特集 岸田政権を斬る 雇用も賃金も破壊 改憲・中国侵略戦争に突進
特集 岸田政権を斬る
雇用も賃金も破壊
改憲・中国侵略戦争に突進
「敵基地攻撃能力」許すな
防衛費2倍化
今回の総選挙で岸田・自民党が掲げた政権公約のうち、最も具体的で際立った踏み込みは、「国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に防衛関係費の増額を目指す」という空前の大軍拡を打ち出したこと、さらには「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有」と敵基地攻撃能力の保有まで明記したことである。立憲民主党や日本共産党が主導した「野党共闘」の今次総選挙における最大の犯罪は、この点をまったく問題にせず、まともに争う姿勢すら見せなかったことだ。こんな野党が労働者人民の怒りを結集できないのは当然である。
2020年の日本の名目GDPは約540兆円、その2%以上ということは10・8兆円にも達することになり、安倍・菅両政権下で増額の一途をたどってきた防衛費(21年度予算で5兆3422億円)を2倍以上も増額することになる(図)。
戦後的制約を破る
これまで日本の歴代政権は、憲法9条下での自衛隊の存在を「合憲」と言い張るために、防衛費はGDP比1%以内とすることを指標としてきた。空母、爆撃機、弾道ミサイルなどの「敵基地攻撃能力」を保有しないことと合わせて、「自衛隊は必要最小限度の実力組織にすぎない。憲法が禁じる『戦力』には相当しない」と強弁してきたのである。実際、それは戦後日本の安保・軍事戦略および自衛隊の装備・任務などに、憲法9条に基づく一定の戦後的制約を課すものとしてあった。
だが今年4月の日米首脳会談で「日本は防衛力の強化を決意した」とする共同声明を採択したことを受け、防衛相・岸信夫は5月の記者会見で「1%枠の突破」どころか一気に「2%以上」という大軍拡を宣言。今次総選挙で党の政権公約として公然と打ち出すに至った。
先月には海上自衛隊護衛艦「いずも」への米軍戦闘機F35Bによる初の発着艦訓練が行われた。さらに本格的な敵基地攻撃能力の保有となれば、長射程から攻撃できる巡航ミサイル、相手国のレーダー・無線通信を無力化する電子戦システム、偵察衛星システムや無人機などを巨額の予算を用いて開発・保有し、それにあわせて自衛隊の大幅増員や新部隊創設などを進めることになる。
社会保障費を大幅に削減し、すでに崩壊があらわとなっている医療や教育をますます壊滅状態に追い込みながら、中国侵略戦争に向けた大軍拡を推し進めようとしているのだ。だがそれは、労働者階級の根底的な怒りと闘いを呼び起さずにはおかない。
全基地撤去・安保粉砕へ
沖縄の最前線基地化
4月の日米首脳会談を決定的転機に、米日帝国主義は中国侵略戦争へ激しく動き、岸田政権は改憲・戦争に突き進んでいる。日本全土を侵略出撃拠点に変え、沖縄を最前線基地=戦場へとたたき込もうとしている。求められているのは、「中国侵略戦争阻止、沖縄全基地撤去=安保粉砕・日帝打倒」の闘いだ。
中国本土攻撃想定し米海兵隊が訓練
米海兵隊のバーガー総司令官は9月、普天間基地を訪問し、第3海兵遠征軍司令官らと協議した。そこで「沖縄の戦略拠点としての重要性はますます高まっている」と述べ、島々が連なる沖縄を「理想の訓練場」と言い放った。
中国侵略戦争に向けた海兵隊の新たな作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」の準備が急速に進んでいる。海兵隊が島嶼(とうしょ)などにオスプレイや輸送艇で着上陸して複数の「遠征前方基地」を確保し、対艦ミサイルやF35B戦闘機による作戦を展開。制海権を確保し、そこに海軍の空母打撃群などを投入して中国本土に本格的攻撃を加えるという作戦だ。海兵隊は反撃されることを前提に、陣地の変更や次の遠征前方基地への移動を繰り返す。種子島、奄美、沖縄本島、宮古、石垣、与那国など南西諸島の滑走路を持つ主要な島々がその対象として想定される。恐るべき対中国の侵略戦争計画であり、南西諸島全体が戦火に包まれることが大前提となった作戦なのだ。
このEABOの主力を担う在沖米海兵隊は、すでに臨戦態勢に入っており、連日、夜間訓練や低空飛行訓練が繰り返されている。
