中国侵略戦争・核戦争阻止へ 被爆者・被爆2世は訴える
中国侵略戦争・核戦争阻止へ
被爆者・被爆2世は訴える
新たな核戦争阻止を
被爆2世、反戦被爆者の会 中島健さん
6月25日、広島市議会は「平和推進基本条例(以下、条例)」可決を強行した。全会一致の触れ込みだったにもかかわらず、広島県原爆被害者団体協議会(被団協)や弁護士会による「言論・思想の自由の侵害は戦争への道」であり、憲法違反の疑いがあるとの鋭い批判にさらされ、10人もが反対・退場するという無様なありさまとなった。
いわば、被爆者をはじめとする反戦・平和の意思(「ヒロシマの心」と呼ばれている)を守るべきとする労働者・市民と、改憲・戦争をよしとする右翼勢力との回復し難い激突が公然化した。それは、国際オリンピック委員会(IOC)バッハ会長の広島訪問への怒りとしても表出し、2016年オバマ広島訪問時には沈黙を守っていた人々にさえ反対の声を上げさせるほど根底的だ。
8・6を前に盛り上がる「ヒロシマを利用するな」の怒りは、実は「条例」制定策動で明らかになった支配階級の「原爆問題」の捉え方への怒りだ。「条例」の狙いは6条2項の「平和記念式典を厳粛の中で行うものとする」という「厳粛規定」だ。19年から右翼の自民党議員の肝いりで始まった「8月6日拡声器規制条例」制定策動が被爆者と市民の圧倒的な反対の声によって頓挫したことへの巻き返し策動だった。
しかし、「厳粛」が何を意味するか不明なように、この攻撃は極めて危険であると同時に極めて脆弱(ぜいじゃく)でもある。我々は、コロナ下であれ最大限の予防措置をとりつつ8・6ドーム前集会を大爆発させ、改憲=核戦争にひた走る菅政権を弾劾しぬく、まさに「厳粛」な決意にあふれている。
実は「条例」は、広島に対して原爆攻撃を行った国がアメリカだとは一切書かない。その理由を、河井克行・案里夫妻に買収された市議会議員・三宅正明は次のように趣旨説明した。
「1949年の広島平和記念都市建設法制定は連合国軍総司令部(GHQ)に恩がある。加害責任というものは追及しないことにしたという経緯がある」
「復興させてやるから」原爆投下の責任を追及するなと米軍が求め、それに広島市(日本帝国主義)が応じたということだ。52年発効のサンフランシスコ講和条約で「対米請求権放棄」を約束する3年も前に、放射能の影響で死の苦悶(くもん)にあえぐ被爆者に対する仕打ちがこれだった。
浜井信三市長(当時)こそが平和記念都市建設法の立役者なのだが、50年の8月6日には全ての反戦集会とデモを禁止しておきながら、他方では訪問中の米ロサンゼルスで、「日本国民はトルーマン大統領が国連においてとる措置を全面的に支持している」と演説し、米国の朝鮮侵略戦争への支持を表明した。その時に助役名で広島市民に下された通達が「反省と祈りの日とせよ」だった。つまり支配者のいう平和とは、朝鮮侵略戦争の出撃基地になっている日本列島の現実に抗議する民衆の反対運動を禁止すること、「城内平和」のことだったのだ。
47年、戦後初めての平和宣言は「世界平和を招来せしめる機縁」と原爆を美化したが、「条例」でも「世界平和樹立への礎」として同様に賛美している。原爆に対して怒ることができない者が、何を祈るというのか! それは結局、「黙って死んでくれてありがとう」と被爆者を慰撫(いぶ)する侮辱でしかない。「靖国」と同じだ。
我々は、中国侵略戦争において日米帝国主義者が核戦争も辞さずと身構え、労働者民衆を核戦争のえじきにさせることを二度と許しはしない。核戦争を必然化する帝国主義とスターリン主義の破綻としての第3次世界戦争を必ずや阻止し、積年の積もりに積もった被爆者の核と戦争への怒りを爆発させる決意だ。
