西日本 巨額増資で傷深める 「地方線廃止」社長が公言
週刊『前進』04頁(3214号02面04)(2021/10/11)
西日本
巨額増資で傷深める
「地方線廃止」社長が公言
コロナが暴いたJR体制の崩壊は、特にJR西日本を締め上げている。9月1日、JR西日本が大規模な公募増資を打ち出すと、株式市場には激震が走った。JR西日本だけでなくJR各社や大手私鉄、航空各社の株式は軒並み急落した。
国鉄分割・民営化は国鉄が所有していた公共の資産を「民間会社」のJRが分捕る形で行われた。JR各社は鉄道を運営し維持するために十分な資産を保有するものとされた。だから、分割・民営化以来、どのJRも株式を新たに発行する増資は行っていない。経営が成り立たないJR北海道やJR四国の現実と並び、JR西日本の増資は、国鉄分割・民営化の破産を示す歴史的な事態だ。
増資によって調達する2500億円超の資金を、JR西日本は「抜本的なコスト構造改革」のために使うという。具体的には約1700億円を鉄道事業の省人化に向けた設備の導入や新幹線車両の購入、大阪駅や広島駅の周辺開発などに投じ、有利子負債の返済にも資金を充てる。労働者のコロナ感染防止策には一切使われないのだ。
JR西日本は2020年度の決算で、連結経常損失2573億6700万円の大赤字を出した。同社は21年度も1065億円〜1415億円の連結経常損失を計上すると見込んでいる。
その危機を力ずくで突破するために、JR西日本は人員削減や大幅賃下げ、列車の減便やローカル線廃止などの大合理化に踏み込もうとしている。
異例の10月ダイ改
JR西日本は10月2日、異例のダイヤ改定を強行し127本の列車を削減した。来年3月のダイ改を待つ余裕はなかったのだ。列車の削減はローカル線廃止の布石だ。JR西日本はこれまでも、列車の利便性を意図的に低下させ、乗客減による「赤字」を口実にローカル線の廃止を沿線自治体に押し付けてきた。
JR西日本社長の長谷川一明は2月の記者会見で「ローカル線の維持は非常に難しい」と公言し、6月には岡山県と同県新見市、広島県と同県庄原市に「地域にとって望ましい地域旅客輸送サービスの姿」を明らかにするための協議を申し入れた。狙いは明らかに芸備線の廃止だ。
強制的な一時帰休
今年3月のダイ改で石川県の七尾線がワンマン化され、2両編成だけでなく4両編成の普通列車にも一気にワンマン運転が導入された。これは運転士に負担を強い、安全を破壊する。駅の窓口の閉鎖や無人化も進んでいる。観光地で特急停車駅の山陰本線・香住(かすみ)駅の無人化さえJRは打ち出した。
攻撃は極限的な人員削減に向かおうとしている。JR西日本は来年度に駅の契約社員制度を廃止する。非正規職の正社員への転換は拒み、雇い止めを強行しようとしているのだ。
1日当たり1000人規模の一時帰休も11月末まで継続すると言われているが、JR西日本は一時帰休の永続化と整理解雇を狙っている。外注化と外注先への転籍に向けた子会社の再編も始まった。
組合員に長期の一時帰休を命じるJR西日本に対して、動労西日本は五日市駅をはじめ職場での抗議行動を開始した。生き抜くために団結して闘う労働組合が今こそ必要だ。