焦点 徴用工裁判で逆転判決 戦犯日本企業の罪は消せない
週刊『前進』04頁(3201号03面03)(2021/07/05)
焦点
徴用工裁判で逆転判決
戦犯日本企業の罪は消せない
6月7日、ソウル中央地裁は、戦時中に朝鮮半島から日本に連行され強制労働を強いられた徴用工とその遺族85人が日本企業16社に損害賠償を求めた裁判で、原告の訴えを却下した。徴用工裁判では2018年秋に、韓国最高裁が日本製鉄と三菱重工業に賠償を命じた判決が確定している。今回のはそれとは真逆の反動判決だ。
これに先立って、同様のことは慰安婦裁判でも起きていた。4月21日、日本軍軍隊慰安婦制度の被害女性ら20人が日本政府に損害賠償を求めた裁判で、原告の請求が問答無用に却下された。1月には別の慰安婦訴訟で日本に賠償を命じる判決が出たばかりだった。わずか数カ月の間にそれが逆転された。逆転判決を下したのは、6・7徴用工判決と同じソウル地裁、同じ裁判官である。
日米の戦争政策と一体
日本の政府と企業は一貫して、日帝による朝鮮植民地支配下で起きた全ての問題に対する補償は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」だと強弁し、裁判への出廷も拒否するという傲慢(ごうまん)な態度を取り続けてきた。今回のソウル地裁判決はこれを全面的に容認して、日帝の戦争犯罪を再び不問に付すものだ。ここには、4月の日米首脳会談をもって対中国を軸とする東アジアでの新たな侵略戦争に踏み出した米日帝国主義に対する、韓国・ムンジェイン政権の屈服がある。「台湾有事」は「朝鮮半島有事」と一体であり、米日の中国侵略戦争は米日韓3国軍事同盟の確立を絶対条件としている。そのためには「ろうそく革命」の地平を反革命的に転覆し、韓国の支配階級を再び帝国主義の手先として動員することが不可欠だ。
すでに韓国労働者人民の闘いへの裏切りと変質を深めていたムン政権は、ここに来て反革命の側に決定的にかじを切ったのだ。
日帝資本の犯罪許すな
だが、日帝の大資本と日本国家が犯した大罪は、こんな手口で消せるものでは断じてない。かつての中国侵略戦争と第2次大戦の過程で日本に強制連行され強制労働を強いられた朝鮮人は、1939〜45年の間に約80万人にのぼる。安倍や菅政権は「企業との自由契約」「日本人と同じ扱いで差別はなかった」と言うが、大うそだ。それは国が作成した朝鮮半島からの労務動員計画により、朝鮮総督府の指示の下に現地の警察を使って強行された。畑で農作業中の男性をその場で暴力的に拉致して連行した例も多数ある。
彼らは日本で炭坑や製鉄、土木工事などの現場に送られ、宿舎に監禁されて厳重な監視の下に極めて過酷な重労働を強いられた。賃金も「強制貯金」させられてまともに支払われなかった。逃亡すれば捕まって、見せしめのために残酷なリンチを受けた。
三井、三菱をはじめとする日帝の大資本は、徴用工へのこうした奴隷労働の強制によって戦争中も巨額の利益を上げながら、戦後は未払い賃金の清算も拒否したまま路頭に放り出したのだ。65年の請求権協定で日本が韓国に提供した5億㌦の金も「賠償金」などでは全くない。逆に日本の資本が軍事独裁政権下の韓国に再び経済侵略していく水路を開くためだった。
この極悪の日帝資本に損害賠償を実力で強制することこそ、世界の労働者階級にとって正義の闘いだ。ムン政権の屈服に乗じた日帝の卑劣な居直りを断じて許さず、韓国人民と連帯し共に闘おう。