南西諸島を戦場にするな 日米共同作戦、住民を戦火に 2プラス2 中国侵略戦争へ計画策定
南西諸島を戦場にするな
日米共同作戦、住民を戦火に
2プラス2 中国侵略戦争へ計画策定
日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が1月7日、オンラインで開催された。そこで「合意」された内容は、南西諸島をまるごと戦場化する新たな作戦計画の策定、日本の敵基地攻撃能力の保有、極超音速兵器の日米共同研究など、中国侵略戦争に向けて日米安保体制を従来のあり方から全面的に転換しようとするものだ。だが、戦争切迫下で騒音や事故などの基地被害が激増し、米軍基地由来のコロナ感染爆発が住民の命を脅かす中、日米安保を揺るがす労働者階級人民の怒りと闘いの爆発は不可避であり、すでにそれは始まっている。沖縄の闘いと連帯し、中国侵略戦争阻止の闘いを全国で展開しよう。
住民避難は一切想定されず
昨年12月、米軍と自衛隊が「台湾有事」を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を策定していたことが共同通信のスクープで発覚した。この計画では、米海兵隊の「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づき、南西諸島の約200の島々のうち奄美大島、宮古島、石垣島などの有人島を含む約40カ所を軍事拠点化して中国軍とミサイルを撃ち合うことが想定されており、南西諸島の戦場化が前提とされている(図)。米海兵隊は自衛隊と連携して相手の攻撃を避けながら島々を移動し、高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで中国軍を攻撃、空母打撃群を展開できるよう制海権の確保をめざす。だが、住民の避難は一切想定されておらず、報道によると自衛隊幹部は「申し訳ないが、自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と吐露したという。
150万人以上が暮らす南西諸島の住民を、海路・空路ともに封鎖されることが確実な有事において、一体全体どうやって避難させろというのか。また米海兵隊による軍事拠点化というが、いったいどういう法的根拠によってその土地を軍事利用できるというのか。これらについて、米軍・自衛隊は当該自治体にも地元住民にも何一つ説明せず、両国の上級将校だけで勝手極まる計画策定作業を昨年4月以来水面下で進めてきたのである。しかも原案の策定はすでに終了し、その検証作業として昨年12月、東北・北海道で米海兵隊と陸上自衛隊との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」が実施されている。そして今回の2プラス2では、「緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎する」と共同声明に盛り込み、日米両政府としてこの作戦計画にお墨付きを与えたのだ。
この他にも2プラス2の共同声明では、「安全保障上の課題に......(日米は)未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づける」「同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する」と、過去には見られないほど日米の軍事一体化を強調。対中国で「必要であれば対処するために協力することを決意した」と明記し、「(中国の行動に)反対する」という表現にとどめていた昨年3月の2プラス2から一変して、日米が対中国で共同の軍事行動を起こすことを初めて公式に確認した。
これらの文言は、言うまでもなく、日米共同作戦計画の存在を踏まえたものにほかならない。
米帝の狙いは中国本土への攻撃・侵攻
今一つ重要なことは、このEABOに基づく日米共同作戦計画が、具体的に何を戦略目標としているのかということだ。それは、中国軍の「接近阻止/領域拒否(A2/AD)」戦略を攻略し、第1列島線内への空母打撃群の投入および中国本土への米軍の侵攻を可能とすることにある(A2/ADとは、米軍の侵攻を防ぐために中国軍がとってきた防御戦略に対する米国側の呼称)。すなわちこの作戦計画は、台湾や南西諸島への中国軍の侵攻を「撃退」するのではなく、反対に米軍と自衛隊が中国本土を攻撃・侵攻するための計画なのである。
そもそも米帝は「台湾有事」が局地的な衝突で済むとは毛頭考えていない。ひとたび戦端が開かれれば、中国本土への爆撃と地上部隊による侵攻にまで突き進み、中国の現政権を完全に屈服させ、あわよくばそれを転覆することまで構想しているのだ。そうなれば中国軍も当然ながら必死に反撃するが、約2千発と言われる中国軍の地上発射型中距離ミサイルは米本土には届かず、ごく一部がなんとかグアム基地に達するかという程度だ。米日帝の中国侵略戦争に対する中国の反撃が最も集中するのは、台湾、そして南西諸島を始めとした日本列島である。
