コロナ下の自治体職場闘争 直ちに正規職の大幅増を

週刊『前進』04頁(3190号02面01)(2021/04/12)


コロナ下の自治体職場闘争
 直ちに正規職の大幅増を


 コロナ感染が継続し、人員不足で医療・福祉をはじめ自治体業務の破綻が差し迫っている。現場が回らず超過重労働が恒常化している。業務の崩壊は住民の命の問題に直結する。そして職員への「応援・兼務」辞令の乱発と非正規職・民間委託の拡大は一層の危機をもたらす。正規職の大幅増員を求め闘おう。

業務崩壊=命の危機迫る

 コロナ第4波の中で、保健所や医療・介護施設、そして保育所、学校、学童保育・児童館などでは、一時も気を抜けない緊張と過重な労働が続いている。役所の窓口には解雇・休業で困窮する労働者住民が絶え間なく訪れてくる。多くの職場でコロナ応援の職員が抜けて欠員状態が深刻化。長時間の残業が強いられ、過酷な労働で病休・離職者が増えている。社会に必要不可欠な業務が絶対的な人員不足に陥っているのだ。
 自治体業務は対面が基本であり必須だ。長年経験を積んだ(積める)正規職員が求められるのであり、1年雇用の会計年度任用職員や派遣・委託労働者、ましてAI(人工知能)に置き換えることはできない。労働組合の全力挙げた闘いが求められている。

長期の経験積む多くの職員必要

 保健所の地域担当の保健師は、妊婦健診・乳幼児健診や家庭訪問で保護者と子ども、高齢者や障害者の状態を知り、信頼関係をつくっていく。児童相談所や福祉事務所、保育所、学校、医療・介護施設などと連携して、「児童虐待」の予防や全世代の住民の生活と健康をサポートしてきた。
 保育所や学校、児童相談所や福祉事務所、ハローワークはもとより、役所の窓口業務は、住民の生活に密接に関係する。納税や国民健康保険、介護保険、公営住宅家賃、上下水道料などの窓口の職員は、個々の住民との面談で生活の状況を知ることも多い。申請の受け付けや問い合わせへの対応は的確で迅速であることが求められ、生活相談の業務とも重なりあう。
 こうした業務は、長年の知識と経験、各部署との連携が不可欠であり、対応する職員の安定した雇用と労働条件、十分な人員配置が前提となる。それは正規職の大幅増員以外には成り立たない。非正規職を撤廃し、全員を正規職として採用すべきだ。

1年雇用に置き換えるな

 しかし当局は正規職の増員はまともに行おうとしない。中間管理職には負担が倍加する「兼務」を連発し、現場では「人件費削減」を掲げて会計年度職員と派遣社員、民間委託に換えることを一気に進めようとしている。
 東京・杉並区では会計年度職員が全体の5割に達した。全国の窓口業務の大半は会計年度職員や派遣社員が担っている。福祉職場でケースワーカーの補助に当たる業務は、パートタイムの会計年度職員が10割のところも増えている。その劣悪な労働条件に現場の怒りが充満している。

現場に回す金はいくらでもある

 「財政危機」が宣伝されるが、正規職の増員と非正規職の大幅賃上げ、公的事業の現場に回せる金はいくらでもある。
 小池都政は都立病院の今年度増員は医師1人、看護師8人だけとした。他方で都立病院の独立行政法人化準備には39億円を充てた。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者施設の予算を減額する一方、東京五輪の大会経費、延期に伴う追加負担で4224億円を計上した。
 全国の自治体首長は利権と監視社会化、民営化・非正規職化の基盤となるデジタル化に、破格の金を注ぎ込もうとしている。東京・江戸川区は児童相談所へのAI導入に1億円近い予算を組んだ。AIは職員の代わりにはならないし専門の職員を育てることもできない。その分を正規職の増員に回せば何人も増やすことができるではないか。

闘えば力関係変えられる

 医療・福祉の労働組合のストライキに始まる「医療は社会保障だ!」の闘いが全国に広がった。民営化・民間委託、非正規職拡大に反対し正規職の大幅増員を求める闘いが取り組まれている。コロナ下で誰にとっても切実な要求であり、現場の怒りを結集し労働組合の再生をかちとる闘いだ。
 東京では都立病院独法化(民営化)阻止の闘いが地域の怒りと結合して進み、独法化に必要な定款(根本規則)の議会提出を阻んでいる。A区では当局がコロナ対応と称して保育園の保健師を保健所に異動させ、その穴埋めとして派遣看護師による代替を強行した。これに対し区職労の現場が執念をもって闘い続けることで、多数の正規職看護師の増員を勝ち取った。他区でも正規職の増員を実現した。労働組合の団結を固め全力で闘えば力関係を変えられることを示したのだ。全国でこれに続こう。

------------------------------------------------------------
ポイント
・巨大デジタル化予算の一方で「経費削減」
・会計年度職員と派遣・委託に置き換え
・闘って正規職看護師を増員させた実例も

このエントリーをはてなブックマークに追加