コロナ下で強まる組合破壊 21春闘 3労組先頭に反撃の嵐
週刊『前進』04頁(3195号02面03)(2021/05/24)
コロナ下で強まる組合破壊
21春闘 3労組先頭に反撃の嵐
日本の労働運動は、労働組合の解体を許すのか、その階級的再生をかちとるのかの瀬戸際にある。菅政権が進める戦争・改憲攻撃の根本には、労働組合の絶滅を図る策動がある。全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への大弾圧と、「労組なき社会」づくりを狙うJRの攻撃は、その最先端に位置している。だが、これへの労働者の危機感と怒りの高まりは、労働運動を階級的に再生する絶好のチャンスにもなる。この中で動労千葉はストライキを含む3波の闘争で21春闘を貫徹し、労働組合の可能性と展望を指し示した。
「労組なき社会」に向けた大攻撃
コロナ下で資本は、解雇や賃下げを当然のことのように労働者に押し付けている。経団連は今年の経営労働政策特別委員会報告で、「業種横並びや各社一律の賃金引き上げを検討することは現実的でない」と例年以上に強調した。そのもとで資本は労資交渉を徹底的に形骸化し、資本の一存で決めた賃金を労働者に押し付けようとたくらんだ。コロナ以前の2019年から、資本は春闘に臨むスタンスを大きく変えた。19春闘でトヨタ資本は、社長の豊田章男が「当社の置かれた厳しい競争環境が分かっていない」と労組を脅しつけ、20春闘では「ベースアップは人事評価で決める」と労組に提案させた。21春闘でトヨタ労組は「ベースアップ要求は明示しない」という方針をとった。「明示しない」とは「要求しない」ことと同じだ。
今春闘でトヨタは「平均月9200円の賃上げを認めた」と報道されているが、その内実は外部からはまったく分からない。確実に言えるのは、自動車大手では「賃金は会社の業績と個々の労働者の成果で決まる」ことにされ、労資交渉はほぼ無意味なものになったということだ。
この背後には、JR資本が「労組なき社会」化に踏み込んだという事実がある。JR東日本は18年2月、首相官邸の指示を受けて御用労組である東労組の解体に着手した。JRのこの方策は、労組の存在意義を失わせる資本の攻勢を全産業で激しく促進した。
定昇削減で生涯賃金は大幅減少
今春闘でもJR東日本は攻撃の先頭に立ち、「定期昇給の半減」を強行した。年功賃金の最終的な解体を狙う経団連の方針を、まずJRが実行したのだ。JR東日本はコロナ前は毎年黒字を計上し、膨大な利益をため込んできた。昨年度が赤字だったとしても定期昇給が実施できないわけはない。だがJR東日本は意図的に定期昇給を削減した。労働者に諦めを強いることが目的だ。
定期昇給額が減らされれば、本来より低い賃金の支払いが将来まで続く。累積される不利益は若い世代ほど大きい。今年の定期昇給減額分だけで、青年層の生涯賃金は100万円以上も削られる。
これは、年功制賃金などすでに解体されている非正規職労働者に対しては、さらに激しい解雇・賃下げの攻撃としてのしかかる。
JR東日本の子会社CTS(千葉鉄道サービス)は今春、「同一労働同一賃金」を口実に就業規則の改悪を強行した。この就業規則改悪で、非正規職労働者は班長や主任にはなれないことにされた。「職務に対する知識習得、技能向上などの自己啓発」の義務を定めた条項も非正規職労働者については削除された。CTSは「正規職と非正規職とでは会社が期待する職責が違う」と強弁し、賃金格差を居直ろうとしたのだ。
資本や政府の言う「同一労働同一賃金」とは、全労働者を解雇自由・超低賃金の非正規雇用に突き落とすための道具に他ならない。
しかも、それは就業規則の改悪という形で押し貫かれている。JRが目指す「労組なき社会」とは、資本が意のままに「職場代表」を任命し、その「代表」に就業規則改悪への同意を表明させ、賃金や労働条件をいくらでも切り下げられるようにすることだ。
労組との交渉ではなく「社員代表との合意」によって労働条件を決定するあり方への転換は、経団連全体の方針でもある。
労組の存在を否定する攻撃に既成の御用労組が総屈服する中、動労千葉、関西生コン支部、全国金属機械労組港合同の3労組は労働者自身の団結に依拠して春闘を闘いぬいた。この稀有(けう)とも言える闘いに時代を変える力がある。
動労千葉はスト含む3波の闘争
動労千葉はワンマン運転阻止、外注化阻止闘争の再構築、CTSでの大幅賃上げ獲得の課題を掲げ、ストを含む3波の闘争に立った。関西生コン支部は大弾圧を押し返し、生コン会社との集団交渉を実現して賃上げ回答を引き出した。情勢は危機と好機を共に含む歴史の分岐点にある。だからこそ今、階級的労働運動の再生が必要だ。