この恐るべき戦争計画に基づいて、沖縄や本土の米軍基地周辺では訓練が激増し、東京都内でも深夜にオスプレイのホバリング飛行が行われるなど、基地被害はかつてなく深刻化している。すでに「戦場化」は始まっているのだ。今こそ怒りに燃えて反戦反基地闘争を闘おう。
「極超音速兵器」を共同開発
今回の2プラス2では、敵基地攻撃能力の保有を念頭に「(日本は)必要なあらゆる選択肢を検討する」と確認し、さらに極超音速兵器の日米共同の分析と研究開発を進めることも共同声明に盛り込んだ。
日本政府やマスコミは、中国や北朝鮮の「極超音速兵器の脅威」をしきりに大宣伝し、あたかも未知の超高性能新型兵器によって今にも日本が攻撃されるかのように描き出している。だが、実はこの「極超音速兵器」の開発を通じて戦争の危機を生み出している最大の張本人は米軍である。
「極超音速」とは、マッハ5(音速の5倍)以上の速度を意味し、この速度で飛行するミサイルがしばしば「極超音速兵器」と総称される。だが、一口に「極超音速兵器」と言っても、実は極超音速の「滑空体」と「巡航ミサイル」とではまったく別の兵器だと言っても過言ではない。
前者(滑空体)は、例えれば水面を跳ねる小石のように、上空で上下運動を繰り返すことで飛距離を伸ばすことができるが、その代わり遠くに行くほど速度が落ちる。最速でマッハ5以上が出せるとしても、目標に到達する時点では大きく減速しており、その限りで迎撃が特別困難というわけではない。この間、中国の「DF(東風)17」という極超音速滑空体が軍事パレードで誇示され、日米はとてつもない「脅威」が現れたかのように大宣伝しているが、従来の米軍との力関係を転換させるような代物では到底ない。対して米軍は、はるかに高性能な射程2775㌔以上の極超音速滑空体(新型中距離ミサイル)を日本列島に大量配備することで、米本土が反撃を受けることなく、中国本土に一方的な核攻撃を加えることが可能な態勢を構築しようとしているのだ。
そればかりではない。同じ「極超音速兵器」と呼ばれても後者(巡航ミサイル)はまったく別物で、燃料を燃焼しながら巡航し、最大マッハ9もの速度を維持したまま地球上のどこにでも到達する。極超音速のまま目標の手前で急降下して着弾するため、レーダーによる捕捉も迎撃も極めて困難だ。これまでは燃焼に必要な空気を巡航中に得る技術などが非常に難しいとされてきたが、米国防高等研究計画局(DARPA)は昨年9月、初の飛行試験に成功したと発表し、「極超音速巡航ミサイルが米軍にとって非常に効果的な兵器になり得る能力を示した」と声明した。
このような防御不能の絶対兵器の開発・実用化で、米軍は他国を大きく引き離す世界最先端を行っており、「中国の極超音速兵器の脅威!」といくら強調しても、中国はこの領域では米帝にはるかに及ばない。今回の2プラス2では、これらの兵器の実戦配備に向けて、日帝が全面協力することに合意したものであり、それ自体が東アジアにとてつもない軍事的緊張をもたらしているのだ。
陸自の実戦部隊化図る日豪の新協定
2プラス2に先立つ1月6日、岸田はオーストラリアのモリソン首相とオンライン会談し、日米地位協定に相当する日豪の「円滑化協定」に署名した。「協定が発効すれば、大規模な訓練がやりやすくなる」(1月7日付朝日新聞)。すでに陸自水陸機動団は昨年6〜8月、豪州で米英海兵隊と豪陸軍との合同訓練を実施。「(豪軍は)戦地での活動実績がある。03年に始まったイラク戦争は開戦時から実戦部隊を派遣した。自衛隊は豪軍の経験を学び対処力を高める」(1月7日付日本経済新聞)と報じられている通り、まさにイラク戦争のような侵略戦争に自衛隊が参戦し、おびただしい死傷者を出す凄惨(せいさん)な地上戦を戦うことをも想定して、日帝は豪州との軍事協力と共同訓練を推進しているのだ。
だが、これら一切の急激な戦争策動は基地周辺住民の怒りと闘い、さらには自衛隊内からの矛盾の爆発を不可避とする。全学連を先頭に全国で改憲・戦争阻止の闘いを燃え上がらせ、米日帝の中国侵略戦争を絶対阻止しよう。
(水樹豊)
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2プラス2のポイント
▽日米で「地域における安定を損なう(中国の)行動を抑止し、必要であれば対処するために協力することを決意した」と明記。対中国で日米が軍事行動を起こすことを初めて公式に確認
▽「(日米は)安全保障上の課題に未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づける」「同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する」と確認
▽日米共同作戦計画を念頭に「緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」と明記
▽日本は敵基地攻撃能力を含む「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」
▽自衛隊の南西諸島での態勢を強化し、施設の日米共同使用を増加させる
▽日米で極超音速兵器の共同分析と研究開発を進める