核戦争に突き進む米日帝 中距離ミサイル配備許すな 中国侵略戦争阻止へ全力決起を

週刊『前進』04頁(3223号03面01)(2021/12/13)


核戦争に突き進む米日帝
 中距離ミサイル配備許すな
 中国侵略戦争阻止へ全力決起を

(写真 1981年10月、旧西ドイツの首都ボンでの反核集会に30万人が結集)

 「台湾海峡有事」を最大の焦点とする米日帝国主義の中国侵略戦争は、現時点で明らかになっている具体的な計画としては、米海兵隊の新たな作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」と日本全土への中距離核ミサイル(INF)の大量配備を2本柱としている。それは全国の在日米軍基地を中国への核攻撃の拠点とし、南西諸島をはじめ日本全土を文字通り「戦場化」することを前提とした計画であり、「国民を守るための抑止力」などでは断じてない。米日帝の延命のために「沖縄戦」と「ヒロシマ・ナガサキ」を何百倍もの規模で繰り返そうとするものだ。このことを徹底的に暴きだし、絶対に阻止しなければならない。

南西諸島「戦場化」を計画

 米国防総省が11月29日に発表したグローバル・ポスチャー・レビュー(GPR=地球規模の米軍態勢見直し)の概要では、オーストラリアやグアム、フィリピンなどでの燃料・弾薬の貯蔵庫の建設、飛行場の改修などのインフラ整備、戦闘機や爆撃機の配備の増強などが打ち出された。中国との戦争を極めてリアルに想定し、後方の兵站(へいたん)・補給拠点を強化しようとしているのだ。
 国防総省高官は記者団に対し「別の地域での戦力を減らして中国に焦点を絞っていく」と強調し、今後もインド太平洋地域に多くの軍事拠点を建設していく考えを示した。米軍の部隊を一点に集中させず、なるべく複数の拠点に分散配置することで、中国軍の攻撃で一度に戦力を失わないようにするのが狙いだという。米軍の拠点が置かれた地域は、対中国戦争の「戦場」とされることが前提とされているのである。
 同様の考え方は米軍の攻撃作戦にも貫かれている。それが米海兵隊の新たな作戦構想「EABO」だ。かつての朝鮮戦争やベトナム戦争のように、海兵隊が海軍艦艇に乗って敵地に接近し、海軍や空軍に援護されながら「お家芸」と言われる上陸作戦を行うのではなく、逆にEABOでは海軍(空母打撃群)が敵地に迫るための制海権を確保することが海兵隊の任務となる。そのために少人数の部隊に分かれた海兵隊をオスプレイで離島などに送り込み、そこに複数の「遠征前方基地(EAB)」を構築、中国軍から受ける反撃を分散しつつ、各部隊が島から島へ移動しながら高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)などで中国軍を攻撃する。そして制海権を確保した海域に空母打撃群を投入し、中国本土へ侵攻するというシナリオだ。
 今、沖縄をはじめ全国の在日米軍は、このEABOを実際に発動するための訓練を猛然と行っており、米軍機の危険な低空飛行や物資のつり下げ訓練などが著しく増加している。さらに12月4〜17日の予定で行われている陸上自衛隊と米海兵隊との合同演習「レゾリュート・ドラゴン21」では、EABOに陸自も戦闘部隊として動員されることが明らかになった。沖縄の地元紙は「これまでと大きく異なるのは、中国をにらんだ訓練が主流になってきたこと、自衛隊が前面に出てきたこと、日米の軍事一体化が進み、沖縄の戦場化を前提とした合同演習が行われるようになってきたことだ」(11月21日付沖縄タイムス社説)と指摘する。
 総じてEABOは、米日帝による対中国戦争の侵略戦争としての正体と、その恐るべき実態とを如実に示すものだ。EABOの狙いは、米軍を中国本土に接近させないように中国軍がとってきた軍事戦略「A2/AD(接近阻止・領域拒否)」を無効化することにある。そのために、中国軍からの反撃でおびただしい人的・物的被害が出る(南西諸島全体が「戦場化」する!)ことも辞さないというのだ。中国脅威論をあおり、今にも中国軍が台湾に侵攻するかのように大宣伝しながら、実際に凶暴な侵略戦争を全力で準備しているのは明らかに米日帝の方なのである。

