原潜保有へ小型原子炉開発 原発推進し核武装をめざす菅
週刊『前進』04頁(3203号02面03)(2021/07/19)
原潜保有へ小型原子炉開発
原発推進し核武装をめざす菅
原子力潜水艦の建造・保有に向け動きが強まっている。自民党が「小型原発開発」を叫び始めているが、これは「小型原発は安全」と小型原子炉―小型原発の建設をめざすとともに、他方で原潜用の小型原子炉開発を目的にしたものだ。
日米共同声明を転換点として、日米帝国主義は中国侵略戦争に公然とかじを切った。自衛隊の沖縄・先島諸島への配備が促進され、日米共同演習が激しさを増している。さらに、米インド太平洋軍が、日本本土から沖縄―台湾―フィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿って対中ミサイル網を構築する計画を進めていることが、新聞報道で改めて明らかとなった。原潜保有の動きは、これらと一体の自衛隊の本格的な侵略軍隊化を狙うものだ。
「原潜は合憲」と稲田が国会発言
自民党の「最新型原子力リプレース推進議員連盟」が4月12日に設立総会を開き、会長の元防衛相・稲田朋美は記者団に「新型原発のリプレース(建て替え)が重要」と強調した。稲田が言う「新型原発」とは主に小型の原子炉を使う原発のことだ。小型原子炉は原潜などの推進力として使用が可能だ。稲田は防衛相時代の2017年6月、国会で「原子力を自衛隊の艦艇の推進力として利用することは憲法上は禁止されない」と言い放った。この稲田が旗振り役になり、原潜の保有に向け動きを加速させているのだ。その動きはすでに始まっている。昨年12月3日、三菱重工が「一体型小型原子炉の概念設計を完了」と発表した。その中で、この小型原子炉は「電源供給だけでなく動力や熱源利用といった多目的利用も実現可能」と強調している。「動力」としての「利用」とは艦船などの推進力として使用できるという意味だ。
三菱重工とは、戦時中旧海軍の戦闘機零戦や戦艦武蔵、潜水艦など数多くの兵器を開発・製造し、戦後も自衛隊の艦艇などを製造し続けている軍需企業だ。何百何千万のアジア人民・日本人民の虐殺に加担し、肥え太ってきた死の商人だ。それが、中国侵略戦争のための原潜製造にまで手を染めようとしているのだ。
海上自衛隊が現在保有する潜水艦は、ディーゼルエンジンで発電した電気を電池に蓄え、それを使ってスクリューを回して海中で活動する。潜航中に電池が減れば、ディーゼルエンジンに必要な空気(酸素)を取り込むため浮上するか、海面すれすれの深さでシュノーケルを突き出し空気を取り込む作業を行わなければならない。新型の潜水艦は、従来の鉛蓄電池に替え蓄電容量の大きいリチウムイオン電池を搭載しているが、これも限度がある。
海上あるいは海面近くまで浮上しての作業は相手に発見される危険性がきわめて高い。潜水艦の最大の弱点がこの作業だ。原子力を推進力に使えばそれが不必要となって長期間潜航し続けることが可能となり、軍事的に有利になる。原潜の保有は日帝・自衛隊にとって長年の宿願だったのだ。
「原子力船むつ」でデータを蓄積
日帝は1960年代から原潜や原子力空母建造のための技術蓄積をめざして原子力船の開発を始めた。日本原子力船開発事業団が69年6月に進水させた「原子力船むつ」はそのさきがけだった。むつの原子炉部分を受け持ったのも三菱だ。だがむつは74年9月、試験航行中に放射線漏れが発生し、母港・大湊港のある青森県むつ市の漁民などの帰港反対の声によって洋上に漂泊せざるをえなかった。むつは変遷を経て、91~92年に航海試験を実施し、原子力で地球2周(8万㌔)以上の距離を航行した。これで原潜や原子力空母建造に向けての貴重なデータを蓄積した(95年、むつは原子炉を撤去し原子力船としては廃船)。機関士としてむつに乗船し、後に原子力機構幹部に就任した藪内典明は、波高が11㍍の荒海でも操舵性は良く、急加速・急減速、前進・後退の切り替えも問題なかったと自慢気に語っており、軍用艦としての運航試験を行っていたことが明白だ。
むつ建造の技術とその後の研究蓄積のうえに、日帝は原潜建造―保有に突き進み始めた。米日帝が中国侵略戦争を狙う中で、日帝は核武装を成し遂げるとともに、他方で原潜の保有などを狙っている。これまでに「平和利用」の欺瞞(ぎまん)のもとで研究・蓄積してきた核の技術を、本格的に戦争のために利用すべく動き始めたのだ。
核戦争など絶対に許すわけにはいかない。原発再稼働を阻み、さらに小型原子炉開発―原潜建造と核武装も絶対に許さず、中国侵略戦争を阻止しよう。8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争の大成功をその出発点にしよう。
(北沢隆広)