JR子会社が就業規則改悪 「同一労働同一賃金」で賃下げ
週刊『前進』04頁(3190号02面02)(2021/04/12)
JR子会社が就業規則改悪
「同一労働同一賃金」で賃下げ
定期昇給もカット
3月のダイヤ改定を機にJRは国鉄分割・民営化以来の大合理化に突き進んでいる。賃下げの先頭にもJR資本が立っている。21春闘でJR全社がベアゼロを強行した。中でも「労組のない社会」づくりを狙うJR東日本は突出している。定期昇給を半減するという形で、その解体に踏み込んできたのだ。JR東日本は2012年に人事賃金制度を改悪し、等級・号俸という形で定められていた基本給表を廃止した。定期昇給も「4号俸アップ」を基準とする従来のやり方を変え、資本がその都度、勝手に決める昇給係数により昇給額が変動する仕組みを導入した。とはいえ昨年までは「4号俸アップ」に準じる運用がなされていた。それを覆し、資本の思うままに昇給額を決めると宣告してきたのだ。
これと並び、JRの子会社で賃金制度の改悪が進んでいる。
待遇下げ「均衡化」
車両の清掃などを請け負うCTS(千葉鉄道サービス)は、次のような就業規則改悪を提案した。①無期転換されてから5年で契約・パート社員にも班長への登用試験の受験資格が、班長に登用されてから4年で主任への登用試験の受験資格が発生する制度をなくす、②正社員が65歳以降に再雇用された場合は契約社員になるが、契約社員も班長・主任になれたこれまでの制度をなくす、③契約・パート社員は「職務に対する知識習得、技能向上などの自己啓発、意見具申などの業務改善」の義務を負うとされていた規定を廃止する、④正社員に払われていた扶養手当をなくし、子ども手当に変える。
非正規職の労働者は班長や主任にはなれず、班長や主任だった人は降格されて役職手当も奪われるのだ。
CTSは働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」の基準が4月から中小企業にも適用されることを、就業規則改悪の口実にする。
厚生労働省が事業主向けに出したパンフレットには、正社員と非正規労働者との待遇に違いがある場合、「労働者から説明を求められたときに……不合理な待遇差ではない理由について説明できるよう、整理しておきましょう」と書かれている。「不合理ではない」と言い張れる理屈をこじつければ、それでOKと言わんばかりの記述だ。
CTSはこれに飛びついた。非正規職から班長・主任の資格を奪うことで、「役職に就ける正社員と役職に就けない非正規職の待遇に差があるのは当然」と強弁したいのだ。
非正規労働者が格差是正を求めた労働契約法20条(現在はパートタイム・有期雇用労働法8条)裁判で最高裁が昨年10月に出した判決は、非正規職に賞与が払われないことや、有期契約社員に退職金が払われないことを是認した。結局それは、労働者が現に従事する仕事ではなく、有期か無期かという雇用形態の違いや、違う雇用形態の労働者に何を求めるかという経営者の主観によって、格差の「合理性」を判定するということだ。資本の意思が絶対の基準にされている。
郵政の非正規労働者に対する最高裁判決も、基本は同じだ。だが、郵政資本のやり方があまりにひどいため、非正規職に扶養手当や年末年始勤務手当を支給せず、夏期冬期休暇を与えないことは不合理とした。
CTSはこれを見て、正社員の扶養手当の廃止を打ち出した。全体の賃金を引き下げて「待遇を均衡化」するというのだ。代わりに子ども手当を設けるが、CTSの労働者の多くは、子どもがすでに成長している世代に属するので、手当の支給対象は大きく減る。コストを削減し、やがては全労働者の賃金を最低賃金の水準に押し下げたいのだ。
「同一労働同一賃金」の真の姿はCTSの就業規則改悪で暴かれた。これに対し各職場で怒りがあふれ、改悪就業規則の4月実施はできなくなった。
動労千葉はさらに「生きていける賃金をよこせ」と大幅賃上げ獲得へCTSでの春闘を闘っている。