焦点 教員免許更新制の廃止 新自由主義「教育改革」が破綻

週刊『前進』04頁(3207号03面03)(2021/08/23)


焦点
 教員免許更新制の廃止
 新自由主義「教育改革」が破綻


 「教員免許更新制」が廃止の方向で検討されている。
 萩生田光一文部科学相が今春、教員免許更新制の「抜本的な見直し」を中央教育審議会に諮問した。中教審は8月にも廃止の結論を出し、来年の通常国会で法改正を目指すと報じられている。
 だが菅政権と萩生田は、2009年施行からわずか12年で更新制の「廃止」に追い込まれながらも、「『令和の日本型学校教育』を実現するための質の高い教師の養成・採用・研修」のためと称して、教育と教員の統制強化に向けた「教員制度」改悪をもくろんでいる。更新制廃止を勝ち取り、新たな改悪を打ち破ろう。

教員不足に拍車かける

 教員免許更新制度は、免許状に10年という有効期間を設け、10年ごとに免許状更新講習を受講させ、修了試験に合格した者についてのみ免許状を更新し、法的資格を継続させるというものである。現職教員は期限前の2年間に大学などで30時間以上の講習を受ける。3万円以上する受講料は自己負担。過労死ラインの長時間労働を強いられている教員が夏休みを返上して受講するうえ、地方の教員は交通費、宿泊費も自費でまかなうなど過重負担になっている。
 講習の中身は通常の研修や経験者研修とも重複する。7月に文科省が発表した教員調査でも、約6割が「役に立たない」などの不満を持っていることが示された。もともと導入当初から、必修科目の統制と認定試験での免許剝奪・失職の脅しに現場は猛反発していた。「管理職は講習免除」という差別的運用にも怒り心頭である。
 また、10年で失職の可能性があるため、早期退職や若者の教職希望を奪う一因にもなり、産休や病休などの代わりの教員が免許状の更新切れで見つからず、授業が成り立たない深刻な事態を生み出している。非正規教員に頼る地方自治体は、文科省に廃止を申し入れているほどだ。更新制は教職員の非正規職化による学校運営の破綻を促進しているのである。

教育基本法改悪と一体

 更新制導入の検討は2000年、道徳教育の強化、格差と選別教育をうたう教育改革国民会議が中教審に諮問した時から本格化した。「不適格教員の排除」が主張されたが、「不適格教員排除」の制度はすでに設けられており、年1度の選別では意味がないとして導入はいったん頓挫。06年、教育基本法の改悪を受け、「その時々で求められる教員として必要な資質能力の保持」と名目を変え、第1次安倍内閣により導入が強行された経過をたどる。
 目的は教員の選別・排除、国家統制、組合破壊であり、戦前の師範学校による国定教員づくりと同じ戦争・改憲攻撃であった。1990年代から「日の丸・君が代」強制、人事評価、行政の権限強化が職場に吹き荒れ、その一角として更新制も位置づけられた。
 だが、教員の身分だけを一般公務員より不安定にするなどの法的矛盾を抱え、教員の誇りを踏みにじる弊害だらけの制度の形骸化と破綻は、導入当初から目に見えていた。何よりも教育現場の日々の闘いが政治主導によるデタラメな制度を「廃止」に追い込んだ。「廃止」は新自由主義「教育改革」の破綻の象徴といえよう。
 教育の民営化をもたらすGIGAスクール構想も、すでに矛盾とほころびが露呈している。新自由主義は現場の闘いで打ち破れる。団結した力をつくりだす時だ。
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