本島の勝連分屯地にもミサイル部隊
こうした米軍の対中国戦争計画と一体で、岸田政権は南西諸島へのミサイル部隊や電子戦部隊の配備を進めようとしている。奄美大島、宮古島、2023年度配備計画の石垣島に続いて、沖縄本島の勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊の配備が狙われている。防衛省は22年度の概算要求で、勝連分屯地の整備費用として21億円を盛り込んだ。勝連分屯地には連隊本部の設置が計画されており、南西諸島の四つの地対艦ミサイル中隊を指揮統制する役割を担うことになる。
かつて70年安保・沖縄闘争で、ベトナム侵略戦争の出撃拠点として嘉手納基地からB52が飛び立って爆撃を繰り返すという現実、その中で極点まで高まる基地・安保の矛盾に対して、本土―沖縄を貫く階級決戦が闘われた。現下の中国侵略戦争体制は、それをはるかに上回り、沖縄を最前線基地とし、丸ごと戦場にたたき込むものだ。日本労働者階級全体の怒りと闘いでミサイル基地化を粉砕し、中国侵略戦争を阻止しよう。
辺野古新基地阻む不屈の闘いと共に
第2次安倍政権下で「辺野古会議」がつくられ、防衛、国交、法務各省の官僚が集められた。国交省技官が防衛省に出向して図面を引き工法を提案。国が被告となる訴訟にも対応するために検事や裁判官出身の官僚を入れた。「霞が関を総動員し、『かなりグレーな感じがする』手法を駆使」(10月24日付朝日新聞)し、問答無用に工事を強行した。「工事を進めて移設を既成事実化し、沖縄の『戦意』をくじく。それが政権の意思だった」(元防衛省幹部)という。
しかし、辺野古新基地建設阻止の闘いは不屈に展開されてきた。県民の絶対反対の意思をたたきつけ、土砂搬入阻止のキャンプ・シュワブ前での座り込み、工事に迫るカヌー隊の闘いなど実力闘争が闘われている。不屈の抵抗闘争と軟弱地盤の発覚で当初の計画はボロボロになり、建設のめどは立たない。それでも岸田が「辺野古推進」を明言し新基地建設を進めようとするのは、沖縄の基地反対の闘いをつぶすことなしに戦争はできないという現実ゆえだ。ここに侵略戦争を阻止する展望がある。
第4次嘉手納爆音訴訟は、原告団が3万人を超える国内最大規模の集団訴訟となり、若い世代が新たに層として参加している。沖縄戦の遺骨が混じった南部土砂の辺野古への投入に反対する具志堅隆松さんらの不屈の闘いがある。宮古島での弾薬搬入に対する実力闘争をはじめ、自衛隊配備に反対する闘いが展開されている。「再びの沖縄戦を許さない!」----この怒りと闘いで岸田を倒そう。
基地・安保の矛盾の集中点である沖縄は、中国侵略戦争を阻止する最前線の激突点である。11・10〜11沖縄現地闘争を闘い、来年5月の「復帰」50年へ、大決戦の突破口を切り開こう。
新たな核戦争阻む運動を
中距離核ミサイル配備
岸田は10月4日、首相就任会見で「外務大臣時代から、核兵器のない世界を目指し、ライフワークとしてきた」と言い、8日の所信表明演説でも「核なき世界」に取り組むと述べた。だが、核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」には一言も触れないばかりか、衆院選では「防衛費の2倍化」「敵基地攻撃能力の保有」を公然と主張、選挙後も「改憲に向け精力的に取り組む」と表明した。
岸田「核なき世界」と被爆者は非和解
英紙フィナンシャル・タイムズは10月29日、バイデン米政権が「核兵器の先制不使用」政策を検討しているのではないかと危惧した日本や英国、オーストラリアなどの同盟国が、同政策を断念するようバイデン政権に働き掛けていると報じた。広島・長崎の被爆者団体は、「唯一の戦争被爆国」と称しながらアメリカに核先制使用を求める日本政府のペテン的な態度に、核戦争阻止の立場から一貫して抗議してきた。岸田は核禁条約の批准をせず、条約発効後の第1回締約国会議へのオブザーバー参加さえ拒否している。岸田政権と被爆者・被爆地との対立構造はますます鮮明だ。
