岸田の医療破壊を許すな 「非常時」あおり戦時医療への転換狙う 労組の闘いこそ命守る力

週刊『前進』04頁(3231号02面02)(2022/02/14)


岸田の医療破壊を許すな
 「非常時」あおり戦時医療への転換狙う
 労組の闘いこそ命守る力


 新型コロナの全国的な感染爆発が続いている。全国の感染者数は連日10万人規模となり、19都府県でコロナ患者向けの病床使用率が50%を超えている(2月2日現在)。しかし、政府は3回目のワクチン接種を叫ぶのみで十分な対策を行わず、逆にさらなる医療破壊・大合理化を強行しようとしている。絶対に許してはならない。医療・介護・福祉現場で労働組合が闘いに立ち上がり、新自由主義攻撃を終わらせることこそが、労働者民衆の命と健康を守る力だ。

元凶は新自由主義攻撃だ

 終わりの見えない「第6波」の感染爆発の中で「感染のピークアウトも近い」などと報道されているが、高齢者や基礎疾患を持つコロナ感染者の重症化は進行している。また、コロナ患者対応の病床にあてていたために一般病床が不足し、救急車のたらい回しや入院拒否が激増している。加えて、コロナ下でのがん検診の手控えや治療延期の結果、どれほど多くの命が失われているか。
 救える命が救えない現実は、病床数も医師数も極端に抑制してきた新自由主義とその崩壊の結果だ。日本の医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べて人口10万人あたりで約13万人も不足し(2018年時点)、過労死ライン(月80時間以上の時間外・休日労働)の3倍働く医師が3千人以上いると言われてきた。医療崩壊の責任の一切は、コロナ下で病床や医師の数を増やすどころか、さらに削減する政策を進めている政府や小池百合子都知事・吉村洋文大阪府知事らにある。

介護施設の現実を見ろ!

 コロナ「第6波」下の医療・介護現場の現実は壮絶だ。とりわけ、介護施設では1月31日までの1週間にクラスターが過去最多の249件(厚生労働省発表)発生した。
 ある特別養護老人ホームでは、職員の感染をきっかけに入居者2人が感染した。1人はすぐに入院できたが、もう1人が入院できたのは発症から7日経ってからだった。施設内では通常110人の利用者を5人(各階2・5人)の夜勤者で介護している。しかし今回、片方の階ではわずか2人で介護しなければならなかった。また入居者が陽性と確定するまでの数日間、有症状者と無症状者がビニール1枚でしか仕切られていない大部屋で過ごす状況が強いられていた。
 組合は直ちに各階3人の6人夜勤体制を要求し、ショートステイ(短期入所)の利用者を家に帰し、そのスペースをゾーニング(清潔な区域とウイルスによって汚染されている区域を区分けすること)するよう求めたが、施設長は「ショートステイの利用者・家族の気持ちも大事にしないと」などと言って拒否した。ところが翌日になって入居者の陽性が確定し入院できないとわかると、施設側はあわててショートステイ利用者を家に帰し、ゾーニングを開始した。
 介護施設の「3対1」(入居者3人に対し1人の介護職員または看護職員)の人員配置基準ギリギリに抑えた資本の人員抑制の矛盾がコロナ感染で爆発しているにもかかわらず、デタラメで場当たり的な資本の方針が現場に押しつけられた。疲弊しきった現場からは、「具合が悪くなったもん勝ち」「元気な人だけが大変な労働を強制される」との声まで出たという。

労組の実力闘争で感染の拡大とめた

 しかし組合執行部は「ここで闘うことをあきらめたら団結も労働組合も壊される。その行き着く先は医療・介護労働者の戦争動員だ」と決意し、必死の闘いを展開してきた。職員が集まった場で「2人夜勤ではダメだ!」と施設側に要求し、また入居者に陽性者が出た場合、職員はベランダから入ってベランダから帰る(他の利用者には絶対に接触しない)ルートを実力で認めさせてきた。反合理化・安全闘争を闘う労働組合が資本から職場支配権をもぎり取るなかで、いまだに入居者2人のみに感染を抑え込んでいるのだ。
 「今は非常時だから」と理不尽を強制する国家や資本に、「国・資本の危機だからこそ闘う」と真っ向から対決する労働組合の団結こそが、命を守り戦争を止める根源的な力だ。

公的医療放棄は棄民政策

 岸田政権は公的医療を投げ捨て、文字通りの棄民政策と戦時医療への転換を狙っている。そもそも日本の検査数は人口比で世界139位という少なさであり、そのもとでの感染爆発で多くの命が奪われてきた。これに対して政府は、若年層で基礎疾患がない人などを対象に、自主検査だけで感染したと判断する〝みなし陽性〟の方針を出した。保健所や医療機関による検査や診療を行わず、全て自己責任にするということだ。
 また岸田政権は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」から、治療費が全て自己負担となる「5類」に引き下げようと動いている。「保健所の負担を減らすため」として、公的医療の拡充ではなくさらなる削減を進めようというのだ。

賃上げ・増員掲げ闘い巻き起こそう

 また、政府の規制改革推進会議は昨年12月20日、センサーや介護ロボットなど情報通信技術(ICT)を活用して、「3対1」の配置基準を4対1に緩和するという方針を打ち出した。「団塊の世代」が75歳を迎える2025年までに病床を16〜20万床削減する「地域医療構想」をコロナ下で加速させ、介護にもデジタルトランスフォーメーション(DX)を全面的に導入し、「合理化」と高齢者福祉の切り捨てをとことん進めるものだ。ネット上では「3人でも大変なのに、4人をみろというのか」「提案した人は現場と現実を知らない」「排泄(はいせつ)と入浴介助ができるロボットがいるのか」などと怒りが噴出した。
 しかし厚労省は2月7日、4月から特別養護老人ホームや有料老人ホームなどを対象に実証事業を開始する方針を示した。「40年度には19年度に比べて約69万人多い約280万人の介護職員が必要になる」との推計に基づく「介護人材の不足」を理由にしている。しかし、これは自然現象でも何でもなく、徹底した新自由主義とその大崩壊の結果だ。
 医療を破壊して感染症対策の原理原則までも投げ捨てる帝国主義のもとで、まともなコロナ対策などありえない。新自由主義を終わらせ、労働者民衆自身の手で社会をつくり直すことこそが根本的解決だ。「賃金を上げろ、配置基準以上に増員しろ」を真正面から掲げ、医療・介護現場から労働組合の闘いを巻き起こそう。
このエントリーをはてなブックマークに追加