差別・分断のパラ中止を

発行日:

週刊『前進』04頁(3208号02面02)(2021/08/30)


差別・分断のパラ中止を


 関東障害者解放委員会らが8月23日、パラリンピック開催の責任部署である日本パラリンピック委員会(JPC)と日本障がい者スポーツ協会に対し、パラリンピックの中止を申し入れました。申入書の抜粋を掲載します。(編集局)

申入書
【要望】
一 貴会がパラリンピックを直ちに中止する英断をしていただき、その旨を関係機関に申し入れていただきたい。
二 ご返答を、開会式前の8月24日午後5時までにいただきたい。
【理由】
(1)コロナ感染爆発下でパラリンピック開催は無責任!
 貴会は声明で「パラリンピック実施の歓迎」を表明しています。しかし昨今ブレイクスルー感染も報じられ、人為的な「トリアージ」の下で医療体制は完全に悲鳴を上げています。10代以下の感染急増を知りえていながら競技障害者と観戦に参加させられる児童・生徒には無観客の例外を設けるあり方には納得いきません。誰がどのような責任を取れるのでしょうか?
 オリ・パラ関係者で600人を超える感染者、複数の死亡者が発生しています。基礎疾患が多いと言われる障害者の安全対策は介助者含め完全に無視されています。日頃、障害者差別虐待防止法や障害者差別解消法が声高に啓発されていながら、障害者に対する安全配慮義務違反は法が禁じる「虐待」「ネグレクト」を生み出していませんか?
(2)パラリンピックの「学校連携観戦」を実施すべきではありません
 東京オリンピックでの「学校連携観戦」教育は都内では中止になりました。しかし貴会は「気づきの教育効果が大きい」とパラリンピックでの観戦教育に支持表明をしています。
 「気づき」とは何でしょうか? パラリンピックがそうですが障害者の各種クラス分けが平素から強いられ「残存能力」を競わせる中で「一部エリート」と「大量の落ちこぼれ」を作り出します。この骨身を削る競争・能力主義の現実を「スポーツイベントだから我慢しろ」と認めさせ、日常生活での不満や怒りを抑制していく「教育」しか生み出さないのが現実です。誰もが反対だから国が号令を発しないと成り立たないイベントです。歴史的にも愛国主義教育、戦争を支えた天皇主義教育として連なり、障害者を永らく分断してきた特別支援教育の限界としても語り継がれ、まさに皆で克服しなければならないテーマとしてあるはずです。したがって能力主義と「共生社会実現」とはまったく相容れないし、そこに「気づく」べきです。差別・分断を排し日常生活の中から「共に生きられる社会」を作り上げていくべきではないでしょうか。
(3)パラリンピック推進発言は障害者の差別をあおりたてています
 橋本聖子組織委会長は「(パラ選手は)障害を乗り越えてチャレンジをしてきた背景がある。子どもたちが直接パラ競技を見ることはまさに教育に値する姿だ」と絶賛しています。「障害を乗り越える」と言いますが、これは本当に障害者の言葉でしょうか? 「能力を持て」と逆に差別をあおっていませんか?
 また武藤組織委員会事務総長は「ワクチンを打てない方もおられる」と、パラアスリートの基礎疾患・障害状態への影響を認めています。知っていて危険をおかすのでしょうか?
 更にIPCパーソンズ会長は「消費者がスポーツイベントに対し迫力のあるスポーツ以上のものを求める時代がやってくる」とパラリンピックに期待し、〝共生社会はパラアスリートが卓越した能力を披露することで起爆になる〟と論じています。
 障害者の日常生活や差別・分断との闘いや苦労などまったく想定されてません。健常者のIPC会長が一方的に「障害を乗り越えろ、我慢しろ」と障害者にけしかけるイベントになりませんか?
(4)戦争と差別・選別に反対して闘いましょう
 今大会は、森喜朗氏の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」から始まり、オリ開会式音楽担当の小山田圭吾氏が障害者への虐待・イジメを行い自慢してきたこと、同ディレクターの小林賢太郎氏が「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」を笑いのネタにしてきたことなど、「共生社会」の実現とは真逆の差別にまみれた有様を生んできました。障害者団体として絶対に許すことはできませんし、協力できません。
 パラリンピックの源流には戦傷者復員事業や戦傷補償の回避などの戦争政策があり、また障害者を利用したビジネス産業化があります。こうした「命よりカネ」の新自由主義と一体で人間を「価値ある者」と「価値なき者」へと振り分ける差別・分断は一層強まり、津久井やまゆり園事件のような障害者抹殺へと駆り立てられてきました。精神科病院でのコロナ大量死や、ホームレスや生活保護者への相次ぐ襲撃事件も繰り返されています。戦争への国家総動員と同じ時代が始まっているかのようです。しかし、オリンピック会場で選手から黒人排斥と闘うBLM運動の意思が示されたり、ミャンマー軍事政権への抗議や難民申請も闘われています。これこそが本来の共生への始まりでしょう。
 パラリンピックを中止し、戦争と差別・選別にともに反対して闘うことを要請するものです。
2021年8月23日
関東障害者解放委員会/改憲・戦争阻止!大行進東京北部実行委員会/板橋区人権・平和・教育の会

このエントリーをはてなブックマークに追加