焦点 気候変動とCOP26 新自由主義の資源略奪こそ元凶
週刊『前進』04頁(3221号03面04)(2021/11/29)
焦点
気候変動とCOP26
新自由主義の資源略奪こそ元凶
10月31日から11月13日、イギリス北部のグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催された。同会議は気候変動と温暖化への対策を議論する大規模会議として回を重ねてきたが、その実態は帝国主義各国と中国スターリン主義の身勝手な思惑と主導権争いの衝突の場だ。
大国間争闘戦の場に
「合意文書」で確認された内容は、①気温の上昇幅(産業革命前比)を1・5度以内に抑える努力を追求することを決意する、②排出抑制対策を講じていない石炭火力発電の段階的な削減に向けた努力を加速させる、③先進国から途上国への毎年1千億㌦(11兆円)の拠出目標が達成されていないことに遺憾の意を示す——などだ。確かに気候変動問題は「待ったなし」の現実をわれわれに突きつけている。温暖化、森林火災、生態系破壊、暴風雨、大洪水などが絶え間なく世界を襲い、それによって住まいを追われる「気候難民」が毎年2千万人生じている。
だが、それらはすべて新自由主義のもとでの乱開発と一握りの大国による野放図な資源略奪の結果に他ならない。そのことに頬かむりをし、各国首脳らは産業の大再編と「環境」に関連する新たな投資先の発掘、新技術の開発競争に血道を上げ、その利害の貫徹をかけて会議に臨んでいるのだ。
最大の争点は石炭火力発電だ。これを早急に「廃止」に追い込み成果としたい議長国・英首相ジョンソンや欧州連合(EU)に対し、総発電量の7割を低コストの石炭火力に依存するインド、同じく6割を依存する中国が猛然と反発し、会議日程を延長した末に、合意文書は「石炭火力発電の廃止」から「削減」へと土壇場で表現を弱めてかろうじて成立した。
とりわけ悪質なのは日帝だ。岸田首相は演説で次の政府方針を示した。①アジア途上国に対し、二酸化炭素などが出ない技術革新を提供する1億㌦規模の事業展開を行う、②途上国への新たな支援として5年間で最大100億㌦を拠出する、③既存の火力発電を「ゼロエミッション化」する。
つまり二酸化炭素の排出を実質ゼロにする技術開発を進め、それをアジアの途上国にも普及させて日本が主導権を握る石炭火力は手放さない(日本は3割依存)というわけだ。だがその「ゼロエミッション」技術は実用性の見通しすら立っていない。岸田は「気候変動」をもうけ話とアジア支配のてこに変えようとする野望をあからさまに語ったのだ。さらには、「脱炭素」を口実に原発推進をも狙っている。
怒りのデモが会場包囲
COP26の会場は、全世界から集まった若者、環境活動家ら5千人の怒りのデモで包囲された。スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんは、「人々、自然、地球からの搾取はもうたくさんだ。搾取をやめろ、むだ話をやめろ。変化は会場内では起きない。リーダーシップはここ(集まったわれわれ)にある」と痛烈に批判し、デモ隊を鼓舞した。昨年1年間に世界で、森林伐採、鉱山開発、ダムなどに反対する環境活動家227人が殺害されている。その3分の1が中南米やアジアの先住民だ。下手人は開発業者とそれに雇われた連中だが、背後では帝国主義と多国籍企業などが深くかかわる。侵略・戦争・環境破壊の元凶である帝国主義を打倒しなければならない。