他方でバイデン政権は、原子力潜水艦を「非核兵器国」のオーストラリアに供与するなど、米自身が主導してきたNPT(核不拡散条約)体制を自ら破壊しながら、中国への核戦争体制を強化している。すでにアメリカは2018年のNPR(核戦略見直し)で核先制使用や新たな小型核兵器の開発などを進めると宣言し、19年にはINF(中距離核戦力)全廃条約を一方的に破棄した。「核先制不使用」と言うのも、十分な核戦力の保有を土台にしており、現にアジア・太平洋地域では、核兵器の配備が進んでいる。これ自体が核軍拡―核戦争の危機を激化させるものだ。
人民の生存脅かす一触即発の事態に
こうした中国への核戦争準備の最前線に位置づけられているのが、沖縄をはじめとする日本である。米連邦議会は24~25年までに、中国本土を丸々射程に入れることができる核弾頭も搭載可能な中距離ミサイルを、九州・沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」上に配備することを決めた。その最有力候補地が沖縄・岩国などである。
中距離弾道ミサイルは発射後、7~8分で着弾するという。標的にされた国は、それが核弾頭か通常弾頭か、あるいは誤報なのかを分析する時間もない。そのため発射が探知されるや否や、ミサイル基地などの壊滅的被害を受ける前に、核弾頭を搭載した中距離弾道ミサイルで直ちに反撃することになる。中距離弾道ミサイル配備は、核戦争の一触即発の事態を引き寄せ、日本、中国―アジア人民の生存を一層脅かす。
日本政府が建前としてきた「核兵器を持たず・つくらず・持ち込ませず」の非核3原則なるものは、沖縄への核持ち込みの「密約」や核兵器の材料となるプルトニウムを大量生産する核燃料サイクルの推進などで幾度となく破られてきた。だが今や、それもはるかに超える核兵器の大量配備が狙われている。絶対に阻止しなければならない。
「二度と核戦争を繰り返させない」----これが被爆者の闘いの原点である。今年、自民党・支配階級と日本会議は、8・6ヒロシマの反戦反核運動をつぶすために8月6日の平和記念式典を「厳粛の中で行う」と規定する「平和推進条例」を制定した。これに対し、被爆者、被爆2世・3世、そして広島と全国の労働者・市民は真正面から闘い抜き、その思惑を打ち破って6日早朝の原爆ドーム前反戦反核集会・デモを堂々とかちとった。今秋、広島からINF配備―中国への核戦争・侵略戦争に反対する新たな署名運動が呼びかけられる。核戦争を絶対に許さず、岸田政権を追い詰め打倒する闘いだ。
アジアへの戦争犯罪
ミャンマー人民虐殺やめろ
安倍・菅政権を引き継ぎ、より凶暴に改憲・中国侵略戦争へと突進しようとしている岸田政権を国際連帯にかけて打倒しよう。
2012年、安倍政権下で外務大臣に就任した岸田文雄は、大資本の利益を追求し、改憲・戦争攻撃を担い推進してきた。17〜18年、「北朝鮮ミサイル危機」を口実に日米韓三つどもえで朝鮮半島をめぐる戦争衝動が高まった時には外務・防衛大臣を兼務し、安倍政権の軍事外交を担ったのが岸田である。
当事者を踏みにじる
岸田の罪状として特筆すべき第一は、15年12月28日の日本軍軍隊慰安婦問題での「日韓合意」だ。それは正式な外交文書も残さず、日韓両外相の共同記者発表という異例の形で強行された。岸田は、日本軍慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決される」と断言し、日韓両政府は「今後、国連等国際社会において互いに非難・批判することは控える」とした。韓国が設立する被害者支援事業に涙金を出すという、日本軍軍隊慰安婦とされた被害女性たちを再び踏みにじるものだった。彼女たちの要求は、真相究明と謝罪、責任者処罰であり、この戦争犯罪を再び繰り返さないための歴史教育・記念事業なのだ。その要求を無視して、わずかな金で慰安婦問題を封印しようとは! 絶対に許せない。
この日韓合意は、後に当事者を先頭とする怒りに包囲されて破産し、パククネ打倒に向けた闘いの水路となった。
巨額のODAを主導
第二は、2・1軍事クーデターから続くミャンマー国軍によるミャンマー人民虐殺への加担だ。日本政府はクーデター以降も国軍との「太いパイプ」を維持し、国軍に資金を提供し続けている。
日本政府は12年の「民政移管」以来、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで巨額の円借款を投入し続けてきた。今では1兆円を超える。これに日帝資本が群がり、多額の利益を上げてきた。日本ミャンマー協会(会長・渡辺秀央)には、最高顧問・麻生太郎、理事・甘利明など政財界の要人が名を連ね、日本企業127社が会員となっている。