全土の核攻撃基地化狙う

 中国侵略戦争のいま一つの柱をなすのが中距離核ミサイルの大量配備計画だ。
 米議会の超党派でつくる諮問機関・米中経済安全保障調査委員会(USCC)は11月17日、中国に対抗する地上発射型中距離ミサイルの配備に向け、インド太平洋地域の同盟国と協議するよう政府に求める報告書を提出した。すでに米軍の元高官が朝日新聞のインタビューに答えて「沖縄、岩国、三沢」などを候補に挙げ、「本音は日本全土に配備したい」と述べたように、最有力の配備先は言うまでもなく日本である。
 本紙前号の解説でも明らかにした通り、「中距離ミサイル」とは、射程2400〜5500㌔メートル程度の弾道ミサイル・巡航ミサイルの総称であり、射程1000〜2400㌔メートル程度のものは「準中距離ミサイル」などと呼ばれる。1987年にアメリカと旧ソ連が締結したINF全廃条約は、射程500〜5500㌔メートルの地上配備型ミサイルおよび発射基地・関連施設の保有と将来的な開発・製造を禁止した。
 射程5500㌔メートル以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の場合、米国とロシア・中国が互いに相手を射程に入れる。これに対し中距離ミサイルは、米本土ではなく欧州や日本などの同盟国に配備し、そこからロシア・中国の中枢部を狙う。相手国からの反撃も発射地点である同盟国に集中することになる。米本土を「聖域」とし、同盟国とその周辺だけを核戦争の戦場としながら、ロシアや中国に一方的な核攻撃を加えることが可能となるのだ。かつて米レーガン政権はこれを「限定核戦争」と呼び、実際に欧州配備の中距離ミサイルによるソ連中枢への核攻撃を狙った。
 この欧州INF危機の始まりは79年、米カーター政権が北大西洋条約機構(NATO)諸国への新型中距離ミサイル配備を発表したことだった。それは旧西ドイツの基地から発射すれば数分でソ連中枢を攻撃でき、レーダー回避能力や命中精度もソ連の中距離ミサイルをはるかに上回る先制第一攻撃兵器だった。

反核闘争の高揚が核戦争を阻止した

 だが米帝の誤算は、これを機に空前の反核闘争が欧州をはじめ全世界で爆発したことだった。81年10月10日、西ドイツ・ボンに欧州各国から30万人が結集し歴史的な反核集会・デモが行われたのを皮切りに、パリ、ロンドン、ローマ、マドリード、ブリュッセルなどで数万〜数十万人の大デモが次々と闘われ、NATO軍の兵士もデモに合流した。日本では、広島での82年3・21反核行動に結集した20万人が警察権力の規制を粉砕して平和大通りを埋め尽くし、続く5・23東京行動には50万人が決起。広島・長崎の被爆者、三里塚反対同盟、動労千葉などの闘う労働組合、全学連もその先頭で奮闘した。同年6月12日には国連軍縮総会に合わせ米ニューヨークで史上空前の100万人反核デモが爆発した。これにより欧州各国政府も動揺したため、米帝は戦略の手直しを余儀なくされ、ソ連との間でINF制限交渉を開始、後にソ連・ゴルバチョフが譲歩したことでINF全廃条約が成立した。
 今日の中国侵略戦争の切迫下で、核戦争の危機は80年代初頭よりもはるかに高まっている。日本への米軍中距離ミサイル配備は、文字通り核戦争の引き金を引くものであり、絶対に許すことはできない。だが、このような破滅的な戦争に突き進む以外に延命の道がなくなったところに、米日帝国主義の歴史的破産が刻印されているのだ。
 8・6ヒロシマ大行動実行委員会が呼びかけるINF配備反対署名を全国で拡大しよう。青年・学生を先頭に、〈米日帝の中国侵略戦争阻止、沖縄米軍基地撤去=安保粉砕・日帝打倒〉の大闘争をつくりだそう。
〔水樹豊〕
このエントリーをはてなブックマークに追加