76年前を忘れたのか
被爆者、NAZENナガサキ 城臺美彌子さん
絶対に改憲を許してはなりません。中村法道長崎県知事は先日、安倍前首相の実弟・岸信夫防衛大臣と面会し「陸上自衛隊・水陸機動団の配備を長崎にお願いします」と要請しました。「長崎は国境に近いので非常に脅威が迫っている」「配備されたら、経済も活性化するし、県民も安全に暮らせる」と。
中国の海洋進出に対抗するとして沖縄や先島諸島で日米連携のミサイル網づくりが本格化し、陸上自衛隊は奄美大島で対空戦闘を想定した日米共同訓練を実施しました。これは平和への道を歩いているのでしょうか。いたずらに中国を刺激するのではと思います。
76年前を忘れたのでしょうか。太平洋戦争突入の頃と同じように、どこかでつくられた脅威に向かって国民の不安をあおりたて、自衛隊にまるで軍隊のように戦う訓練をさせ、いつでも戦争ができる準備をしているとしか思えません。核の先制攻撃を思わせるような敵基地攻撃能力の保有など、危機を呼び込んでいるのではないでしょうか。
今戦争に突入したら、核戦争、そしてAI(人工知能)を使った武器で人間を攻撃する恐ろしい戦争も予想されています。核の威力も今ではヒロシマ型原爆の千倍から5千倍になっているそうで、そんなものが世界に1万発以上存在しています。もしどこかの国が間違って核のボタンを押したとしたら、世界中どこにいても人類皆被爆者になってしまいます。原子力発電所も「地上に置かれた原爆」と言われています。チェルノブイリ原発事故、福島第一原発事故による放射能汚染で森も畑も海も川も汚染されて住めなくなったのは記憶に新しいことです。
今、核兵器禁止条約に世界の86カ国が署名、54カ国が批准しているのに、大国アメリカの核の傘に入っている日本は「世界で唯一の被爆国」と言いながら署名も批准もしていません。今年もまた8月9日の長崎祈念式典で総理は「日本は世界でただ一つの被爆国です。先頭に立って核を持っている国と持たない国の橋渡し役を務めます」と恥ずかしげもなく述べるのでしょうか。それとも無視するのでしょうか。
(長崎の)平和宣言文の起草委員会の最終会合では、条約に署名も批准もしていない日本政府に対し、今年は署名・批准に加え第1回締約国会議にオブザーバーとして参加し、主導的な役割を果たすことを求める文案が示されました。
米中対立が激化する今、日本は両国を仲介するための外交努力をすべきです。実現すれば日本に軍隊も必要なくなり改憲も必要ありません。米国をはじめ核保有国に、「抑止力は不要です。あれば火種になるだけです」という落合恵子さんの言葉を聞かせたいです。
改憲にも戦争にも絶対に反対です。8月9日、ぜひ長崎に来てください。共に声をあげましょう。
ヒロシマつぶし許さない
自治労広島市労働組合委員長 福井利明さん
1945年8月6日、人類史上初の原子爆弾の投下によって、当時の広島市長と広島市の職員の約半数が一瞬にして殺されました。そうした廃虚の中から、戦前、住民を戦争に駆り立てた「天皇の官吏(かんり)」としての公務員ではなくて、戦争反対、住民と共にある、そうした自治体労働運動が自治労の原点だと思っています。
ところが6月25月、広島市議会で「平和推進基本条例」が強行可決されました。8・6ヒロシマ大行動の早朝のデモを念頭において、これが「厳粛なる式典」を妨害していると言っているわけです。この条例ができて一番喜んだのは日本会議であり、これは戦争・改憲への道の中でのヒロシマつぶしです。
原爆ドーム前を決して日本会議や右翼に蹂躙(じゅうりん)させずに、多くの被爆者の眠る平和公園を、再び過ちを繰り返さない闘いの場としたいと思います。8月6日、大結集をお願いします。(7・4国鉄集会での発言要旨)