都立病院独法化「定款」粉砕を 公的医療の全面破壊と戦時体制構築狙う小池

週刊『前進』04頁(3214号04面01)(2021/10/11)


都立病院独法化「定款」粉砕を
 公的医療の全面破壊と戦時体制構築狙う小池


 小池都知事は、第3回都議会定例会に「地方独立行政法人東京都立病院機構定款について」の議案を提出するとともに、所信表明で「東京都立病院機構」の来年7月設立を目指すと述べた。都立・公社14病院の地方独立行政法人化(独法化)のための「定款」案は、新自由主義による医療破壊を居直り、公的医療の全面破壊と戦時医療への転換を打ち出すものだ。絶対に粉砕しなければならない。

「感染症対応を強化」はウソだ

 第一に、小池は「コロナ下だからこそ独法化を進める」などという逆転した論理を打ち出した。「独法化によって進められる感染症医療提供体制の強化」と題した定款案の説明文は、「独法化することで、感染症により機動的に対応」できるとしている。
 しかし、小池はコロナ第5波に際して「自宅を病床のように」と言い放ち、公然と棄民政策を行ってきた。その結果、都内で8月中に112人もの人々が自宅などで死を強制された。その責任を取るどころか「直営では、地方公務員法等の制約により柔軟・迅速な対応が難しい」(説明文)と、公立病院だからコロナ対応ができなかったと居直り、さらなる民営化を進めようというのだ。爆発的な感染拡大の中で、都立・公社病院は、コロナ病床の約3割を担ってきた。そうした中でも医療崩壊が起こったことを逆手にとって、公的医療を根本から壊すと宣言したのだ。

「有事」をあおり戦時医療に転換

 第二に、小池の狙いの核心は戦時医療への転換だ。説明文では「有事の際には......感染の拡大に応じて体制を強化」「平時からも」と、およそ行政文書とは思えない用語をことさらに使っている。
 この間に全国で公立病院が独法化された際の定款と小池案とでは際立った違いがある。神奈川県立5病院(2010年)や埼玉県立4病院(今年4月)の定款では、「業務の範囲」の項目に単に「災害時における医療救護に関すること」とある。しかし、小池定款案の第18条第3項目では「災害及び公衆衛生上の緊急事態等に対処するために必要な業務を行うこと」と置き換えているのだ。これは感染拡大や災害時の医療ではなく、有事における医療労働者の動員規定だ。
 これにより、続く第19条「緊急時における知事の要求」は、その権力発動権限を規定するものとなる。そこには「命の選別」の強要も含まれる。小池は、菅政権を打倒した医療・介護・福祉労働者をはじめとする決起に追いつめられ、改憲・戦争体制づくりの先兵としてファシスト的に登場してきたのだ。

独法化は民営化ごまかし許すな

 第三に、小池は独法化が事実上の民営化であることをごまかし隠ぺいしようとしている。都立・公社病院が地方独立行政法人に変われば、都立病院が都立ではなくなり、行政の一部ではなくなる。ところが定款案第17条では、独法化後の病院名を、現在の公社病院も含めて「東京都立○○病院」にするとしている。
 そして、「医療従事者に感謝」などと述べてきた小池は、独法化によって都立病院で働く約7千人の職員が公務員の身分をはぎ取られることに一言も言及しない。一方で説明文では「多様な勤務形態・柔軟な給与体系」「専門性を考慮した給与制度」「定数など都のルールにとらわれず、組織改編や人員配置を機動的に実施」と露骨に書き立てている。非正規職化と給与削減、成果主義の導入、そして人員削減だ。実際、09年に独法化された東京都健康長寿医療センターでは人事考課制度が導入され生涯賃金が低く抑えられている。
 小池も病院経営本部も絶対に「民営化」という言葉を使わないが、独法化とは統廃合・再編・民営化などが自由にできるシステムであり、民営化そのものだ。
 なお、定款案に繰り返し出てくる「行政的医療」とは石原都政下でつくられた造語であり、公的医療とは全く違う。あらかじめ「行政が必要とする範囲」を得手勝手に決め、その他の医療に対する公的責任を放棄するためのものだ。
 小池は、「都立病院をつぶすな!」署名の拡大などコロナ下での「社会保障としての医療をとりもどす」闘いの前進に焦り追いつめられ、これらのペテンで独法化を強行しようとしている。ペテンのすべてをはぎ取り、小池を打倒し、独法化を絶対に阻止しよう。

病院労組つぶしこそ最大の狙い

 第四に、定款案の最大の狙いは都労連・都庁職の病院労組つぶしであり団結破壊だ。その先にあるのは、大学病院・私立病院も含めた戦時医療動員体制づくりだ。説明文では「大学や地域医療機関等との兼業や双方向の人材交流ができる人事制度を構築し、人材を効果的に活用」と強調している。医療労働者を独裁的な権限によって意のままに動かし使い捨てる。まさに「従軍看護婦」の再来だ。
 独法化は、首都東京の労働運動破壊と一体で医療と社会保障のあり方を全面的に覆し、戦時型の社会に転換する大攻撃だ。その本質を見抜いて絶対反対で闘い、労働運動の再生を実現しよう。
 この間の闘いは独法化阻止の展望を切り開いている。定款案採決阻止の都議会闘争から「民営化は悪だ」「都立病院つぶすな」10・23錦糸町集会・デモに立ち、11・7全国労働者集会に医療・介護・福祉労働者、地域住民の大結集を実現しよう。岸田新政権と小池知事を打倒しよう。
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民営化は社会を壊す
 都議会攻防を闘って11・7へ

 9月28日に第3回都議会定例会が始まった。小池都知事は所信表明演説で、定款案採決を議会に求めた。絶対に許せない!
 民営化は社会を崩壊させるだけだ。しかも今、都立病院や自治体で多くの労働者が、増員要求もすぐにはかなわず、コロナ増床に毎日毎日必死に応じざるを得ない状況で働いている。これが検証もされずに放置され、逆に「現状は問題だ、改革が必要だ」と上司(小池)がいきなりどなり込んできたような状況だ。
 定例会初日は小池演説が20分、自民党議員が質疑打ち切り動議を出し討論もなく40分足らずで散会した。
 小池は「超高齢化社会で医療需要が増大し、様々な環境変化に迅速に対応しなければならない」として、独法化を来年7月をめどに実施すると公言した。「有事」をあおり、独法化によって引き起こされる事態のツケはすべて労働者に払わせるつもりだ。
 そればかりか、「独法化こそコロナ対応の強化」と言わんばかりの資料を配布し、なんと「地方公務員法が制約」と公務員敵視を書き込んだ。7千人を非公務員化し、公社職員と合わせた1万人を独裁的に牛耳って「稼ぐ東京」を掲げる小池の狙いである「東京都丸ごと民営化」への決定的一里塚にしようというのだ。 この策謀と対決して10・13都議会閉会までの定款阻止攻防を闘い、11・7集会に攻め上ろう。
(東京東部 K)

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