日米共同声明を弾劾する 台湾海峡への軍事介入を狙う 米日帝の新たな対中戦争宣言
週刊『前進』04頁(3192号03面02)(2021/04/26)
日米共同声明を弾劾する
台湾海峡への軍事介入を狙う
米日帝の新たな対中戦争宣言
新型コロナウイルス感染症が「第4波」の猛威を振るう中、コロナ対策もそっちのけで訪米を強行した菅は、4月16日にバイデン米大統領と初の首脳会談を行い、日米共同声明を発表した。各紙が一斉に報じているように、今回の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」なる文言を盛り込んだことは、極めて重大な踏み込みである。日米共同声明が「台湾」に触れたのは52年ぶり(1969年11月のニクソン・佐藤会談以来)となる。
米軍と自衛隊が共同作戦を準備
ますます全面化・非和解化する米中激突の真っただ中で、今回の日米会談および共同声明がこのような内容をもったことについて、その歴史的大きさと意味をいささかも過小評価することはできない。それは1970年代以来の中国・台湾に関する米日両帝国主義の政策を原理的に転換しようとするものであり、中国に対する軍事・戦争政策の一大エスカレーションを不可避とするものだ。確かに日帝・菅は、ただちに中国と軍事的に対決するにはあまりにも無準備な上、経済的にも中国との関係を断ち切るわけにはいかないため、今回の共同声明では「両岸問題の平和的解決を促す」「中国との率直な対話の重要性」などの文言を加えることを事前に米側に頼み込み、表現を和らげることに腐心した。だがその一方で「日本は自らの防衛力を強化することを決意した」とも明記。3月の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で確認した「能力の向上を決意」より表現を強めた。さらに日米で「サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力を深化させる」と確認。そして「核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日本の防衛」を確認し、辺野古への新基地建設についても改めて「唯一の解決策」と称して強行することも確認した。
これを受け、4月18日付朝日新聞は「日米中3カ国関係の『局面転換』になるかもしれない」「今後、日米が(台湾有事に備えて)共同軍事作戦計画に着手する可能性もある」と指摘する論説を掲載。4月20日付日本経済新聞も「安保法制『台湾』に対応へ」と見出しを付けた記事で「台湾で軍事的緊張が起こった際、米軍とともに自衛隊も対処するシナリオが現実味を帯びる」とし、集団的自衛権行使の可能性を論じた。
すでにバイデン政権は、これまで米海兵隊などが担っていた任務を極力自衛隊に肩代わりさせようと狙い、米軍・自衛隊の共同訓練を増加させている。さらには、トランプ前政権に続いてアジア太平洋地域への中距離ミサイルの大量配備計画も進めており、沖縄をはじめ日本列島全体を対中戦争の出撃拠点にしようとしている。ひとたび戦端が開かれれば日本は戦場になるということだ。菅はこれに合意を与えたのである。
中国との合意を覆す歴史的事態
そもそも台湾をめぐっては、72年2月のニクソン訪中時に交わされた米中共同声明(上海コミュニケ)で「台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国は一つであり、台湾は中国の一部分であると主張している……米国政府はこの立場に異論をとなえない」と確認し、この合意に基づいて79年に米中国交回復(米台断交)に至った。72年の日中国交回復時の共同声明でも、日本政府は「中華人民共和国を中国の唯一の政府であると認識」し、「台湾は中華人民共和国の一部であるという中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」と確認した。だが今回の日米共同声明は、この70年代以来の中国との合意を公然と覆そうとするものだ。すでに米帝は昨年、ニクソン訪中以来の米中関係、すなわち中国に対する取り込みと市場開放のために歴代政権が半世紀近く続けた「関与政策」を「失敗だった」(ポンペオ国務長官=当時)と断言。中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)への制裁などを通じて中国本土と台湾との経済的結びつきを断ち切ることに全力を挙げる一方、台湾への武器輸出を拡大するなど、中国からの分離・独立を促すような極めて挑発的な策動を強めてきた。台湾海峡の軍事的緊張は、こうした米帝の踏み込みに対する中国スターリン主義・習近平政権の対抗措置によるものだ。
こうした中で、沖縄や先島諸島を最前線とする中国との軍事衝突の危機が急切迫し、さながら戦場のような米軍・自衛隊の激しい訓練が連日行われ、沖縄をはじめ基地周辺住民の命と生活を踏みにじっている。この先にあるのは破滅的な核戦争・世界戦争だ。今こそ反戦・反基地の闘いを日本中で巻き起こし、国際連帯と自国政府打倒の闘いで戦争を止め、社会を根底から変革するために闘おう。