労働者の怒りが噴出する中で制度はわずか10年で「廃止」。新自由主義教育政策の大破綻が明らかとなった。
追い詰められた政府・文科省は、制度廃止をも口実に戦争に向かって戦後の教員研修を大転換させようとあがいているのだ。
懲戒処分と評価で国家主導の研修に
第一の問題は、任命権者(教育委員会など)や学校管理者(校長)に対し、教員の研修計画や研修履歴の記録・管理や受講の奨励を義務付けることである。「答申」では、独立行政法人教職員支援機構や教育委員会が、文科大臣が策定した「校長及び教員としての資質の向上に関する指標」に基づいて研修の中身を「指導」するとしている。これは国家主導で研修を現場に強制する、文字通りの「国定研修」だ。教員の主体的・自主的研修権を奪い、教育と教員を国家が統制する戦前の師範学校への回帰が狙われている。
また、受講履歴がデジタル化されることも重大である。これは思想の管理・統制からレッドパージに行き着くものだ。さらに、受講履歴で「何が身についたのか」を「可視化」し人事評価に結びつけるともいう。受講に「主体性を有しない教師」には職務命令が出され、懲戒処分を科すことまで言及している。
研修と人事評価の結合は2016年に安倍政権下で狙われたが、現場の抵抗によって頓挫(とんざ)した。今回それを復活させ、「受講の奨励」「指導助言」を「人事に関わる期首面談」すなわち人事評価における校長と教員の面談で行えという。研修を人事評価で強制するのは教員研修の根本的転換である。
日教組は反戦闘争の先頭に立とう!
もう一つの問題は、「個別最適な教師の学び」(「答申」)を打ち出したことである。「一人一人の教員の個性に即した」研修として民間企業の研修コンテンツを使うという。これは、人事評価と一体で教員に競争と分断をもたらす。教育は本来、複合的な内容を持ち、教育労働者の協働によって成り立つ。それを根本から破壊するのだ。すでに教職員支援機構や民間のオンライン研修がコロナ下で推進され、学年や教科担当間で授業を見せ合う校内研修の機会が奪われている。教育の民営化・外注化攻撃であり、教職員の団結破壊・組合つぶしだ。岸田政権は、教育労働者を分断し「国定研修」で戦争教育に動員することを狙っている。だがそれは、「教え子を戦場に送らない」を原点に自主研修を闘い取ってきた教育労働者の怒りに火をつけるものだ。今こそ戦争教育を阻止する階級的教育労働運動を復権させ、反戦闘争の先頭に日教組の旗を打ち立てよう。