焦点 聖火リレー強行 差別と利権の五輪は即時中止を
週刊『前進』04頁(3190号03面04)(2021/04/12)
焦点
聖火リレー強行
差別と利権の五輪は即時中止を
新型コロナ「第4波」が押し寄せるなか、3月25日に福島県楢葉町・広野町のJヴィレッジから東京オリンピック・パラリンピックに向けた聖火リレーがスタートした。約1万人のランナーが121日間かけて全国47都道府県859市区町村を回り、7月23日に東京に到着する予定となっている。
昨年3月の五輪・パラリンピック延期決定から1年。菅は「人類がコロナに打ち勝った証しとして五輪を開催する」と繰り返す一方で、逼迫(ひっぱく)する医療体制の拡充やコロナによる生活苦を強制された労働者民衆への十分な補償を拒否し続けてきた。
何より、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故から10年を迎えた福島の人々は今なお「原子力非常事態宣言」下での生活を余儀なくされている。放射能は人々の健康をむしばみ、福島県から県外への避難者だけでも現在約2万8千人に上る。聖火リレーのルートは今もバリケードで囲まれた「帰還困難区域」を避け、甚大な津波の被害を受けた沿岸部を通ることもなかった。この五輪が安倍政権下で、偽りの「復興」を演出して原発事故を「終わったこと」にし、すべての核と原発の廃絶を求めて闘い続ける被災者の声をかき消すために招致されたものだからだ。
コロナで暴かれた本質
大会組織委員会の元会長・森喜朗の女性差別暴言、大会開閉会式の演出責任者・佐々木宏による出演者の容姿侮辱など、差別と利権にまみれた五輪の本質が日々暴かれている。開催反対の声が80%を超え、聖火ランナーやボランティアの辞退が続出するのは当然だ。そもそも世界各地での予選会開催もままならず、確定した代表選手は3月時点でわずか6割だ。海外からの観戦客受け入れ中止は決まったものの、約1万5千人の選手と数万人の関係者が来日することに変わりはない。各国で新型コロナの変異株が次々と確認されるなか、五輪そのものが「巨大なウイルス培養皿」になる可能性はきわめて高い。参加を見送る国は北朝鮮だけにとどまらないだろう。
政府と大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)がアスリートや観客、住民など多くの人々の命を危険にさらしてでも五輪の開催に固執するのは、五輪が世界最大の商業イベントとして巨大な利権を生み出すからだ。今大会では五輪史上初めて朝日や毎日など大手新聞社もスポンサーに名を連ね、旗降り役となっている。
情勢決する現場の闘い
今からでも遅くはない。偽りの「復興」や「克服」を演出し、メダルの色や数を競い合わせてナショナリズムをあおりたてる五輪は中止あるのみだ。3兆円もの経費は、すべて医療体制の拡充と労働者・中小事業者への補償に回せ!情勢を決するのは、医療・自治体はじめ現場労働者の闘いだ。とりわけ、政府の「医療従事者1万人動員」案は机上の空論でしかない。東京都知事・小池は五輪の延期に伴って1200億円の追加負担を決める一方、都立・公社14病院の独立行政法人化をあくまで強行しようとしている。しかも墨東、広尾、多摩総合医療センターの都立3病院などは「オリンピック病院」に指定され、コロナ下の人員・物資不足のなかで五輪対応まで求められる。しかし、守るべきは利権ではなく労働者民衆の命だ。現場で住民の命と生活を支える労働者の誇りにかけ、五輪への動員を拒否しよう。