8・15集会 たおせ!資本主義

発行日:

週刊『前進』04頁(3208号02面01)(2021/08/30)


8・15集会
 たおせ!資本主義

(写真 8・15集会)


 「たおせ!資本主義 踏み出そう次へ!」を掲げて8月15日に都内で開催された「戦後76年 8・15労働者市民のつどい」(同実行委主催)の発言から森川文人弁護士が行った基調のアピールと保健所労働者の訴えを掲載します。(編集局)

森川文人弁護士アピール
 革命の可能性が存在する

 昨年3月24日、オリンピックの1年延期を決めた日の東京の新規感染者は18人でしたが、今は連日5千人以上です。「それでも五輪を強行するという政府こそ『過激』だ」と学生が指摘していましたが、その通りです。この「緊急事態宣言下の五輪」は後年、資本主義の終わりの始まりとして、歴史を画すメルクマールになるでしょう。
 コロナ下で株価は史上最高値に上昇する一方、格差・貧困が拡大し、自殺者も増えています。いくらオリンピックをテレビなどで流しても、日常生活上の不満と怒りはこれまでにないほど煮えたぎっています。

中国侵略戦争阻む

 今日は8月15日、特別な日です。昨年はコロナ下にもかかわらず、世界の軍事支出は過去最大の2兆㌦に達しました。日本においても、着々と戦争の準備が行われています。
 4月16日の日米首脳会談では、共同声明で「日本は自らの防衛力を強化する」とした上で、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記しました。これは中国に対する軍事的挑発ととらえるべきものです。また3月、アメリカの上院軍事委員会では「中国が6年以内に台湾侵攻する可能性がある」とインド太平洋軍の司令官が証言しました。中国軍が増強される前に米日の中国侵略戦争で資本主義の危機を突破しよう、というアナウンスです。
 「悪の独裁国家VS民主主義連合」なんて図式に乗せられて戦争に動員されてはたまりません。「アメリカは」「中国は」「日本は」などといった言い方がされますが、注意しなければならない。私たちとは利害の対立する資本や政府を一括りにし、その対立を曖昧(あいまい)にしようとする権力側の常套(じょうとう)手段として「国」という概念は使われます。しかし、中国政府と中国の人民は区別して考えなければなりません。私たちと菅政権を区別するようにです。
 「中国との戦争に反対」「中国の人民と連帯しよう」という声を、意識的に上げ続けましょう。打倒すべきは自国政府に規定された「敵国」ではなく、国民を戦争に追い込む自国政府であることを何度も何度も確認していきましょう。

改良や救済でなく

 今日のタイトルは「たおせ!資本主義 踏み出そう次へ!」。そろそろ革命の話をしなければならないと思います。1987年生まれの斎藤幸平さんの『人新世の資本論』が30万部を超えるベストセラーになっています。何十万もの大衆は、今日ここにいる私たちよりずっと革命的に進んでいるのかもしれません。
 私は1990年代初めから、ホームレスの人たちの法律相談など行う運動をしていました。ホームレス状態の人が借金問題を清算して社会復帰するなど、成果を上げることはできた。しかし、社会復帰した人は再び資本の都合でリストラされ、路上に戻ってくる。それを私たちが救済するだけでは、資本の補完的な作業をやっているだけではないか、と考えたのが発想の転換でした。
 さらに弁護士業界も新自由主義攻撃の対象にされました。「司法改革」の名で弁護士激増政策がとられ、弁護士も食べていくことがギリギリの職業に追い込まれた。小手先の改良や他人任せではどうにもならない現実に直面したのです。
 すでに世界は矛盾に満ちていて、抜本的に変えないとどうにもならない。ここに革命の芽があります。革命の話を意識的にしていかなければならない。エッセンシャルワークをする人がいなければ世の中は回らないように、一人一人の現場に革命の可能性が存在します。自分たちの力を自覚して、力関係を変えていきましょう。
 私たちは一人ではない。若者に期待するのもいいけども、私たち自身に期待しましょう!

------------------------------------------------------------

保健所労働者の訴え この怒りには正義がある

 保健所の感染症対策を行う部署で働いています。日々資本主義の破綻を実感しています。私は新型コロナ対応以外の医療扶助を主に担当していますが、これらの業務も職員がコロナ対応に駆り出されて、従来より少人数でやっており、まったく回っていません。

