長崎 内部被曝の健康影響を無視 『放射線副読本』に怒り

週刊『前進』04頁(3222号03面03)(2021/12/06)


長崎
 内部被曝の健康影響を無視
 『放射線副読本』に怒り

(写真 全国に送付された放射線副読本)


 福島第一原発事故以降、文部科学省が『放射線副読本』というのを作り、直接全国の小中高校に送付し、児童・生徒に配っています。「放射線は安全」という印象を子どもに植え付けようとしています。

核兵器と原発を認めさせる狙い

 『放射線副読本』と称しながら、放射線による被ばくの危険性について何も書いていません。「放射線が当たると細胞や遺伝子が壊されるんだよ。それが健康を害するんだよ」ということは全く書いていません。ヒロシマやナガサキ、そして世界に被ばく者がいて、その人たちがどのように生きてきたか、全く書いていません。被ばくの実像を抹殺しているのです。今年配られている『放射線副読本』では福島原発事故の写真がなくなりました。その一方で「復興」のキンキラの写真がいっぱいです。これは「事故を起こしても復興しているよ。被ばくについて大騒ぎするな。それは風評だ」と言いたいのでしょうが、被ばくの傷と放射線の影響は将来にわたって続くのです。
 他方で、ものすごく「自然の放射線」を強調しています。つまり「自然にも放射線はあるのだから、被ばくはしかたがない、受け入れなさい」と印象づけようとしています。こうしてフクシマの被ばくも抹殺しようとしています。原爆の材料のプルトニウムを製造する機械である原発についても全くふれていません。
 結論を言うと、『放射線副読本』は、「被ばくはたいした事がない」と印象づけることで「核兵器と原発を認めなさい。そのためには被ばくを甘んじて受け入れなさい」と私たちに迫っているのです。

市教育委の回答は「問題なし」⁉

 この副読本に対する批判と怒りが今、長崎では拡大しつつあります。学校の副読本のため、その中身は一般には知らされていませんでした。私たちが暴くことで、副読本の存在とその中身が次第に知れわたりつつあります。「こんな教育を被爆地長崎で行うのか」「こんなウソを書いた本を子どもたちに見せてはいけない」という声が起こっています。被爆者団体にも広がりつつあります。
 10月5日にNAZENナガサキは長崎市教育委員会に、①教育委員会として副読本の問題点を明らかにせよ、②副読本の配布中止を通達すべきではないか、と申し入れを行いました。26日に回答がありました。内容は、①については「放射線に関する多くの専門家のコンセンサスが得られた、客観性の高いもの」「副読本に問題はない」と断じるもの、②については「副読本は文科省が作って直接配布しているもの」と、無責任なものです。だから私たちは長崎市教育委員会への追及を続けます。
 何よりも本丸は政府と文科省です。副読本は福島原発事故を抹殺して福島の住民の命と健康を害するものです。日々被ばくを強制しているのです。放射能汚染水の放出を認めさせようとするものです。そして原発の再稼働・新設を推進し、さらに日本の核武装・核戦争容認、戦争動員につなげようとするものです。
 副読本は、健康への影響は「量が関係している」と言って内部被ばくを無視しています。「黒い雨」判決の地平と真逆のものです。長崎の「被爆体験者」と福島の被曝者の被ばく手帳交付をもぎ取りましょう。
 帝国主義とスターリン主義による被ばく強制との闘いを、新たな核戦争・中国侵略戦争阻止の闘いと一体のものとして闘おう。
(NAZENナガサキ・H)

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