焦点 嘉手納爆音訴訟 日米安保揺るがす4万人の決起
週刊『前進』04頁(3230号03面04)(2022/02/07)
焦点
嘉手納爆音訴訟
日米安保揺るがす4万人の決起
1月28日、米軍嘉手納基地周辺8市町村の住民3万5566人(1万2049世帯)が、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めや損害賠償などを求める「第4次嘉手納爆音差し止め訴訟」を那覇地裁沖縄支部に提訴した。原告数は、1982年の第1次訴訟の約40倍で、2011年の第3次訴訟から1万3千人増加、米軍基地の騒音をめぐる国内の訴訟として過去最多となった。これとは別にうるま市を中心とした5市町村の住民5028人が1月21日、同じく嘉手納基地の米軍機の飛行差し止めや損害賠償を求めて提訴しており、沖縄の本土「復帰」50年を前に、合わせて4万人を超す住民が新たに爆音訴訟に決起した。
子育て世代、続々原告に
今回の第4次訴訟の特徴は、中国侵略戦争の切迫下で著しく激増した基地被害を受け、この1年間で原告が急増したこと、なかでも子育て世代が原告の3分の1以上を占めたことだ。訴状は「基地周辺における航空機騒音被害は単なる感覚被害ではない。原告ら周辺住民の日常生活を破壊し、個人の人格の維持・形成・発展に不可欠の基盤を根底から覆そうとするものである」と指摘。さらに「基地周辺では墜落事故も多数発生している」「排ガス、汚水、油、最近ではPFOS、PFOA等の流出事故も発生している。大気汚染、土壌汚染、水源汚染もまた、原告らが等しく被っている被害である」として、それら一切が住民の人格権、平和的生存権を侵害するものだと断罪している。この受忍限度を超えた基地被害に対し、「復帰」後に生まれた新しい世代が決意を固め、続々と原告団に加わった。
米軍機飛行を止めろ!
過去3度の嘉手納爆音訴訟をはじめ、米軍基地の騒音被害をめぐる裁判では、いずれも騒音の違法性が認められ、損害賠償が命じられている。しかし、その違法状態の解消に不可欠な「米軍機の飛行差し止め」については、「訴訟の当事者は国と原告であり、第三者である米軍の行為を止める権限を国は有しない」とする「第三者行為論」をもって却下されてきた。日米安保条約と日米地位協定のもとでは、米軍の活動が違法であろうと日本政府はそれを規制・制限する立場にないというのである。だが、米軍の活動に不可欠な施設を提供・固定化し、「思いやり予算」から「同盟強靭(きょうじん)化予算」と名を変えた費用を負担し、過去の爆音訴訟で命じられた賠償金の支払いを全額肩代わりまでしてきたのはほかならぬ日本政府である。訴状はこの事実を挙げ、被告=国は「米国の侵害行為に加功している」と指摘。「第三者行為論」をたてに司法判断を回避するのは誤りだとして、あらためて飛行差し止めを求めた。
そもそもこのような住民の命と生活をことごとく蹂躙(じゅうりん)する米軍の行為が、安保条約と地位協定のもとで何の違法性も問われず、その先に住民を再び戦火にたたきこむ新たな戦争が準備されているというなら、そんな日米安保は本土―沖縄の労働者階級人民の闘いで徹底的に粉砕する以外にない。一昨年提訴された第3次普天間爆音訴訟(原告5347人)に続く嘉手納爆音訴訟4万人の決起は、日米安保そのものを根底から揺るがす新たな闘いの始まりである。この決起に応え、米日の中国侵略戦争阻止、沖縄米軍基地撤去=安保粉砕・日帝打倒の闘いを全国で巻き起こそう。