東日本 外注化で事故が頻発 労働者と乗客に危険強い
東日本
外注化で事故が頻発
労働者と乗客に危険強い
駅は委託し窓口閉鎖
東京
JR東日本は2025年までに「みどりの窓口」を7割削減し、「指定席券売機」へ置き換えると発表した。社長の深沢祐二は「駅は切符を売るところではない。ビジネスをどう作るかだ」とまで言った。
新宿駅では「みどりの窓口」の要員は半分に減らされた。要員が不足し、休日の買い上げによる出勤の強制や、改札・出札の業務に就く労働者をホームに回すことも行われている。
19年に秋葉原駅がJRの子会社のJESS(JR東日本ステーションサービス)に丸ごと委託されて以来、山手線各駅の外注化が進められてきた(下)。だが22年頃までに外注化完成というJRの計画は予定通りには進んでいない。
JESSでもプロパー社員の青年労働者の退職が続いている。低賃金で昇給もなく、将来展望が持てないからだ。
東京では大規模駅の「車いす対応」がJRの孫請けの警備会社に全面委託された。警備会社はほとんどがアルバイトで人が定着しない。出向したJRのエルダー社員が「車いす対応」を担っているが、エルダー社員も職場を去る人の方が多くなる。そのためJRはエルダー社員に「65歳以降も働いてくれないか」と頼んでいる状態だ。
「みどりの窓口」が閉鎖され「指定席券売機」に置き換えられると、機械の扱いに慣れない高齢者は切符を買えなくなる。インターホンで係員が案内するというが、結局うまくいかず、人が対応せざるを得ない。インターホン対応を取りやめた駅も多い。この問題が解決できず、駅の無人化計画が中止された例もある。
かつての飯田橋駅はホームが大きくカーブしていた。ホーム要員が一度廃止されたが、視覚障害者がホームと電車の間に挟まれ、電車が動き出して死亡する事故が起きた。障害者団体が抗議してホーム要員が復活した。だが、その後、JRは飯田橋駅のホームを無理やり直線にする工事をしてホーム要員を削減した。
新宿駅の湘南新宿ラインのホームはラッシュ時以外は駅員の立ち番をなくした。車掌が15両編成なら全長300㍍になる電車を見渡さなければならないが、それは容易ではない。設置されたカメラですべてを見ることは不可能だ。労働者の経験や注意でかろうじて事故を防いでいるが、合理化が一層進めばいつ大事故が起きてもおかしくない。
にもかかわらずJRは、10両編成の京浜東北線などにもワンマン運転を拡大することを狙っている。
安全壊すワンマン化
水戸
3月のダイヤ改定で、水戸線の全列車がワンマン化された。水戸線の列車は5両編成で、常磐線に直通する列車は同線の友部―勝田間も含めてワンマン運転になった。
これに伴い、水戸運輸区では20人近い車掌に自宅待機が命じられ、それは今でも続いている。現在は基本給の100%が補償されているが、手当が削られたので生活が厳しくなった乗務員も多い。
ワンマン化で、ドア閉めやホームの安全確認などを運転士が1人で行わなければならなくなった。JRは「カメラがあるから確認は可能」と言うが、逆光やレンズの汚れで確認しづらいことが多い。
こうした中、水戸線の岩瀬駅で、車いすの乗客が電車に乗ろうとして転倒する事故が起きた。出勤途中の運転士が車内にいたことでなんとか対応できたが、運転士だけだったら重大事故につながっていた可能性もある。事故発生は午後8時ころで、駅員は不在だった。水戸線は外注化された駅が多く、昼間時間帯以外は駅員がいない駅ばかりだ。また岩瀬駅の下りホームは段差が大きく、動労水戸は改善を要求していた。
水戸支社管内では保線の合理化も進んでいる。
水郡線の常陸大子(ひたちだいご)駅には水郡線営業所があり、水郡線内の業務の大部分を担っている。そこには保線科があり、水郡線の維持管理を行っていた。だが、水戸保線技術センターが一括して維持管理することになり、常磐線が最優先にされ、水郡線内の除草や伐採作業は後回しにされた。そのため信号機や速度標識などが見えにくくなるところも出てきた。
車両が倒木とぶつかり前面ガラスが割れるなどの車両損傷事故も起きている。乗務歴30年以上のベテラン運転士も「こんなことは初めて」と言うほどだ。だが、事故対応も水戸から現地に向かうので復旧には大幅な時間がかかっている。
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全面外注化された山手線の駅
高輪ゲートウェイ駅、五反田駅、恵比寿駅、代々木駅、新大久保駅、高田馬場駅、目白駅、大塚駅、駒込駅、鶯谷駅、御徒町駅、有楽町駅