岸田は、12年の外相就任直後からODA(政府開発援助)によるミャンマー・ティラワ経済特区開発を主導するなど、深く関わっている。
クーデター後、「#ミャンマー国軍の資金源を断て」の運動が、闘う在日ミャンマー人と共に粘り強く続けられている。クーデターを容認し、国軍を支え、宗主国然として搾取しようとしているのが日本政府であり、岸田政権だ。在日ミャンマー人との共同闘争として岸田政権を打倒しよう。
戦争と革命の時代、韓国・香港・台湾をはじめアジア―世界で労働者の怒りが燃え上っている。今こそ労働者階級の国際連帯で帝国主義を倒し、世界を変える時だ。
経済安全保障戦略
国家による監視・弾圧狙う
岸田政権は、目玉政策の一つに「経済安全保障戦略の策定」を掲げる。岸田が政調会長時代に創設して自ら本部長となり、甘利明が座長を務めた「新国際秩序創造戦略本部」は、これに関する「中間とりまとめ」を今年5月に提出した。そこでは、いわゆる経済安全保障を「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義するが、要するに中国を最大の「敵」とする日本帝国主義の延命をかけた争闘戦と対中国戦争をも想定した経済政策を、個別資本を超えた国家戦略として展開するということだ。
戦争のための国家戦略
アメリカのトランプ前政権が「安全保障上の脅威」を口実に対中経済制裁を強行し、特に軍事転用も可能な先端技術や5G関連インフラの開発・実用化で突出した中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)を狙い撃ちにしたことは、経済安保戦略の典型である。さらには、半導体やレアアースなど各種資源の確保、「安全保障に資する」技術を取り扱う企業の育成・保全や海外からの誘致、貿易や投資への規制の強化など、経済安保の内容は多岐にわたる。
重要なことは、このような経済安保戦略の要が人々の生活や経済活動全般に対する国家による日常的な監視・介入・弾圧にあるということだ。
昨年3月と5月、横浜市の精密機械製造会社「大川原化工機」が2016年と18年に「軍事転用可能な噴霧乾燥機」を韓国と中国に無許可で輸出したとして、同社の社長ら3人が外国為替及び外国貿易法(外為法)違反容疑で警視庁公安部に逮捕された。だが、輸出された装置が軍事転用可能かどうかについて「疑義が生じた」として、今年7月に東京地検が起訴を取り消すという異例の展開となり、社長らが損害賠償を求めて裁判を起こすに至っている。
外国企業との取引も、国家権力が「軍事転用可能なものを輸出した」「国の存立を脅かした」とみなせば、問答無用で規制・弾圧の対象となる。そのためには現行の外為法では不十分だとして、来年の通常国会で一括法案による法整備が狙われている。企業のみならず大学など教育・研究機関への今まで以上の介入と弾圧も不可避だ。これらは明らかに現行憲法が保障する諸権利とも相容れない。国家による監視・弾圧を全面化させた、改憲・戦争国家化と一体の戦後的統治形態の転換の攻撃である。
新自由主義攻撃の極限化
「新しい資本主義」
衆院選の結果を受けて、首相の岸田文雄は「新しい資本主義を起動するために取り組む」「所得倍増を目指し、その果実を国民一人一人に給与の引き上げという形で実感してもらう」などと述べた。だが「新自由主義的な経済政策からの転換」を唱えながら、岸田が実際にやろうとしていることは、さらに極端な新自由主義の攻撃だ。
その証拠に、岸田は自民党総裁選の過程では主張していた金融所得への課税強化を、首相になったとたんに引っ込めた。「成長と分配の好循環」などと言いながら、大資本・富裕層が貯えた膨大な富に手を付けて労働者人民に分配することなど絶対にしない。それが岸田のスタンスだ。
一層の雇用流動化を叫ぶ経団連提言
岸田政権は「新しい資本主義」の柱として、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想、経済安全保障、社会保障改革、「働き方改革」を掲げる。デジタル化に資本の延命を求めるその内容は、安倍や菅の政策とほとんど同じだ。それは、岸田のプランが経団連の唱える成長戦略の引き写しにほかならないからだ。
