焦点 こども庁構想 「縦割り打破」掲げ福祉を解体
週刊『前進』04頁(3200号03面04)(2021/06/28)
焦点
こども庁構想
「縦割り打破」掲げ福祉を解体
コロナ禍の今、なぜ児童福祉の増額ではなく、首相・内閣府直属の「こども庁」構想なのか。菅政権は年内に構想をまとめ、来年の通常国会で法制化をめざすという。それは選挙のためのまやかしではない。今だからこそ菅は、デジタル庁に続いて「縦割り行政を打破する」「強い権限を持つ」こども庁創設をぶち上げたのだ。
内閣府独裁狙う新機関
新自由主義が「少子化」と労働人口減少をもたらした。こども庁構想は、この現実に追いつめられた日本帝国主義の絶望的な「成長戦略」だ。児童福祉・社会保障の解体、高収奪と労働組合破壊を軸に改憲・戦争国家化を狙う。菅や自民・公明・立憲民主党は子育て支援の強化には保育所が厚生労働省、幼稚園が文部科学省(の所管)など縦割り行政の打破・一本化が必要だから、省庁を越え強力な権限を持つ政府機関を新設すると主張。文科省からの義務教育の移管まで検討を始めた。
こども庁構想はデジタル庁と同じだ。先の国会でデジタル庁創設と個人情報保護規制の破壊を柱とするデジタル独裁6法が制定された。デジタル庁は全社会のデジタル化を強権的に進める「司令塔」とされる。首相と内閣府があらゆる個人情報を一元的に監視・集約し、治安弾圧と資本のために利用する。デジタル化にかかわる国家予算もデジタル庁が算定し配分する。こども庁も首相・内閣府―こども庁に独裁的権限を持たせること自体に意義があるとされる。
「こども保険」で高収奪
こども庁は「子育て支援」のためではない。むしろ逆だ。戦後の児童福祉・社会保障を解体し、無償の「福祉」から金勘定の「サービス」に変えて資本の新たなもうけ口とすることを狙う。「全世代型社会保障への転換」をうたう高齢者福祉の解体と一体で国のあり方を根本から変える改憲攻撃だ。5月7日付日経新聞は「子ども庁構想に欠けているもの」と題して「福祉の論理」を攻撃し「児童福祉から保育サービスへの転換」を主張した。「福祉の延長で設定された低い料金で利用できる現行の仕組みは……適正な保育サービスの価格付けに逆行する(安すぎる)」と強弁。「改革の前例として……高齢者福祉を、社会保険に支えられた介護サービスへ大転換した福祉の基礎構造改革がある」と賛美した。介護保険のことだ。
6月18日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2021」は、「少子化の克服」の財源として「社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組み」に言及した。介護保険にならった「こども保険」制度の導入が想定されている。
今や強制徴収される介護保険料は全国平均で月6千円を超える一方、介護給付の削減と負担増が進んでいる。この介護保険に加え、こども保険でさらに強奪する。強権を持つこども庁創設の狙いは一層の高収奪と福祉の解体だ。
労働組合破壊との対決
こども庁は自治労・日教組破壊だ。「幼保一元化」を掲げた認定こども園は内閣府所管となったが労働組合をつぶすことはできなかった。それを暴力的に突破しようとするのがこども庁だ。保育・学校職場が攻防の焦点となる。現場の怒りは必ず火を噴く。日帝・資本への際限ない屈服か、真っ向からの対決か。労働組合の立場と路線が問われる。階級的労働運動の再生をかけ闘おう。