焦点 教科書の書き換え強制 「従軍慰安婦」削除し歴史を偽造
週刊『前進』04頁(3214号03面06)(2021/10/11)
焦点
教科書の書き換え強制
「従軍慰安婦」削除し歴史を偽造
侵略戦争の美化狙う
政府は4~9月にかけて、使用中の中学社会、来年度使用の高校地理歴史、公民科の教科書から「従軍慰安婦」と「強制連行」の記述を削除・訂正させる暴挙を強行した。検定を終えた教科書をあえて訂正させることは異例の事態である。4月の日米首脳会談で中国侵略戦争に踏み込むことを表明した日帝が、侵略の歴史を抹殺し、本気になって改憲と再びの侵略戦争に突進しているのだ。断じて許すことができない。訂正強制は、4月27日に菅政権が①「従軍慰安婦」を単に「慰安婦」と表記する、②朝鮮人の戦時労働動員を「強制連行」「強制労働」とするのは「適切でない」、とする答弁書を閣議決定したことを受けたものだ。萩生田文部科学相(当時)の号令一下、文科省は5月、教科書会社に対し異例の説明会を開き、訂正申請するよう恫喝(どうかつ)した。教育への政治介入・国家統制そのものだ。
すでに2014年の検定基準改悪で、教科書に領土や安保問題の政府見解を記載することが強制されてきたが、今回は、歴史用語そのものを書き換えるという歴史の偽造まで行った。
日本軍軍隊慰安婦制度で、女性たちは意に反して性奴隷を強制され尊厳を踏みにじられた。その核心は、「慰安所」の立案から設置・管理まで日本軍が実行した点にある。「従軍」の記述削除は、この国家ぐるみの戦争犯罪の抹殺だ。また徴用工問題についても、植民地支配と民族抹殺政策のもとで国家ぐるみの強制連行・強制労働が行われたことは、消し去ることのできない歴史的事実である。
今日、再び侵略戦争を構える日帝にとって、かつての帝国軍隊は「聖戦を担う皇軍」であり、自衛隊の参戦は「正義の戦争」だという虚構の組み立てが不可欠だ。だから政府は、アジア侵略の歴史と戦争責任をなきものにしようとあがいているのである。それは、排外主義を扇動し、「戦争だけは繰り返さない」という労働者人民の階級意識と歴史認識を解体する、一線を越えた攻撃に他ならない。
教職員組合の復権を
時あたかも、17歳で日本軍軍隊慰安婦とされた金学順(キムハクスン)さんが名乗り出てから30年。金学順さんは1991年、自衛隊の初の海外派兵に対し、「一生を涙の中で生きてきた。『日の丸』を見ると怒りで震える」と血叫びを上げた。80年代には、教科書で「侵略」が「進出」に書き換えられたことに対し、アジア人民の怒りの決起が澎湃(ほうはい)と巻き起こった。日帝の歴史改ざんと新たな侵略戦争への突進は、アジア人民と日本の労働者人民の怒りに必ず火をつける。求められていることは、二度と戦争を繰り返させない労働組合とりわけ教職員組合の復権だ。「教え子を再び戦場に送らない」闘いは、戦争教育や改憲・戦争を阻んできた。政府が教科書を書き換えさせようとも、現場に団結がある限り、戦争教育は貫徹できない。
それゆえ歴代政府は、団結破壊と教組解体を狙い教科書攻撃を繰り返してきた。岸田とその新政権の要職に就く高市や萩生田は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」に所属し攻撃の急先鋒(きゅうせんぽう)を担ってきた。
戦争でしか延命できない自国政府を打倒することは労働者国際連帯の神髄だ。怒りを労働組合の団結に! 改憲・戦争阻止の一点で11・7労働者集会に結集しよう。