アディルは資本に殺された
　イタリア　スト襲撃に怒り爆発

　コロナ危機の激化、新自由主義経済の破綻のなか、医療労働者とともにエッセンシャルワーカーと呼ばれる物流部門の労働者が全世界で闘いに立ち上がっている。アメリカのアマゾン、韓国のクーパンでの闘い（ともに本紙３１９９号掲載）と並び、イタリアのＦｅｄＥｘ―ＴＮＴ労働者の闘いが階級闘争の焦点となっている。
　６月18日、全イタリアでＦｅｄＥｘ―ＴＮＴを先頭に物流労働者の統一行動が行われた。その一環としてイタリア北部のミラノ近郊ノバラの物流センターでストライキが行われた。午前11時、ピケットラインにスト破りのトラックが突っ込み、労働者２人をはねたうえ加速、アディル・ブラクディームさんをひき殺した。アディルさんはＳ・Ｉ・Ｃｏｂａｓ（職場組織全国連合）の活動家でストライキの指導中だった。

全国で抗議のデモ

　Ｓ・Ｉ・Ｃｏｂａｓは直ちに抗議声明を発表した。18日当日の闘いは、虐殺への怒りに燃えて全国で貫徹された。翌19日も闘いはローマでのデモをはじめ全国で展開。24日はピアチェンツァ（イタリア北部）、26日は再びローマなどで独立労組全組織など広範な共闘組織が合流して数千人規模の大デモに発展した。闘いは今も続いている。
　抗議声明は「これは事故ではない。アディルは資本の利益のために殺されたのだ！」と断罪し、この虐殺は、この間のイタリア物流労働者の闘いの焦点、ＦｅｄＥｘ―ＴＮＴのピアチェンツァで行われた不当解雇反対の数回に及ぶストライキへの警察の襲撃や各地のストライキに対する暴力団によるスト破りの武装襲撃など、階級的労働運動を孤立させようとする政治的戦略の一環であり、エスカレーションの頂点だと弾劾している。
　アディルさんは、アフリカ北西部モロッコ出身で、ここ数年、Ｓ・Ｉ・Ｃｏｂａｓの献身的な活動家としてノバラで地区共闘組織を形成するなど活躍していた。

ドラギ政権と対決

　ＦｅｄＥｘ―ＴＮＴ資本は今年冒頭、４万３千人の労働者の中から６３００人を解雇すると発表した。争闘戦での生き残りをかけた全ヨーロッパ規模のリストラ計画だ。イタリアでは６５９人が削減される。ピアチェンツァでは倉庫の閉鎖と２８０人の解雇が一方的に通告された。これに対するストライキで、資本と政府は組合指導者の逮捕も含めた弾圧を強行してきた。
　ＦｅｄＥｘ―ＴＮＴ資本はドラギ政権の支持のもと、物流職場にほとんど影響力をもたないＣＧＩＬ（労働総同盟）など体制内３大労組との交渉を進める一方、Ｓ・Ｉ・Ｃｏｂａｓの団交要求には１回たりとも応じていない。
　Ｓ・Ｉ・Ｃｏｂａｓの抗議声明は訴える。「いま求められていること、それはアディル同志が我々と共に長年闘ってきた資本主義の残忍さからプロレタリアートを解放する闘いだ。抗議のデモを明日ローマで行う。アディルは我々の闘いのなかに生きている！　流された彼の血は決して無駄にされない！　同志アディルよ、永遠に！」
　労働者虐殺の速報を受けた動労千葉は直ちに連帯のメッセージを送った。