中国に敵対強める米政権 日本を対中戦争の出撃拠点に 米軍司令官「6年以内に台湾有事」
週刊『前進』04頁(3191号03面01)(2021/04/19)
中国に敵対強める米政権
日本を対中戦争の出撃拠点に
米軍司令官「6年以内に台湾有事」
アメリカ帝国主義・バイデン政権は、発足から3カ月もたたないうちに、トランプ以上に強硬かつ全面的な中国への対決政策を次々と繰り出し、世界を二分する米中激突を一気に加速させている。それは、一方では中国との戦争を準備する新たな軍事戦略として、他方では米経済を立て直すための巨額の財政出動として進められている。これに対し、中国・習近平政権も対抗措置を強めている。
ミサイル大量配備を狙う
3月3日に「国家安全保障戦略」の新たな策定に向けた指針を公表し、中国を「国際システムに対抗しうる唯一の競争相手」と名指ししたバイデン政権は、この1カ月あまりの間に対中対決姿勢を一層むき出しにした。3月9日の上院軍事委員会では、インド太平洋軍のデービッドソン司令官が、台湾に対する中国の脅威が「向こう10年、実際には今後6年で明らかになると思う」と発言。中国による台湾侵攻が6年以内に起こると想定し、攻撃兵器に予算をつけるよう議会に求めた。「2026年までに西太平洋における米軍優位の状況が変わる可能性がある」とも述べ、中国に対抗するため日本やオーストラリアなどの同盟国の協力が必要だとも強調した。
23日には、インド太平洋軍の次期司令官に指名されているアキリーノ太平洋艦隊司令官が、同じく上院軍事委員会で証言し、中国の台湾侵攻は「大半の人が考えているよりもはるかに近いと思う」と述べた。
4月8日には、上院外交委員会が「中国との競争に向けて環境を整備する」ことを目的とした「戦略的競争法」を超党派でとりまとめ、近く委員会で審議入りとなることが発表された。法案では、日本と韓国を「きわめて重要な同盟国」と位置づけ、両国に「防衛能力向上を促す」と明記。インド太平洋地域での軍事的投資の必要性を強調し、連邦政府の予算が「中国との競争の戦略的課題に対して適切に割り当てられなければならない」と盛り込んだ。日米安保条約第5条の釣魚島(尖閣諸島)への適用、台湾との関係強化、香港の「民主化支援」、中国新疆ウイグル自治区の人権問題に対する制裁なども明記した。
上院外交委員会のメネンデス委員長は声明で、「(中国に対抗するため)米国の戦略的、経済的、外交的手段を総動員する前例のない超党派の取り組み」だと強調した。
すでにインド太平洋軍は3月、台湾をめぐる軍事衝突に備え、沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って中距離弾道ミサイルなどを大量配備する構想を打ち出し、そのために今後6年間で273億㌦を投じるよう求める要望書を議会に提出している。日本全土を対中戦争の出撃拠点とし、恒久的な軍事要塞(ようさい)とすることが狙いだ。
また台湾をめぐっては、台湾政府との間で交流を拡大するため、国務省が4月9日に新たな指針を発表した。これまで自粛していた連邦政府の建物内での米台実務者レベルの会合を定期的に開催することを認めたほか、トランプ前政権が拡大した台湾への武器輸出も継続することを明言した。習近平政権はこれに激しく反発している。
米上院外交委の「戦略的競争法」は、これら一連の対中強硬策に超党派でお墨付きを与えるものだ。
戦後最大規模の財政出動
バイデン政権は、こうした軍事・外交レベルでの対中強硬策と並んで、国内政策においても、中国との全面的・非和解的な対決を強烈に意識した動きを見せている。3月12日に「米国救済政策」と銘打った1・9兆㌦の大型追加経済対策に署名したバイデンは、これに続く第2弾として「米国雇用計画」と称する経済対策を31日に発表。インフラ投資やハイテク分野の研究開発投資などを中心に今後8年間で約2兆㌦を投じることを明言した。
バイデンは演説で「第2次世界大戦以来最大の投資であり、何百万人もの高い収入の雇用を生む」「中国との間で国際的な主導権を争う市場で米国のイノベーションを加速できる」「国際競争力を高め、国家安全保障上の利益を促進させることで、今後数年間で中国との競争に打ち勝つ」などと強調し、さらに追加の経済対策を準備するというのだ。
財源としては、トランプ前政権が35%から21%に引き下げた法人税率を再び28%に引き上げるほか、米企業の海外利益に対する課税や石油・ガス産業への減税措置の中止などを充てることを明らかにした。
リーマン・ショック後の2008〜09年に恐慌対策として行われた総額約1・5兆㌦の財政出動と比較しても、どれほど大規模かつ野放図な財政出動が計画されているかは明白だ。その背景には、「中国との競争のために米経済を強化しなければならない」(イエレン財務長官、1月19日の上院財務委員会での発言)という米支配階級の強烈な衝動がある。さらには、昨年来の〈コロナ×大恐慌〉の激化とBLM運動の爆発に象徴される国内階級闘争のかつてない大高揚(さらにはトランプ派極右勢力と労働者階級人民との内乱的激突)に、彼らがどれほど震撼(しんかん)しているかが示されている。
40年間にわたる新自由主義が破産し崩壊する中で、巨大資本を徹底的に優遇する税制も推進できなくなったのだ。だが、資本は増税による損失を労働者階級に対する搾取の強化と大合理化・非正規職化で乗り切ろうとすることは必至であり、労働者階級の生存と未来をかけた決起がますます広がることは不可避だ。
反戦反基地の闘いに立とう
バイデン自身が「第2次大戦以来最大」と強調するように、これほど巨額の財政出動は1930年代のニューディール政策以来となる。だがニューディール政策は、一時的な景気浮揚をもたらしただけで、大恐慌そのものを解決することはできなかった。米資本主義は37〜38年に再び激烈な恐慌に見舞われた後、39年の第2次大戦勃発に伴う戦時経済への転換によって、かろうじて延命したのだ。今日の〈コロナ×大恐慌〉の激化のもとで、バイデン政権は結局、戦争へと突き進んでいくしかない。急ピッチで進む米軍・自衛隊の一体化と日米安保の再編・強化は、沖縄をはじめ日本全土を対中戦争の出撃拠点とすることを狙うものだ。今こそ改憲・戦争阻止、基地撤去・安保粉砕の闘いを拡大し、戦争をやる以外に延命できない資本主義を終わらせよう。