福一汚染水を海に流すな 漁民と共に絶対阻止しよう
週刊『前進』04頁(3209号04面03)(2021/09/06)
福一汚染水を海に流すな
漁民と共に絶対阻止しよう
東京電力は8月25日、2年後に実施をもくろむ福島第一原子力発電所の汚染水海洋放出の具体案を公表した。絶対に許せない。
4月13日に菅内閣が汚染水海洋放出の基本方針を関係閣僚会議で決定した。福島県庁にこの決定を伝えに来た梶山弘志経産相を迎え撃つ闘いが闘われ、それに連帯して東京でも首相官邸前の緊急行動に320人が結集して抗議の声を上げた。また福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長も絶対反対を表明した。東電の発表はこの切実な要求と闘いを真正面から踏みにじる暴挙だ。
さらに菅内閣はその前日の24日に汚染水に関する関係閣僚会議を開き、汚染水の海洋放出の「風評対策」案を決定した。東電の具体案発表はこの政府決定を盾にして自らの責任を放棄した卑劣な行為だ。
海底トンネルの計画破産は必至
東電の発表した汚染水海洋放出の具体案は、汚染水を海水で希釈して福島第一原発から海底トンネルを通して沖合約1㌔、水深約12㍍の海底付近に放出するというものだ(図参照)。この1㌔という数字は、沿岸から1㌔沖合には共同漁業権が設定されていないからだ。漁民が漁業権を盾に反対できないだろうという浅はかな願望からはじき出した数字でしかない。(青森県の日本原燃六ケ所再処理工場でも、放射性物質を含む廃液を海洋に放出しているが沖合3㌔だ)
しかし計画の海底トンネルは直径2・5㍍の巨大なもので、海底の岩盤を掘削するためにはリニア新幹線の地下トンネル工事などでも使われているシールドマシンという巨大な重機が必要となる。このシールドマシンがトンネルを掘り進めるためには巨大な発進立坑が必要になる。この発進立坑を「放水立坑」として利用する。
そして港湾外から取った海水と汚染水を混合してこの放水立坑にため、希釈後のトリチウム濃度を確認した後に放出予定だという。
だが報道によれば、東電は9月にも海底の状況を調べる磁気探査を始め、その後、地質を確認するボーリング調査を行うという。海底の地質調査も今からだというのだ。「泥縄」そのものではないか。
沖縄の辺野古新基地建設でも明らかになったように海底の地質は複雑である。巨大なシールドマシンでトンネルが計画通りに掘れる保証などどこにもない。こんなずさんな計画とも言えない「計画」を東電は9月にも原子力規制委員会に審査を申請する見通しだという。こんな提案を絶対に認めてはならない。
東電はこのようなでたらめな海底トンネル計画で漁民や労働者人民を丸め込めるとでも思っているのか。漁民や労働者人民を愚弄(ぐろう)するのもいい加減にしろ。
風評対策名目に東電の救済狙う
今回の政府と東電の決定のもう一つの柱が「風評対策」なるものである。政府の案では、汚染水の放出により水産物の価格が下落した場合、政府が買い入れるなどの対策を盛り込んだ。政府が基金を用意して、冷凍可能な水産物は買い入れるなどとしている。
つまり税金投入で漁民の収入減少を補填(ほてん)することで漁民を買収しようという卑劣な策動だ。漁民が怒っているのは単なる収入減少ではない。海が放射能で汚染されて漁業が出来なくなることに怒っているのだ。政府案はこの漁民の怒りを踏みにじるものだ。
しかもこの案は東電の責任をあいまいにして東電を救済する許しがたいものだ。福島第一原発被害に対する第一義的責任は東電にある。ところが政府案は基金(税金投入だ)で「風評対策」について東電の肩代わりをするものだ。今までも政府は東電救済のために莫大(ばくだい)な税金を投入してきた。東電救済策を許してはならない。
さらに「風評対策」と称して、放射線副読本に汚染水は安全だとの記述を追加することまで狙っている。
今回の東電と政府の決定に対して、漁民と海外から怒りの声が上がっている。
漁民は絶対反対海外からも怒り
28日に県漁連の野崎会長は「海洋放出には反対」と改めて絶対反対を表明。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長も「全国の漁業者は、処理水の海洋放出に断固反対であることを改めて表明する」との声明を出した。中国や韓国、米国など14カ国・地域で輸入停止や規制が続いている。にもかかわらず一方的に汚染水の海洋放出の具体化を進める日本政府と東電への怒りの声が世界で高まっている。
韓国の環境運動連合は「海底トンネルによる放出で漁民被害を減らすことができるとし、1㌔メートル離れたところへ汚染水を捨てるという日本政府の計画は詐欺に他ならない」と鋭く弾劾している。韓国政府や中国政府も相次いで弾劾の声を上げている。
汚染水の海洋放出への怒りは地に満ちている。漁民と連帯して絶対反対で闘えば海洋放出を阻止することは可能だ。断固闘おう。