焦点 SDGs 最末期資本主義の絶望的延命策

週刊『前進』04頁(3198号03面04)(2021/06/14)


焦点
 SDGs
 最末期資本主義の絶望的延命策


 「SDGs(エスディジーズ)」という聞きなれない言葉が盛んに使われている。意味不明でいかにも、うさん臭い。SDGsの本質は「持続可能な開発目標」という訳語に明らかなとおり、最末期資本主義を「持続」させる「開発目標」=成長戦略でしかない。

「脱炭素」掲げ原発推進

 SDGsなるものは2015年国連サミットで策定された。「深刻化する現下の地球規模課題の分析を踏まえ、持続可能な世界を実現する」2030年に向けた17の目標を掲げる。「貧困」「飢餓」「健康と福祉」「平等」「クリーンエネルギー」「気候変動」「平和」などを課題として挙げるが、その内実はまったく逆だ。
 そもそも全世界で貧困や飢餓、コロナ・パンデミックと戦争の危機を引き起こし人びとの命を奪い続けているのは、資本主義・新自由主義ではないか。その危機を逆手にとって「開発目標」とすること自体が許されない。
 SDGsは〈コロナ×大恐慌〉情勢に至った全世界・全社会の危機と労働者階級の反乱におびえながら、すでに破綻した新自由主義をあくまで「持続」させて徹底的に進めようとするものだ。
 菅政権はSDGsにかこつけて「脱炭素」を掲げる巨額の予算を計上した。それが巨大利権を生む「金のなる木」だからだ。恥知らずにも自民党や御用学者は、気候変動の危機に対し体制変革を訴えるグレタ・トゥーンベリさんを引き合いに出しながらSDGsを唱え、核武装・核開発政策を堅持し原発の再稼働・新増設を求めている。福島第一原発事故を起こし汚染水の海洋放出まで決め、放射能で環境をさらに汚染しようとして大問題になっている中で、原発が「クリーンエネルギー」だとどうしたら言えるのか。

スーパー「監視」シティ

 菅政権のSDGs政策の柱とされるのは「自治体SDGs」であり、「官民連携で取り組む未来のまちづくり」としての「スーパーシティ」構想だ。
 昨年5月、スーパーシティ構想の実現に向けた国家戦略特区法改悪案が国会で可決・成立した。政府と自治体首長、トヨタなどの大資本、政商を兼ねる学者らは、現行の規制をゼロ化して「デジタル超監視都市」を造るスーパーシティを具体化しようとしている。
 デジタル独裁法による個人情報保護規制の破壊に続いて、戦略特区として自動運転や遠隔医療など命にかかわる規制を撤廃。自治体の全住民情報を企業に提供し、デジタル技術を使って街全体を常時監視し個人情報を蓄積。治安管理と商業目的に使おうとする。
 それは全面民営化・総非正規職化、労組破壊とも一体の攻撃だ。資本にとっての「持続可能」性は今や労働者にとっては「持続不可能」性となっている。

予算は医療・福祉に回せ

 政府や自治体はSDGs推進に巨額の予算を組んだ。SDGsと言うだけで金になる。「SDGsとは何かを周知させる」宣伝に数千万円単位の税金が使われる。
 SDGsの宣伝とマイナンバーカード発行のために、コロナ禍で全日空(ANA)から自治体に出向させられた客室乗務員が低賃金・短期契約の業務に就かされている。そんな予算は賃金補償とコロナ対策、医療や福祉に回せ!という声が上がっている。SDGsを掲げる新自由主義攻撃に絶対反対し、労働組合を先頭に闘おう。
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