焦点 カザフスタン騒乱 ロシア軍の治安出動を弾劾する
週刊『前進』04頁(3228号03面02)(2022/01/24)
焦点
カザフスタン騒乱
ロシア軍の治安出動を弾劾する
1月2日、中央アジアのカザフスタン西部で、大半の車が燃料として使用する液化石油ガス(LPG)価格が2倍にも跳ね上がったことに抗議するデモが始まり、数日のうちに全国化・大規模化した。5日、最大都市アルマトイでは数万人の群衆が治安部隊と大激突し、大統領公邸や政府庁舎は次々と破壊、焼き打ちされた。デモ参加者は「ナザルバエフ(前大統領)は去れ!」と叫び、ナザルバエフの側近だったトカエフ現大統領にも怒りを爆発させた。
トカエフは4日に内閣総辞職と燃料価格引き下げを発表したが、抗議デモは膨れ上がるばかりだった。トカエフは治安部隊に「テロリストを銃撃せよ」と公然と命じたが、労働者人民はひるまず闘った。カザフ当局はデモ参加者207人と警官・兵士18人が死亡し、9800人を拘束したと発表。カザフ史上最大の闘いとなった。
トカエフは抗議デモを「外国のテロリストの介入」によるものと断定し、ロシア大統領プーチンに集団安全保障条約機構(CSTO)部隊の派遣を要請した。プーチンもトカエフと同じ見解を述べ、「革命を許さない」とも公言した。しかしこれはカザフスタンの労働者人民自身の「蜂起」だ。
旧ソ連6カ国が加盟しロシアが主導するCSTOは6日から「平和維持部隊」2500人を派遣し「重要インフラの防衛」にあたった。1956年のハンガリー革命、68年のチェコスロバキアの「プラハの春」の圧殺のためにソ連(ワルシャワ条約機構)軍の戦車が出動したことを想起させる。
プーチンはCSTO部隊派遣でカザフをロシアの勢力圏につなぎとめようとしており、中国の習近平国家主席もトカエフ政権とデモ鎮圧を支持し、政治的・経済的影響力を拡大しようと狙っている。
トカエフ政権は政治・経済の改革を唱えているが、それは専制体制のもとでの資本主義化政策の推進・強化以外ではありえない。石油やウランなどの豊富な天然資源の開発・輸出とそのための外国からの投資に依存する経済構造から脱却することは困難だ。
連綿と続く怒りの決起
労働者人民は1991年にカザフスタンがソ連から独立する前からナザルバエフ(カザフ共産党第一書記、独立後は大統領)の強権と腐敗のもとで貧困、失業、弾圧にさらされてきたが、怒りの決起も連綿と続いてきた。今回の決起の発端となった西部のマンギスタウ州シャナオゼン市では、2011年5月に石油産業労働者が賃上げと労働環境改善を求めて長期のストライキに立ち上がった。12月の独立記念日の集会は抗議デモに転化し、治安部隊との衝突で16人の労働者が殺された。
ナザルバエフは労働者人民の怒りを買い、19年には長期独裁への反発を避けるために大統領を辞任。トカエフに見せかけの権力移譲を行い、自身は安全保障会議議長に就任し院政を敷いたのだ。
カザフでは労働組合のストライキは事実上不可能で、デモも禁止されている。労働者800万人の4分の1以上が失業者であり、闘いも頻発している。18年から20年前半までに中央アジア5カ国で確認された981件の抗議運動中520件がカザフで起きており、しかも政治的な抗議闘争が大半だ。
今回の騒乱は必然だった。カザフスタンの労働者人民との国際連帯でトカエフ政権とそれを支える日帝をはじめ国際帝国主義、プーチン、習近平を打倒しよう。