焦点 愛知署名偽造事件 極右改憲勢力のあせりと危機
週刊『前進』04頁(3197号03面02)(2021/06/07)
焦点
愛知署名偽造事件
極右改憲勢力のあせりと危機
愛知県の大村秀章知事に対するリコール(解職請求)運動をめぐる署名偽造事件は、元愛知県議でリコール運動の事務局長である田中孝博(日本維新の会愛知5区支部長)とその家族ら4人が地方自治法違反の疑いで逮捕される重大事件へと発展した。この浅はかで恥知らずな犯罪について、運動を主導してきた美容外科「高須クリニック」院長の高須克弥と河村たかし名古屋市長は、「自分は知らなかった」「すべて田中に任せていた」という見苦しい弁解と責任のなすり合いを演じている。だがすでに、高須の秘書が大量の署名に指印を押して偽造に加担していたことが確認されている。「知らなかった」では済まされない。
バイト募集し書き写し
2019年に愛知県で国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が開かれ、その企画展「表現の不自由展・その後」で、日本軍軍隊慰安婦を象徴する「平和の少女像」や、昭和天皇の肖像写真を燃やす映像が展示された。これに反発する右翼勢力の妨害・脅迫の殺到によって同展はいったん中止に追い込まれたが、その後再開した。「表現の自由、検閲の禁止」をうたう憲法21条を押し出し、再開に動いた実行委員会会長である大村知事を標的として、リコール運動は昨年6月に発足した。彼らは、「おやめください!愛知県知事」と大書され、高須と河村二人の写真が大きく載ったチラシを街頭で配りながら、署名を呼びかけた。署名が86万7千筆に達した場合、条約に基づき知事の解職を求める住民投票が行われる。高須らは、11月に愛知県選管に約43万5千筆の署名を提出した。
ところが選管は、83%の署名に無効の疑いありとし、地方自治法違反の疑いで刑事告発した。実際、署名簿には一目で同一筆跡と分かる名前が延々と並んでいた。田中が広告関連会社に依頼してアルバイトを募集し、まったく関係のない住民の名簿(故人を含む)の書き写し、偽造を佐賀県内で行っていたのだ。この広告会社に支払われた偽造の「費用」は総額1500万円とされる。
戦争推進の菅を倒す時
高須は事業のかたわら、極右としての自らのイデオロギーをひけらかしてきた。SNSでナチスを肯定的に評価したり、「ホロコーストも南京(虐殺)も捏造(ねつぞう)」と暴言を繰り返し、これを理由に米美容外科学会から会員資格を剝奪(はくだつ)された。河村市長は言うまでもなく、少女像に対し「国民感情を害する」「公衆の嫌悪感を覚えさせる」と口を極めてののしり、右翼団体とともに展示再開への抗議の「座り込み」パフォーマンスまで行ってきた中心人物だ。
日本維新の会は、リコール運動の事務局を積極的に担い、街宣車の提供などで協力してきた。
彼らは安倍・菅らと呼吸を合わせ、改憲・戦争策動に加担し、日本帝国主義の戦争犯罪を否定して、排外主義、愛国主義、天皇礼賛の「大衆運動」の盛り上げをもくろんできたが、実際には労働者民衆からの怒りの反撃に遭い大破産を遂げた。そして、あせりに駆られて署名偽造というずさんな犯罪行為に手を染め、窮地に立たされると途端に無責任な逃亡を決め込んだ。極右改憲勢力のおぞましくも情けない本質が如実にさらけ出された。
このような連中に支えられて延命をはかる菅政権を、一刻も早く打ち倒そう。