焦点 「佐渡金山」世界遺産推薦 強制労働の歴史を抹殺し居直る
週刊『前進』04頁(3231号03面03)(2022/02/14)
焦点
「佐渡金山」世界遺産推薦
強制労働の歴史を抹殺し居直る
岸田政権は2月1日、佐渡金山(新潟県)の世界遺産登録のために、ユネスコ(国連教育科学文化機関)への推薦を閣議決定した。第2次大戦中、日帝が植民地支配していた朝鮮から徴用令によって強制連行した朝鮮人に奴隷労働を強いていた歴史を抹殺しようとする許しがたい暴挙である。
戦時中、佐渡金山では1500人を超える朝鮮人が強制労働させられた。過酷な労働を強いられ、逃亡すれば逮捕され投獄された。1140人分の賃金未払いの記録も残っている。それは誰も否定できない歴史の事実である。ところが、戦時の朝鮮人強制労働に関する韓国側の主張を、林芳正外相は「独自の主張は受け入れられない」と拒否し、韓国政府に抗議までしたというのだ。とんでもないことである。
安倍、高市らが躍起に
岸田政権は、この遺産登録推薦が韓国などから猛反発を受けることを十分知りながら強行した。1月18日に安倍晋三が顧問を務める議員連盟「保守団結の会」が速やかな推薦を政府に求める決議をまとめ、安倍を先頭に躍起になって動いた。通常国会の予算委員会で、与党質問の最初に立った高市早苗自民党政調会長は、質問の第1項目に佐渡金山問題を取り上げ、「国家の名誉にかかわる事態だ。必ず今年度に推薦を行うべきだ」と要求した。2015年に安倍政権下で、長崎市の端島(通称・軍艦島)などの「明治日本の産業革命遺産」を登録しようとした際、軍艦島などで朝鮮人労働者の強制労働があった歴史を否定するものだと韓国などが強く反対した。そこで日本はユネスコ世界遺産委員会で、「意思に反して連れてこられ、厳しい環境で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいた」というあいまいな文言を入れ、「犠牲者を記憶にとどめるために適切な対応をとる」と言い繕って、登録をもぎ取った。ところがそんな約束は全くほごにされたため、ユネスコは昨年7月、「日本の対応は不十分」と決議した。これに応えることもせず、次なる同種の世界遺産登録を求めることなど破廉恥の極みだ。
一方で、日本は南京大虐殺の歴史が15年にユネスコの「世界の記憶」(旧・世界遺産)に登録されたことに猛反発し、「加盟国が反対すれば登録されない新しい仕組み」を要求した。歴史的に明白で国際的にも周知の事実である南京大虐殺をなかったことにしようという許しがたい要求だ。その一方で、韓国の猛反対にもかかわらず「佐渡金山」推薦を強行する。まったく恥知らずな「ダブルスタンダード」である。しかしどちらも、日帝の侵略と侵略戦争、植民地支配と強制連行、奴隷労働などの国家犯罪の歴史を謝罪し償うことに背を向け、居直るものだ。