ミャンマー人民と連帯し日帝打倒を 下 「経済協力」の名のもとに国軍支配下で甘い汁吸う

週刊『前進』04頁(3207号03面02)(2021/08/23)


ミャンマー人民と連帯し日帝打倒を 下
 「経済協力」の名のもとに国軍支配下で甘い汁吸う


 日本帝国主義は戦前から一貫してミャンマーを自身が延命するための「生命線」とみなし、資源や市場を略奪してきた(前号既報)。この構造は戦後も変わっていない。一貫して、あたかも「宗主国」であるかのような姿勢で国軍を支えてきたのが日帝だ。

「援助」に群がる日本財界

官民を挙げた国策として企業が進出

 1988年に学生を先頭とした大闘争が巻き起こると国軍はまたもクーデターを強行し、多くの労働者民衆を虐殺した。この軍事政権をいち早く承認したのが他でもない日帝だ。
 日帝はその後、2011年の「民政移管」を機に、豊富な天然資源と賃金の安さ、若年人口の多さからミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と位置づけた。こうして国を挙げた経済侵略と搾取が始まった。20年末時点で433社以上の企業が進出している。
 ゼネコンや商社が群がり「技術協力」「指導」などの名目で巨額の利益を得てきたのが、1960年代から開始された政府開発援助(ODA)事業だ。2018年度までの「有償資金協力」累計は1兆1368億円に上る(21年はODAの閣議決定を見送ったが「緊急無償資金協力」を実施)。1954年のバルーチャン第2水力発電所建設着工から始まった「賠償」事業と並行し、ヤンゴン・マンダレー鉄道、送変電設備の整備などの大プロジェクトが進められてきた。

日帝が開発計画を策定し政策「指導」

 ミャンマーは、日帝が官民合同チームを結成して企業進出を進めている唯一の国だ。この経済侵略の指揮をとってきた利権団体が、12年に中曽根康弘を会長として設立された「日本ミャンマー協会」である。21年3月時点で三井、三菱、トヨタ、大成建設、日立など日帝を代表する大資本127社(正会員)が名を連ね、副首相・財務相の麻生太郎が最高顧問を務める(表参照)。役員の多くが国会議員や大臣経験者だ。なかでも元内閣官房副長官、元郵政大臣である現会長・渡邉秀央は、今年のクーデター直前に国軍総司令官ミンアウンフラインと会談するなど国軍との「太いパイプ」で知られている。
 14年からは自衛隊と日本財団が「人材育成支援」と銘打って交流プログラムを開始。国軍の将官を日本へ招待し、研修、開発計画や事業運営の指導にあたってきた。留学・研修経験者は帰国後政府の各省に納まり、日帝と国軍との関係はさらに強化されてきた。ミンアウンフラインも過去に3度来日し、元首相の安倍や菅らと会談している。

国軍に資金与える巨額のODA事業

 日本政府が「自助努力の後押し」「持続的な経済成長」をうたうODAの実態はいかなるものか。ミャンマーで進行中(いずれも建設工事はクーデターで中断中)の主要なプロジェクトを紹介したい。
 最大都市ヤンゴンの南東20㌔に位置するティラワ経済特別区は、ミャンマー初の経済特区として開発されている。両国政府の国家事業であり、投入された資金は1千億円超。日本ミャンマー協会会長の渡邉が日本政府の協力をとりつけて開発の独占権を得た計画だという。共同事業体には住友商事、三菱商事、丸紅、3大メガバンクが39%、国際協力機構(JICA)が10%出資し、JICAは周辺インフラや法制度の整備まで行っている。
 すでにトヨタやスズキ、ヤクルトなど56の日本企業が進出。同地区とヤンゴン市を結ぶバゴー橋の建設には国軍所有の複合企業MEC(ミャンマー・エコノミック・コーポレーション)の子会社が日本企業の下請けとして参加している。
 なお、MECなど国軍が直接経営する企業の株式は国軍の現役・退役幹部が個人で保有し、収益はすべて国軍に入る。国軍企業とその子会社は多様なビジネスを展開し、国内企業中で最も多額の収入を得ている。
 ヤンゴン市内都市開発事業にはJICAや国土交通省管轄の官民ファンドなどが融資・出資し、事業総額377億円の8割を日本の官民連合が負担する。民間金融機関や企業が主体となり、ヤンゴン中心部の一等地でホテルやオフィスなどを建設・運営する計画だ。現地法人にはMECの子会社が20%を出資しており、用地を所有する国防省には年間約2億円もの土地賃借料が転がり込む。

