経団連・経労委報告を批判する 新自由主義崩壊下の22春闘 戦争阻止、闘う労組の再生へ

週刊『前進』04頁(3230号02面03)(2022/02/07)


経団連・経労委報告を批判する
 新自由主義崩壊下の22春闘
 戦争阻止、闘う労組の再生へ


 経団連は2022年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)を公表した。新自由主義崩壊と中国侵略戦争情勢下の22春闘に対する資本の基本方針だ。キーワードは「労使協働」。噴出する労働者の怒りに恐怖し「新自由主義の流れをくむ行き過ぎた資本主義の是正」などと言いつつ、極限的な雇用・賃金破壊へ、連合など労働組合に「パートナー」としての協力を求めた。それは産業報国会への道だ。戦争に絶対反対し、連合打倒、闘う労組再生の22春闘に立とう。

岸田「新しい資本主義」を受け労資「協働」叫ぶ

 経労委報告のサブタイトルは「ポストコロナに向けて、労使協働で持続的成長に結びつくSociety(ソサエティ)5・0の実現」だ。これが全編を貫いている。経労委報告は、岸田に呼応して「新しい資本主義」を唱え、「サステイナブル(持続可能)な資本主義の確立」を掲げた。資本主義の存続自体が問題となる危機の中で、唯一すがるものとして打ち出したのが労資の「協働」である。それは極限的な雇用・労働・賃金破壊による一層の労働強化・強搾取を労働者に強制するものであり、労働組合の全面的な屈服・協力なしにはありえない。
 〈コロナ×大恐慌〉情勢の進行と新自由主義の大崩壊、資本主義体制の最期的危機が没落帝国主義・日帝を追いつめている。岸田政権は、その絶望的突破をかけて中国侵略戦争に向けた改憲と戦争国家化・大軍拡に突進する一方、労働者階級の革命的反乱におびえ、全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への大弾圧とJR東日本の「業務の融合化」・大合理化を攻撃の先端とする労働組合の解体、「労組なき社会」化によってなんとか抑え込もうとしている。
 経労委報告は、春闘をはじめ資本と対決する労働者・労働組合の職場生産点の闘い、階級的闘いを一掃しようとする意図を隠そうともしない。「未来づくり春闘」を掲げる連合の22春闘方針の「意義」をたたえ「基本的な考え方において共通している」と絶賛。労働組合を「持続的な発展に取り組む経営のパートナー」として「未来志向の労使関係を目指す」とした。
 中国侵略戦争と国内階級戦争に対する労働者階級の革命的反乱が現実のものとなろうとしている中で、連合を旗振り役とする労働組合の帝国主義労働運動への最期的変質・解体、産業報国会化を露骨なまでに求めているのだ。

雇用・賃金破壊し分断と強搾取狙う

 経労委報告は、雇用・賃金破壊を加速し、労働者の分断と強搾取を狙う意図をむき出しの形で示している。
 これまでの「インプット(労働投入)を効率化する働き方改革フェーズⅠを継続しながら、アウトプット(付加価値)の最大化を目指すフェーズⅡへの深化」を求めた。フェーズⅠ継続の取り組みとしては、業務プロセスの見直し・改善、業務の廃止、デジタル技術を活用した業務の自動化・遠隔化への取り組みを具体例として挙げた。それは労働者の大量解雇・非正規職化であり、安全崩壊に直結する。JR資本の「業務の融合化」・大合理化、山手線の自動運転などが念頭にあることは間違いない。
 さらにフェーズⅡとして「働き手の働きがいを高める」ことを強調した。そのためにと称して具体的には労働時間法制の見直し(=撤廃)と裁量労働制の対象業務拡大、終身雇用・年功型賃金などの日本型雇用システムの見直しとジョブ型雇用(=定期昇給なし・解雇自由)の導入、定昇・退職金など賃金制度・評価制度の見直し、「円滑な労働移動」と金銭解雇制度の創設などを求めた。
 要は評価制度などあらゆる手法で労働者を分断し、賃下げと解雇、出向・転籍などの脅しでむち打って「過労死」にいたる極限的な労働を強いて強搾取し、使い捨てにしていくということだ。労働者として絶対に認めることはできない。怒りはいよいよ燃え上がる。

職場生産点から反撃し崩壊迫る連合本部倒せ

 国鉄分割・民営化以来の新自由主義は、改憲・戦争国家化に向かって階級的労働運動の中心に位置した国鉄労働運動を狙い撃ちし、総評解散・連合結成を推進軸に非正規職の急速な拡大と低賃金化を進めてきた。
 労働組合の力が著しく後退する中で、今や非正規職労働者が全労働者の4割を占め、労働者の平均賃金は主要先進国の中で唯一、大きく下落してきた(グラフ参照)。
 連合の果たしてきた犯罪的役割は重大だ。今や連合会長・芳野友子は、岸田の「新しい資本主義実現会議」に経団連会長・十倉雅和と共に列席する。全トヨタ労連(35万8千人)は評価制度による「定昇ゼロ」を認めたのに続き、22春闘では一律賃上げの要求を廃止。1月の中央委員会では、夏の参院選で連携する政党を野党に限定せず超党派で政策実現を図ると決定した。資本と自公政権を支える産業報国会・大政翼賛会への歴史的な踏み切りだ。
 しかし今や連合は大崩壊過程に入った。〈コロナ×大恐慌〉が労働者を直撃している。ありとあらゆるところから怒りの炎が燃え広がる中で、誰が国と資本の手先に従うというのか。
 労働者は改憲・戦争への「労組なき社会」化と産業報国会への道を拒否する。階級的労働運動の旗を振る3労組共闘が情勢を揺るがしている。労働者・労働組合を中心に、全学連と共に改憲・戦争阻止!大行進運動による中国侵略戦争阻止の反戦・反基地闘争が取り組まれている。関西生コン支部弾圧粉砕の闘いが当該を先頭に全国に広がり、動労千葉・動労総連合を軸に国鉄1047名解雇撤回、JR「業務の融合化」・総非正規職化粉砕の闘いが繰り広げられている。医療職場のストライキ決起が続き、職場生産点から闘いの火の手が上がっている。連合本部を打倒し階級的労働運動が躍り出る時だ。

総非正規職化阻止一律大幅賃上げへ

 〈コロナ×大恐慌〉情勢下で、「希望退職」と称する退職強要が全産別で広がっている。KDDIや日立製作所などは、労働組合の屈服・協力によってジョブ型雇用を全社員に拡大し、総非正規職化にかじを切った。「働き方改革フェーズⅡ」の攻撃が本格的に始まっているのだ。
 電気・ガス、しょうゆやハム・ソーセージなど生活必需品が軒並み値上がりしている(表参照)。消費者物価指数が2%上がれば1世帯の家計負担は年5万6千円増えるという。その分が実質的な賃下げとして労働者を直撃する。分断を許さず正規職・非正規職の一律大幅賃上げが絶対に必要だ。雇用も賃金も闘うことでしか守れない。22春闘を反転攻勢の時としよう。

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経労委報告
・サブタイトル「労使協働で持続的成長」
・円滑な労働移動、ジョブ型雇用の導入
・一律賃上げ(=春闘の根幹)を否定

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