焦点 敵基地攻撃能力 「自衛」を口実に先制攻撃を正当化
週刊『前進』04頁(3213号03面02)(2021/10/04)
焦点
敵基地攻撃能力
「自衛」を口実に先制攻撃を正当化
「敵基地攻撃能力」を巡る議論が高まっている。4月の日米首脳会談で米日帝国主義が中国侵略戦争へかじを切って以来、一段とエスカレートした。自民党総裁選でも大宣伝された。高市早苗は「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ」「強い電磁波などいろいろな方法で相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」と発言、岸田文雄も「有力な選択肢」と主張した。
歯止めなき軍備拡大へ
「敵基地攻撃能力」とは、文字通り、相手国の領域にまで攻め込んでミサイルの発射基地などを破壊する能力のことだ。確かにこれまでの歴代自民党政権も、「敵の攻撃を防御するのに他に手段がない場合に限り、相手のミサイル基地をたたくのは自衛の範囲だ」という見解を踏襲してきた。だが、これが焦点化すればたちまち憲法9条を巡る大問題となるために、具体化することは避けてきた。しかし今、日帝は「北朝鮮や中国がミサイル能力を向上させており、これに対する有効・確実な防衛手段がないから、先に攻撃するのも自衛の範囲だ」と声高に叫び始めた。これは中国・朝鮮半島への侵略戦争、先制攻撃を行うための口実である。あるいは、このような攻撃態度をとることで他国に恐怖を与え、挑発して戦争を始めようとしているのだ。そして「敵基地攻撃能力」の保有に一歩踏み込めば、軍事基地ばかりでなく敵の政治的・軍事的中枢、都市や首都にまで攻撃対象を拡大していくことは不可避である。そのために必要な兵器もどんどん拡大する。実際、先行的に安倍・菅政権は攻撃的兵器の開発・保有を進めてきた。護衛艦「いずも」の空母化、F35ステルス戦闘機の導入、日本の領空から中国内陸部、北朝鮮を攻撃できる射程1千㌔超のスタンド・オフ・ミサイルの開発や、ノルウェー製長距離ミサイルの導入などである。
防衛省幹部は対中国で「敵基地攻撃能力の保有と防衛費の増額は不可欠」(6月12日付朝日新聞)と主張し、自民党総裁選で高市は、防衛費を対GDP比2%、10兆円規模にすることを主張した。何と現在の2倍の額だ。日帝は増税と社会保障の解体で軍備をどんどん拡大し、中国侵略戦争に突き進んでいる。
「安保」「国防」は戦争だ
政府は、中国・北朝鮮の行動をとらえてことさらに「日本への脅威」を大宣伝するが、実際には米日帝による圧倒的な核軍事力の展開、頻繁な大軍事演習こそが日々中国・北朝鮮に脅威を与え、対抗的な軍事行動を引き出している。東アジアで戦争の危機をつくりだしているのは米日帝の側なのだ。「敵基地攻撃能力」をめぐる議論を「専守防衛からの逸脱」とか「他の国防手段を考えるべきだ」という議論で終始させてはいけない。そもそも国家の「安全保障」「国防」とは何か。それは〈階級支配の道具〉としての国家の死守・防衛と侵略戦争の準備以外の何ものでもない。労働者人民の生活と生命はいつも「国家防衛」の犠牲にされ踏みにじられる。そのことは近現代の帝国主義の支配と戦争の歴史を見ても明らかだ。
だから「国防」「安全保障」には絶対反対を貫き、改憲攻撃を阻止し、戦争に突き進む自国政府を打倒するために闘おう。「万国の労働者、団結せよ」の国際連帯を貫き、ゼネスト、デモ、実力闘争で日帝を打倒することこそ、世界の平和を実現する唯一の道だ。