戦争遂行へ自治体デジタル化 個人情報めぐる攻防が焦点に
戦争遂行へ自治体デジタル化
個人情報めぐる攻防が焦点に
自治体が持つ約2千に上る個人情報保護規制を解体し、国と資本が全面掌握する自治体DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル化改革)との攻防が始まった。それは改憲・戦争=デジタル独裁・労組破壊との闘いだ。これと真っ向から対決し新自由主義を葬り去る自治体労働運動の路線を打ち立てよう。
新自由主義大崩壊下の絶望的な攻撃
2021年6月にデジタル関連法が成立し9月にデジタル庁が発足。11月デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)とデジタル田園都市構想実現会議が新設された。マイナンバーカードなどデジタル関連予算は22年度当初予算案だけで1兆3千億円に迫るという。デジタル化に破格の規模の交付金が出ることに飛びつき全国の自治体で巨額のデジタル関連予算が計上され、ウクライナ―中国侵略戦争情勢下で「国と自治体のあり方を変える」DX攻撃が本格化している。
岸田政権は自治体の個人情報保護規制の暴力的な突破へ、25年度内に自治体の主要20業務のシステム標準化(表)を水路に地方自治を破壊し、窓口業務の一掃などデジタル大合理化と住民生活の全面掌握を狙う。
しかし自治体DXは「AI万能」の体系化された攻撃などではない。最末期帝国主義の新自由主義大崩壊の姿そのものであり、労働者階級が真っ向から立ち向かえばなんの整合性もないまま崩れ去るものでしかない。JRが鉄道事業でなくなりJPが郵便事業でなくなる―全産業での新自由主義大崩壊の究極が自治体DXだ。自治体が自治体でなくなり、人間社会を維持する力も展望も失って大崩壊の道を転げ落ちている。
支配階級はコロナ対策の破産を「デジタル敗戦」などと位置づけて、ショックドクトリンとして自治体DXを進めようとしている。だがコロナ以前に新自由主義は社会を崩壊させていた。コロナ対策の破産は、その顕在化が核心だ。
コロナ下で多くの労働者は自らの労働こそがエッセンシャルワークであり、対人・対面の現場労働が社会を回し社会を社会たらしめていると確信した。その対極で、労働の担い手を労務管理し査定評価し分断支配し強搾取しようとする資本家どもの正体を見ぬいた。戦後革命期にも比すべき巨大な階級的覚醒はもはや封殺も根絶もできない。戦争切迫下で労働者階級がいよいよ社会の主人公として登場する時代が到来した。
「一人も取り逃がさない」独裁狙う
日帝は「DXで便利な世の中になる」かのような宣伝を十分に流布できないままこの事態を迎えた。ここに自治体DX攻撃の致命的弱点がある。もはやデジタル化は「うさんくさい、危険な、監視国家化のための、金持ちのためだけの、労働者の誇りと団結を否定し職場や地域を解体するもの」としてしか登場できない。その不正義性と破綻性は明らかである。
「デジタル化で一人も取りこぼさない社会」とは「デジタルの網で一人も取り逃がさない」ということだ。人々の全生涯・全生活を残らずデータ化し、自治体の窓口的な裁量を排して数値化し、振り分け、掌握して「利活用」、民間開放して商品化する。そのために個人情報保護条例の規制を大幅緩和し一元化。行政権力として「収奪・給付打ち切り」から「徴用・徴兵」まで無慈悲に執行できるようにする。戦後の国と自治体のあり方を根本から変える、まさに改憲・戦争国家化攻撃そのものだ。
全国の職場・地域から総反撃しよう
「壁」は2千個の個人情報保護規制だけではない。政府は20の自治体主要業務を「標準化」するとしている。20業務にかかわる住民生活のための数千もの「上乗せ・横出し」条例(表)の一元化=廃止を暴力的に迫ってくる。
しかし条例の「上乗せ・横出し」の背景には、地域住民の切実な要求と自治体労働者の職場闘争・職場支配権の闘いがある。介護保険、障害者福祉、公害対策、安全基準などをめぐり自治体労働者と地域住民が築いてきた全てを根絶しようとするなら、それは生活と地方自治に対する「上からの内乱」攻撃だ。それをやすやすと許す階級的力関係にあるだろうか。労働者・住民の反乱は必至だ。自治体業務をめぐる職場攻防に勝ち抜き、地域の共同闘争で勝利する階級的な自治体労働運動の出番だ。
闘う労働者・労働組合は新自由主義と闘い勝利してきた動労千葉・関西生コン支部・港合同の3労組のもとに結集し、コロナ下での闘いを貫いて「労組なき社会」化と闘いぬいている。ウクライナ国際反戦闘争に総力で決起しよう。中国侵略戦争の内乱・革命への転化へ、職場生産点から闘いの根底的組織化を進め11月労働者集会の大結集へ進撃しよう。
(川上憲一)
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システム標準化対象20業務とは
・住民登録等:住民基本台帳、選挙人名簿管理、戸籍、戸籍附票、印鑑登録
・地方税:固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税
・社会保障:国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、児童手当、生活保護、健康管理、就学、児童扶養手当、子ども子育て支援
「上乗せ・横出し」条例とは
自治体独自の条例や財源で法令を超える規制や給付をすること。
介護保険を例にとれば、支給限度額を自治体財政で引き上げるのが「上乗せ」、介護保険が適用されない利用料の一部を自治体が負担するのが「横出し」。環境規制では、国の法令基準を上回るのが「上乗せ」、法令以上に規制対象を拡大するのが「横出し」。