大崩壊する戦後世界体制 ウクライナめぐり一触即発 世界戦争の危機を革命へ
大崩壊する戦後世界体制
ウクライナめぐり一触即発
世界戦争の危機を革命へ
ウクライナをめぐって米帝―北大西洋条約機構(NATO)とロシアが全面的な軍事衝突寸前の一触即発状態に突入している。〈コロナ×大恐慌〉情勢と新自由主義の大崩壊がもたらす戦後世界体制の最後的崩壊、何より基軸国・米帝の危機が、ウクライナと台湾、中東を焦点に世界(核)戦争に転化しつつある。とりわけロシア・ウクライナ危機と中国侵略戦争危機は連動している。労働者人民が生きる道は、反帝国主義・反スターリン主義世界革命以外にない。世界の労働者人民と連帯し反戦闘争に立ち上がろう。
米欧ロが軍事行動へ動く
昨年10月末以来、10万人規模のロシア軍部隊がウクライナ国境周辺に集結し演習を繰り返している。昨春に続くものだ。このなかで米ワシントン・ポスト紙は12月3日、米政府情報を分析してロシア軍が17万5千人に部隊を増強してウクライナに侵攻する計画を持っていると報じた。ウクライナでの戦争が一挙にリアリティーを増した。
実際、ロシア軍は昨年9月に史上最大の大演習を実施し、核兵器の近代化も進めている。今年1月上旬にはロシア軍の空挺(くうてい)部隊を先頭に、旧ソ連6カ国で構成する集団安全保障条約機構(CSTO)の「平和維持部隊」がカザフスタンに急派された。これはウクライナ侵攻の予行演習になった。2月10日に開始する予定のベラルーシ軍との合同演習のためにロシア軍部隊がすでにベラルーシに送り込まれている。ロシア海軍の黒海、北方、バルト各艦隊は1月24、26日、演習を開始した。ロシア軍はウクライナを東西南北、四方から包囲している。数週間以内に侵攻が可能だ。
米帝をはじめNATO加盟諸国は昨秋以来、ロシア軍部隊のウクライナ国境付近からの撤収を要求してきた。しかしロシア・プーチンはNATO不拡大の保証を求め、それが受け入れられない場合は軍事を含むあらゆる措置をとると述べた。米帝・NATOは、ロシアがウクライナに侵攻したら、かつてなく厳しい経済制裁を科すと牽制(けんせい)、米・バイデンは25日、「第2次世界大戦以降、最大の侵略となる。重大な影響を世界中にもたらす」と警告した。
他方、助けを求めるウクライナ大統領ゼレンスキーに米帝は、3億㌦の軍事援助を約束しつつ、東部紛争に関してミンスク合意を履行するよう促し、ロシアを刺激しないよう求めた。
膠着(こうちゃく)状態になった昨年末、米ロ首脳が電話会談し、外交協議の場を設けることになった。1月10月から米ロの高官による「戦略的安定対話」、NATOロシア理事会、欧州安全保障協力機構(OSCE)常任理事会、米ロ外相会談が連続的に開かれたが、議論は平行線のまま何の進展もなかった。このなかでロシア側は「ウクライナ攻撃の意図はない」と明言したが、軍部隊を撤収せず、むしろ部隊を増強している。米・NATOは東欧の兵器配備や演習のあり方を見直し、文書で回答すると約束したが、東欧への増派を開始するなど戦争の準備を急いでいる。
勢力圏拡大で全面激突へ
一連の外交協議でロシアはNATO東方拡大を問題にし、米・NATOはロシアのクリミア併合を問題にし、互いに譲らない。米欧帝国主義はソ連・東欧スターリン主義崩壊後、NATOとEUの東方拡大を同時に進め、勢力圏を拡大した。ロシアは1990年代の崩壊と混乱を脱し、大国主義的に「影響圏」の構築・拡大をめざすようになった。その過程で2014年、ウクライナでEU加盟を求める「ユーロ・マイダン」運動と親ロシア派政権打倒のクーデター(政変)が起きた。ロシアが対抗的にクリミア併合を強行すると、ウクライナ東部ドンバス地域で親ロシア派武装勢力が自治権拡大を求めて蜂起、ウクライナ政府軍と衝突した(東部紛争)。
ウクライナの新政権は反ロシア・ウクライナ民族主義と欧米志向を強めてきた。現ゼレンスキー政権は東部紛争の終結、クリミア奪回、EU・NATO加盟を掲げて欧米依存を強めロシアに対抗している。しかし民衆の大多数がNATO加盟を求めているわけではなく、多様な意見がある。そもそもウクライナは90年の主権宣言、96年の憲法で中立を規定している。だが、米欧とロシアはウクライナ人の意向に関係なく勢力圏争いをしている。それが全世界的な再分割戦の重大な焦点になりつつある。
ウクライナ危機の根源はソ連・東欧スターリン主義崩壊後、新自由主義政策として行ってきたNATO・EU東方拡大が〈コロナ×大恐慌〉情勢のなかで完全に行き詰まったことだ。
NATOは1949年4月、ソ連・東欧スターリン主義圏を軍事的に包囲する集団的安全保障体制として創設された。これに対抗してソ連・東欧諸国がワルシャワ条約機構を創設した。したがってソ連・東欧スターリン主義の崩壊とワルシャワ条約機構の解体によってNATOは存在意義を失ったはずだった。しかし米欧帝国主義はNATOの戦略概念を3回も書き換え、存続・拡大させてきた。NATOは同盟諸国外にも派兵するようになった。94年に旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナに派兵し、99年にユーゴスラビアを空爆。さらに2001年にアフガニスタンに派兵し、昨年8月まで駐留していた。99年以来加盟国を増やし、今や30カ国が加盟する。08年には旧ソ連のウクライナとジョージアが加盟予定国になった。
NATOはまた、14年のロシアによるクリミア併合以降、バルト3国とポーランドに4千人の部隊を展開し、即応部隊を4万人に増強してきた。ルーマニアとポーランドにはイージス・アショアを配備して、ロシアをもレーダーで監視し、射程内に入れている。
米帝は14年以降、軍備強化のためウクライナに総額25億㌦を援助してきた。NATOとウクライナ軍は毎年のように共同演習を行っている。NATOの部隊は駐留していないが、ウクライナはほぼ同盟国扱いだ。プーチンは、ウクライナがNATOに正式加盟し、NATO軍が基地を置き、ロシアと直接対峙(たいじ)することを恐れている。
中国侵略戦争情勢を加速
〈コロナ×大恐慌〉情勢が激化するなかで、ウクライナ危機は米帝の危機をさらに深化させ、破滅的だが対中国侵略戦争情勢をますます加速させている。ウクライナ、台湾の再分割をかけた世界戦争の火が噴こうとしている。岸田とバイデンは、1月21日の日米首脳会談でウクライナ危機に対して「強い行動をとることについて、米国や国際社会と緊密に調整を続ける」と確認した。岸田は、対中国侵略戦争をも念頭に日米同盟を強化し、帝国主義としての延命をかけて世界戦争に突き進んでいる。
NATO加盟国がバルト3国や東欧に戦闘機や軍艦を派遣し始めている。米帝も、NATO即応部隊に8500人の将兵を増派する準備に入った。駐ウクライナ大使館職員の家族の国外退避も命じられている。完全に戦争モードに入った。
国際反戦闘争に決起し、プロレタリアートの団結と総反乱で世界戦争危機を世界革命に転化しよう。
(藤沢明彦)