過労死、非正規なくせ! 韓国・民主労総が不退転の闘い
週刊『前進』04頁(3199号02面04)(2021/06/21)
過労死、非正規なくせ!
韓国・民主労総が不退転の闘い
(写真 過労死対策を要求し、郵政事業本部の占拠・座り込みに決起した全国宅配労組【6月14日 ソウル】)
韓国では、コロナ下での労働者民衆の困窮を食い物にしてさらに肥え太ろうとする財閥大資本と、今やこの大資本を公然と支えるにいたったムンジェイン政権に対し、労働者階級の激しい怒りと新たな闘いが始まっている。
失業者500万
昨年の失業者は、一時休職者84万人や就職を断念した者61万人などを加えると実質500万人に達した。韓国の全人口5170万人(子どもと高齢者を除いた労働年齢人口は3650万人)を考えると大変な数だ。コロナに伴う休業・廃業だけではない。コロナを口実にした大リストラ・大量解雇の嵐が一斉に労働者階級を襲っている。韓国政府は昨年、国家財政から総額200兆ウォン(約20兆円)を超える巨額の金を企業支援金として大資本の救済につぎ込んだ。だが労働者の雇用維持や賃金保障のためにはほとんど何もしなかった。
旅客が急減して経営が悪化した航空産業ではアシアナ航空を実質国有化したが、労働者の雇用を守るのではなく全く逆に、再度の民間払い下げのために極限的な「コスト削減」(=大量首切りと賃下げ)を推進する有り様だ。
こうした中で、サムスン電子の昨年の営業利益が史上最高を記録するなど財閥大資本は懐を肥やしたが、労働者は貧困と失業、飢餓賃金、過労死、労働災害と生活破綻の地獄にますます突き落とされている。加えて資本家階級による不動産投機が引き起こしたソウルなど大都市圏での家賃の暴騰(この数年で2倍以上)や、医療の民営化が生んだ医療崩壊の現実が、民衆の苦しみを倍加させている。
非正規職の決起
この現実に対して、もう我慢できないという怒りが全社会的に噴出し始めた。闘いの先頭に立っているのは、コロナ下で最大の矛盾を押しつけられている非正規職労働者だ。前大統領パククネを実力で打倒した2017年春の「ろうそく革命」後、民主労総の組合員は80万人から110万人へと急増した。これは主に、それまで未組織だった非正規職労働者が新たに労働組合のもとに団結を開始したことによるものだ。
5・1のメーデーでは、「非正規職もうやめろ1100万非正規職共同闘争」が全国51の職場代表の名を連ねた共同闘争宣言を発した。そこには10年以上不屈の闘争を続けてきた職場だけでなく、ここ数年の間に初めて労働組合を結成し、直ちに資本の解雇・労組つぶし攻撃との絶対非和解の激突に突入した職場も含まれている。宣言は、労働者の実力闘争こそ世の中を変える唯一の力だと強調し、「一人でもあきらめなければ、闘いは絶対に終わらない」と言い切っている。
死亡事故相次ぐ
6月7日には物流大手のクーパンで労働組合が正式に発足した。クーパンはコロナ下でのネットショッピングの急増により昨年14兆ウォンもの法外な利益を上げた。しかしその巨大物流倉庫で働く労働者は、「早朝配達」「迅速配達」を売り物にする資本によって深夜労働、肉体の限界をもこえる重労働を強制されながら、最低賃金以下の収入しか得られない。休憩もなくトイレにも行けない。しかも扱う荷物はコロナ以前の1・5〜3倍にも急増し、倉庫内や配達途中での死亡事故が相次いでいる。
同様の現実、とりわけ深刻化する過労死問題は、物流・配達労働者全体を覆っている。6月14日には、民間委託された郵便配達業務を請け負う配達労働者などを組織する全国宅配労組(4年前に結成)が、過労死対策を要求して郵政事業本部の1階ロビーを占拠し座り込みに突入した。
11月ゼネストへ
勤労基準法を守れと叫んだチョンテイル烈士の焼身決起から半世紀が経つが、労働者は今なお職場で殺され続けている。昨年1年間の労災死亡者は公式統計だけで882人。認定されなかった者を加えると「コロナの死者より労働災害による死者の方が多い」(ヤンギョンス民主労総委員長)とされる状況だ。その圧倒的多数が非正規職労働者に集中している。「非正規職の正規職化」「労働尊重社会」を掲げて登場したムンジェイン政権は今や、「ろうそく革命」の要求を完全に裏切り、財閥と結託して民営化・外注化・非正規職化と労組破壊の新自由主義攻撃を一層極限的に推し進めようとしている。民主労総はこれと全面対決し、「韓国社会の大転換」=財閥支配の打破・転覆を掲げて今秋11月、110万組合員の総力を挙げたゼネストにうって出ようとしている。
この闘いと連帯し、日本でも新自由主義を打ち破る労働運動をつくりだそう。