誰がウィシュマさんを殺したのか 外国人の命まで奪う入管収容 入管解体は労働者階級の課題

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週刊『前進』04頁(3198号04面02)(2021/06/14)


誰がウィシュマさんを殺したのか
 外国人の命まで奪う入管収容
 入管解体は労働者階級の課題

(写真 名古屋入管で亡くなったスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさん)

改悪案を廃案に

 極悪の入管法改悪案は、5月18日に自民党が法案を取り下げるという異例の事態で結着した。
 名古屋入管で33歳のスリランカ人女性ウィシュマさんが亡くなったことを知り、「日本でこんなことが起きていたなんて知らなかった。何とかしたい」と一人一人が行動を起こした。衆院法務委員会開催日に取り組まれた国会前座り込み・リレートーク、全国各地でのデモやスタンディング、ネット署名や意見表明、数千数万人の抗議行動が入管法改悪案の廃案を勝ち取った! この歴史的勝利の感動を胸に刻もう!
 しかし、入管収容所や難民・仮放免者をめぐる状況はコロナ下で悪化の一途をたどっている。誰がウィシュマさんを殺したのか——真相究明と謝罪・責任者処罰を勝ち取らなければならない。入管で続く死の行列を終わりにするのだ。

「我々は人間だ」

 上川陽子法務大臣、出入国在留管理庁の佐々木聖子長官もそれぞれウィシュマさんの2人の妹と面会したが、謝罪はおろか経過説明も行わず、入管の隔離室で亡くなるまでウィシュマさんを撮影した映像を見せることも拒否した。
 妹のワユミさん、ポールニマさんは「何か隠しているのではないか。映像を見るまで母が待つスリランカに帰れない」と、滞在を延ばし、真相究明と謝罪を求めている。
 5月下旬、名古屋入管の全被収容者がブロックごとに申入書を作成し、名古屋入管局長に提出した。
 「何人くらい犠牲になれば、外国人の差別と人権侵害、そして長期間の収容をやめるのでしょうか?」「日本国に残りたい最大の理由は『同じ人間として生きるためです』、しかしあなたがたは我々の命、夢そして未来も奪おうとしています」「いつまで我々を動物のように扱うのですか」

長期収容が激増

 今回の改悪案は、難民認定率1%の「難民鎖国ニッポン」で難民認定申請3回以上の場合、手続き中でも強制送還を可能とし、さらにあくまで退去強制を拒む者には刑事罰を科すなどという極悪の内容だった。
 東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えた「国内治安対策」の一環として安倍政権(当時)は、非正規滞在外国人の国外追放の推進を図った。同時に入管収容施設に収容されている外国人の仮放免を極端に抑制したため、長期収容の基準とされる6カ月どころか2年、3年、それ以上の長期収容者が激増した。2019年春から東日本入管センター(茨城県牛久市、通称「牛久入管」)をはじめ全国で長期収容に抗議し仮放免を求めるハンガーストライキが広がった。この過程で大村入管センター(長崎県大村市、通称「大村入管」)でハンストをしていたナイジェリア人男性が餓死するという事件が起こった。この事件を契機に長期収容問題を「見直した」結果が今回の改悪案だった。
 昨年末時点であくまで送還を拒む「送還忌避者」は3103人、ここには約300人の未成年者も含まれている。うち難民申請者は1938人、さらにそのうち申請が3回以上は504人だと法務省は発表した。

労働者の団結で

 声高に「不法移民」排除を叫んだ米トランプ政権でさえ年間3万人の難民を受け入れた。約3千人の難民・移民を排除するために菅政権は、コロナ緊急事態情勢をも顧みず入管法改悪を狙ったのだ。在留資格がないだけの外国人、しかもある人は難民として保護を求め、ある人は家族とともに日本で暮らしたいと望んでいる人々だ。
 菅政権は、この「送還忌避者」を標的に差別・排外主義、国家主義イデオロギーで労働者階級を分断し、改憲・戦争に労働者人民を動員しようというのだ。
 逆に言えば、わずか3千人を移民として受け入れる度量もなく、国家の命令に従わないからと「送還忌避者」というレッテルを貼って排除しなければ国内支配が成り立たないということだ。労働者が民族・国籍・国境を超えて団結することを菅政権は恐れている。この敵の弱点を突き、入管法・入管体制を解体しよう。労働者階級の団結した力で世界を変えよう。
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