国軍支える菅政権倒そう

軍政終わらせる力は闘う人民にある

 米帝の「自由で開かれたインド太平洋」と中国スターリン主義の「一帯一路」構想が重なる地として、ミャンマーには現代世界体制の矛盾が凝縮されている。
 ビルマは中国が最初に承認した非共産主義国家であり、「パウッポー(血を分けた兄弟の意)」という呼び名があるほどに両国の関係は深い。中国は軍政時代から地政学上の要衝であるミャンマーで資源やインフラ関連の大型プロジェクトを進め、国際社会で孤立する軍政を日帝とともに支えてきた。すでに両国間で天然ガス・原油パイプラインの運用が始まっている。
 一方、帝国主義にも虐殺を本気で弾劾し、止める気などない。口先では「人権」を掲げながらミャンマーが中国へ接近することを恐れる日米帝の思惑は国軍に見透かされている。軍事独裁を終わらせる力は、「私たちの権利を、私たちの未来を、私たちの手で取り戻す」と宣言して闘いぬくミャンマー労働者民衆の闘いにこそある。
 1990年代以降、在日ミャンマー人たちは繰り返し日帝の「経済協力」の本質を指摘し、「日本政府は国軍を支援するな!」と訴えてきた。そして今、連綿とした闘いの歴史のすべてをかけた闘いが始まった。その先頭に「88世代」とともに「民主化世代」が立っている。多くが労働者、技能実習生や留学生だ。このうねりは香港や韓国、タイでの闘いとも連動し、必ずやアジア革命―世界革命の突破口を開くものとなる。

入管体制を粉砕し菅倒すことが連帯

 以上から明らかなように、軍事独裁との闘いは日帝との闘いそのものだ。
 最大の国軍支援国家・日本は、数十年にわたり民主化を求めて闘ってきた多くのミャンマー人の難民認定を拒み続けてきた。クーデター後に打ち出した「緊急避難措置」も、根本的な解決策になどなりえない。必要なのは全入管収容者の即時解放であり、入管解体・入管体制粉砕だ。戦前からの日帝とアジア労働者民衆の関係を根本から覆す闘いが今こそ求められている。
 これは日本労働者階級の課題だ。労働組合がストライキで闘えば、資本の経済侵略を阻止することは可能だ。階級的労働運動の復権、菅打倒こそがミャンマー人民と真に連帯する道だ。ミャンマーで、日本で、命がけで街頭に出て声を上げ続ける人々と固く団結し、共に勝利を切り開こう。
(佐々木舜)

------------------------------------------------------------
日本ミャンマー協会名簿 (2021年3月現在)
●役員
最高顧問 麻生太郎
 (内閣副総理・財務大臣、元内閣総理大臣、衆議院議員)
相談役 清水信次
 (ライフコーポレーション代表取締役会長兼CEO)
会長・理事長 渡邉秀央(元内閣官房副長官、元郵政大臣)
副会長・理事長代行 白浜一良(元参議院議員、公明党顧問)
副会長 佐々木幹夫(三菱商事元会長)
    勝俣宣夫(丸紅名誉理事)
    岡素之(住友商事特別顧問)
理事長代行 古賀誠(元衆議院議員、元運輸大臣)  (以下略)

●正会員
丸紅
三菱商事
日立製作所
電源開発
大塚製薬工場
大成建設
住友商事
三井物産
三菱UFJ銀行
全日本空輸
イオングループ
三菱自動車工業JFEスチール
三菱重工業
伊藤忠商事
三井住友銀行
東京海上日動火災保険
いすゞ自動車
スズキ
東芝
日本製鉄
有限責任あずさ監査法人
IHI
みずほ銀行
キリンホールディングス
KDDI
住友化学
NTTドコモ
富士通
綜合警備保障
ヤクルト本社
日本たばこ産業
東日本旅客鉄道
首都高速道路
トヨタ自動車

(抜粋。計127社、別途賛同会員10社)

このエントリーをはてなブックマークに追加