オリンピック反対

 保健師たちは、以前からオリンピック後を心配しており、大きな声には出さなくともオリンピック反対が多数でした。私も「保健所は過労死寸前! 利権と腐敗のオリンピック終わらせよう!」とプラカードを書いてデモに参加しました。
 今やその予想を上回る勢いの感染爆発です。いつ過労死する人が出てもおかしくないという危機感でいっぱいです。入院できない状況は、そのまま健康観察をする保健師の負担増になっています。
 「Spo2 90―94が苦しい時期なのに、その間を対応しなくてはいけないのがつらい」と言っていました。
 その他にも▼午前3時に出勤してパルスオキシメーターを配達した▼毎日遅いのでしばらく動いている子どもを見ていない▼2日間で2時間しか寝ていない▼午前2時に寝て4時に電話で起こされてそのまま出勤した----こんなことが日常なのは絶対に間違っています。もう辞めたいという声も上がっています。
 そもそも1年半前、コロナが蔓延(まんえん)し始めた時から職員は毎日深夜まで働き、同時に結核やO157や性感染症など各種業務もやっています。
 昨年から組合本部に現状を訴え、部長・市長に対して要望書を出し、人員交渉で増員を要求し、人事課長に現場を視察させ、また毎月の衛生委員会では毎回超勤時間を問題にしてきました。しかし、今年の増員は保健師2人のみ。そもそも募集しても集まらない。あとは会計年度と応援職員でやれと。応援職員は、今年から一部が2週間交代になり、むしろ教える職員が疲弊している。
 一方で感染症担当だった係が課として独立したことにより、各種庶務的業務が新たに発生。その上、昨年は中止になった難病や小児慢性特定疾病などの受給者証の更新事務が復活したため、完全にキャパオーバーです。
 名前だけ感染症を担う課にしたものの、むしろ体制は弱体化しています。事務職含めて怒りが巻き起こり、私も5月から土日出勤をやめていました。結局支払い遅れや回答の期限切れが続出し関係各課や住民に迷惑をかける事態となっています。
 でもこれは個人の責任なのか? 絶対そうではない。半分の人数で同じことができるわけがない。
 私は普段つれあいが家にいないことが多く、学童と保育園の送迎もあり、残業できても午後6時半まで。なんとかつれあいに早く帰ってきてもらって週に1度残業できるかですが、12時までやったところで焼け石に水です。
 残業でどうにかなるレベルでないため、40項目以上のできていない業務を課長に訴えますが、「どうにかがんばって」と。「人員が増えないなら(超勤時間の指定がある)超過勤務命令を出せ」と要求していますが、苦情や催促が連日あり、これはこれできついです。管理職からはほぼ放置されているため、しつこく「こんなに業務が滞っている!」と訴えています。
 本来ならストライキで闘うべき事態です。

みんなが超過勤務

 このかん、保健所では調査関係を民間会社からの派遣職員に委託し、役所の他部門からの応援職員は据え置き、会計年度任用職員を増やして対応してきましたが、今は感染者が3倍4倍になっている。ファーストコールに2日間待たせるなど対応できていません。
 問い合わせも昨年の冬から発熱者専用コールセンターを県が一括して外部委託しましたが、今日聞いた話だと全くつながらなくなっているようです。こちらも破綻している。結局しわ寄せは弱い市民にいきます。
 毎日感染者数をホームページで公表していますが、発生届の確認が追いついておらず、翌日の件数に持ち越されている状態。保健師は激務の中で心身ともに追い詰められています。
 国の出している残業時間の上限規制は、▼年720時間以内▼複数月平均80時間以内▼月100時間未満ですが、保健所では全く守られていません。おそらく首都圏はじめ、全国の保健所で労働法違反がまかり通っています。
 加えて、菅のオリンピック強行により、ワクチン担当部署は5月に200時間以上の残業、「6月には応援が増えるから......」と言いながら6月も180時間レベルの残業が発生しています。コロナ対応、ワクチン対応にもあちこちから応援職員を出していて、元の部署も大変だと聞いています。全国の保健所は、このみんなの超過勤務で成り立っています。

今こそストライキ

 「災害レベルだ」と言う首長がいますが、災害ということで、責任がわからなくさせられています。
 公務員は災害や緊急時の対応という名目でいくらでも残業できるかのようになっている。これまで公務員を減らし続けて、感染対策を縮小して、保健所を減らしてきた人災じゃないんですか? 政治の問題じゃないのか?
 斎藤幸平さんが言ったように、もうけが優先、人の命を軽視した資本主義社会の結果だと思います。自治体労働者は資本主義を維持する立場、でも破綻を明らかにできる側でもある。そのためには闘わないとはっきりしない。
 ワクチン対策で200時間の残業が出たこともあり、何かしなくてはと組合員に声をかけ、2回の会議を開催しました。3人でしたが、さすがに残業規制以上の現実はおかしい、36協定の上限規制が守られていないが、守られていない現実に声を上げる必要がある、という点は一致しました。
 結局、保健師が職員がどれだけ過労死寸前でがんばってもこの体制を支えることにしかならないんです。疲弊しながら病気になりながらも回していることで、これが普通になってしまっている。
 現場は責任感が強く、できないとは言えない、言いづらい。でも自分ができないと言わなかったから、がまんしてきたから、保健所や自治体はこんな状況になってしまったのではないか。これでは市民を守ることはできないんじゃないか、みんなが休めるように、保健所の体制や感染症対策を強化させるために、市民と職員を守るための闘いとして休もう、そして必要な体制を強制させないといけないと話をしています。
 こんな残業している間に市長は1週間夏休みですよ? 今こそ闘いが必要です。ストライキ! すぐにはいかないけれど、個別には始まっています。
 体調が悪く、土日出勤を断る保健師も出ています。
 いま保健所で声を上げることは、国の体制に屈服しない、戦争に協力しないのと同じ質の闘いだと思います。きついけど、この怒りには圧倒的な正義がある。そういう闘いにしなくてはならない。
 この状況で何も言わない自治労本部に怒り沸騰ですが、取って代わらなくてはなりません。保健所から現場と共に闘っていきたい。

------------------------------------------------------------
▼Spo2 90―94 血中酸素濃度90〜94%。新型コロナウイルスの「中等症」とされ本来、入院治療が必要だが、現在は「自宅療養」とさせられているため、対応する保健師の負担が増大している。

このエントリーをはてなブックマークに追加