コロナ危機下の「骨太方針」 新自由主義の絶望的加速求める
コロナ危機下の「骨太方針」
新自由主義の絶望的加速求める
6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2021」が閣議決定された。それは〈コロナ×大恐慌〉の危機に追いつめられた日本帝国主義が社会の破滅に向かって新自由主義を一層加速する階級戦争の宣言だ。
菅政権に成算などない。ただただ国家の強権でごり押しする絶望的な攻撃だ。労働者民衆の怒りはいよいよ形となって火を噴いていく。五輪粉砕・菅打倒の歴史的情勢が来ている。
「4つの原動力」を掲げ階級戦争
骨太方針の副題は「日本の未来を拓く4つの原動力〜グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策〜」だ。その基盤として働き方改革や経済安全保障などを列挙。「新たな仕組みの構築」として医療・社会保障改革、「国と地方の新たな役割分担」を打ち出した。
全てが国のあり方を変えて労働者民衆の命を奪う実質改憲の攻撃だ。西村康稔内閣府特命担当相は骨太方針発表時に、「コロナを機にこれまでできなかったこと、長年の宿題返しを一気にやる」と公言した。コロナに乗じた歴史的な攻撃であることを隠そうともしない。
国家強権発動し医療・福祉破壊
特に重大なのが医療体制に対する国家の強権発動の法整備と、福祉・社会保障破壊への踏み込みだ。
菅は「緊急事態への法律を変えないといけない」と公言し、骨太方針で「より強力な体制と司令塔」を明記。公立・公的・民間病院の病床を県境を越えて提供させると打ち出した。医療の戦時動員に至る強権発動体制が狙われている。
公立・公的病院の統合・廃止、病床削減を求める地域医療構想と医学部定員削減は継続。高齢者福祉の解体である「全世代型社会保障改革」の項で、自治体への国民健康保険料引き上げの圧力を明示。生活保護受給者を国保に加入させて医療費を払わせる制度の検討にまで踏み込んだ。
「少子化の克服」として「省庁間の縦割り」を排した行政組織(こども庁)の創設と、介護保険制度にならった「こども保険」を想定した「社会・経済の参加者全員が......広く負担していく新たな枠組み」に初めて言及した。こども庁は、厚生労働省や文部科学省の上に首相直属の独裁的機関を新設し権力行使・予算配分を行うという構想だ。こども保険は、税金を財源とする児童福祉を否定し、新たな保険制度に置き換えようとするものだ。
「働き方改革」では解雇自由の「ジョブ型」雇用、長時間労働を強いる「裁量労働制」、労働者の権利を否定する個人請負の推進を掲げた。労働規制の解体と総非正規職化であり、最低賃金の全国平均1千円化の提唱もそれと一体だ。
地方自治解体し戦争国家へ突進
骨太方針は改憲・戦争国家化へ一層踏み出した。
行政のデジタル化とマイナンバーカード、個人情報の「最大限の利活用」を掲げた。住民監視と医療・介護、教育などを資本の食い物にする意図を表明。「国と地方の新たな役割分担」で「行政全般の広域化」の法整備を言い出した。最後は都道府県・市区町村を廃止して「国と自治体は対等」とする地方自治を解体し、戦争・外交は国、自治体は国の下請け機関として住民統治・徴税にあたる道州制に行き着く。国益と階級支配が最優先であり、住民自治・福祉は一掃され社会の崩壊は極限まで進む。
さらに中国侵略戦争を念頭に、防衛力の大幅強化と経済安全保障、重要土地調査規制法の「速やかかつ着実」な実行を求めた。「脱炭素」として原発再稼働を明記。18日の経済財政諮問会議では「再稼働、新増設、リプレース(建て替え)」が強調された。
しかしこうした絶望的な新自由主義政策の加速、改憲・戦争国家への突進は、労働者民衆の限りない憤激と決起を生み出す。ブルジョア独裁としての本性をむきだしにする日帝・菅政権の打倒へ階級的労働運動の真価を発揮し闘いぬこう。
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ポイント
・「コロナ機に長年の宿題返しを一気に」
・副題はグリーン・デジタル・地方・少子化
・社会保障・働き方改革、経済安保が焦点