焦点 70歳就業法施行 全世代の賃下げ・無権利化の水路
週刊『前進』04頁(3191号03面04)(2021/04/19)
焦点
70歳就業法施行
全世代の賃下げ・無権利化の水路
「70歳までの就業機会確保」を企業の努力義務とする70歳就業法が4月1日から施行された。旧法の65歳までの「雇用」を「就業」に変えて70歳までに延長した。政府は年金支給開始を70歳超へ遅らせることと一体で、「就業」の強制・義務化も言い出している。この70歳就業法は高齢者にとどまらず、全世代の賃下げ・非正規職化と無権利化の重大な水路となる。
非正規化して一生搾取
「70歳までの就業機会確保」とは、①定年廃止、②定年延長、③非正規職としての再雇用、④別会社での再就職に加え、委託契約を結ぶ⑤個人請負、⑥起業、⑦有償ボランティア・社会貢献活動を選択肢とする。とりわけ③~⑦は雇用・労働条件の抜本的変更となる。③と④は非正規職化か転籍で賃金を切り下げ、④はグループ内外の派遣会社社員として同じ仕事に就労させうる。⑤~⑦は労働者としての権利・保護規定を奪い、最低賃金かそれ以下で一生搾取し続けようとするものでしかない。
それは全世代の雇用・賃金の破壊につながる。4月3日付日経新聞は「『生涯現役』時代に向けた制度だが、企業の人件費負担が過重にならないためには生産性に応じた賃金決定の仕組みが欠かせない」「雇用の流動性を高める(=いつでも首を切れる)ことも必要になる」と論じた。先行の企業例として、人事評価による昇格・降格の徹底や(終身雇用・定期昇給を保証しない)「ジョブ型」人事制度を導入し実力主義と定年廃止を一体で進めることを示した。
現に今国会で成立が狙われている公務員定年引き上げ法案では公務員を水路に民間への波及を図るとされる。評価制度を徹底して40~50代を中心に賃金の上昇カーブを抑え、60歳を超えたら賃金を7割に減らす。すでに全国の自治体では1年雇用・最低賃金並みの会計年度任用職員が半数近い。さらに全産別で賃金破壊を進め、労働者の分断・団結破壊をもくろむ。
福祉を削り労働に動員
70歳就業法は、年金支給額カットと受給開始年齢の引き上げ、医療・介護負担の増額と一体だ。菅政権は年収200万円以上の75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げようとしている。「もてる高齢者には相応の負担を」というが200万円とは生きていく最低の水準だ。「20代の年収は約200万円で窓口負担は3割。同じ病気でも年の違いで負担が違うのはおかしい」などという暴論が横行している。大半の労働者は高齢になっても労働に駆り出され搾取・収奪され続ける恐るべき未来が待っている。
「シルバーも労働者だ」
有償ボランティアの典型として全国の自治体が公園清掃や学校開放事業の管理などを手始めにシルバー人材センターの活用を進め、民間企業への派遣・請負契約も増えている。会員は「労働者ではない」として労働基本権を認めず、最低賃金かそれ以下、労災補償、社会保険なしで派遣会社以上に安上がりに使おうとしている。これに対して当然にも、シルバー会員の中から「自分たちは労働者だ」「休業補償をしろ」「賃金を上げろ」という声が上がり、団結を求める機運が満ちつつある。
全労働者の大幅賃上げと退職後の手厚い生活保障・社会保障が必要だ。高齢者を含めあらゆる労働者は労働組合に結集し、団結してて闘おう。