経団連は「。新成長戦略」と題した提言を昨年11月に出した。そこで経団連は「『新自由主義』の流れをくむ、わが国を含む主要国での資本主義は、行き詰まりを見せている」「資本主義をサステイナブル(持続可能)なものとするためには、国家間、世代間、職種間、地域間等の格差の是正が不可欠である」と、ことさらに言う。あたかも新自由主義からの転換を図るかのような言い方だ。だが、具体策として打ち出しているのは新自由主義攻撃の一層の徹底化だ。
経団連提言は、デジタル化により「時間・空間にとらわれない柔軟な働き方が可能になる」とし、「時間を柔軟に活用した副業・兼業や、リモートワークなども普及する」と言う。そして、「柔軟な働き方の普及に伴い、一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度は機能しなくなるため、企業は採用や雇用、処遇のあり方を見直すことが必要になる」と結論づける。解雇規制の撤廃と総非正規職化の完成が、経団連の提言の核心だ。
経団連提言には「。新成長戦略」という、終止を表す句点から始まるふざけた名前が付けられている。これは、〝日本型雇用を終わらせることからすべてが始まる〟という、資本の意思の挑発的な表現だ。
経団連提言はさらに、「一生の間に大企業、中小企業、スタートアップ、学術界、官庁、NPO等、さまざまな立場を渡り歩く、あるいは同時にさまざまな立場に身を置く、多様で複線的なキャリア形成が普通になる」とまで言う。雇用を徹底的に流動化し、ひいては雇用という考え方もなくして、全労働者をフリーランスにしてしまうことが目指されている。資本は雇用に一切責任をとらない。
「業務融合化」強行するJRを先頭に
経済同友会の夏季セミナーで、サントリーホールディングス社長の新浪剛史が45歳定年制をまくしたてた。これは特異な主張ではまったくない。新浪は大資本の基本路線に沿ってこう叫んだのだ。
そして、これを現場で強行しようとするものこそ、JR東日本の「業務融合化」だ。それは、あらゆる業務を労働者に掛け持ちで行わせるとともに、40歳代で管理職になれない労働者は外注先会社に出向・転籍させる攻撃として仕掛けられている。
もはや持続不可能になった資本主義
経団連など資本家たちはこの間、「サステイナブルな資本主義」という言葉を盛んに使っている。資本主義はもう持続できないという現実が、彼らにも突きつけられているからだ。だから資本は、「新自由主義的な政策」からの転換によって資本主義が持続可能になるかのように言い張る他にないのだ。これはまさにペテンだ。
労組破壊を軸とする新自由主義の攻撃は、最末期に至った資本主義の最後の延命策だ。それは単なる政策ではない。資本主義である以上、新自由主義からの転換などできない。結局、資本の攻撃は、解雇規制や労働時間規制など、労働者が勝ち取ってきた権利の方を「持続可能でないもの」と決めつけて、解体しようとするものになる他にない。労組破壊は一層激化する。
戦争に向けた国家改造と一体の攻撃
岸田の言う「新しい資本主義」は、戦争に向けた国家改造とも一体だ。衆院選後に日本商工会議所が出したコメントは、「『新しい資本主義』をベースとした国家の有事に備えるレジリエンス(適応力・回復力)強化が最重要課題」とあからさまに述べた。経済同友会も「『新しい資本主義』の具現化は、国家の体系を新たに描き直すことに他ならない」と表明している。
岸田は、経済と人民の生活を戦争の論理で統制する経済安保戦略を振りかざしている。そのもとで資本は、大軍拡と戦争国家化の中に延命の道を見出して動き出したのだ。
階級的労働運動をよみがえらせよう
この情勢だからこそ、階級的労働運動をよみがえらせることが必要だ。11・7労働者集会は、その展望を鮮やかに示した。
労働者の権利は労働者の団結した闘いによってのみ守られる。労働組合には改憲・戦争を阻止する力もある。全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組は、そのように闘い、弾圧に屈せず団結を守ってきた。そして今、新自由主義を終わらせる労働運動の拠点になっている。
破産しながら凶暴化する新自由主義の攻撃を進める岸田政権を、階級的労働運動の力で打ち倒そう。