ワンマン化で乗客が骨折 高齢者に危険を強いるJR

週刊『前進』04頁(3189号02面04)(2021/04/05)


ワンマン化で乗客が骨折
 高齢者に危険を強いるJR


 恐れていた事態がやはり起きた。3月16日午後1時半ころ、外房線の太東(たいとう)駅で、ワンマン列車に乗っていた高齢の男性がホーム上に転倒し大腿部(だいたいぶ)骨折の重傷を負う事故が発生した。男性が完全に列車から降りていない状態で列車のドアが閉まったことが転倒の原因になったとみられている。運転士は異変に気が付き、急いで列車を止めた。
 JR東日本は3月13日のダイヤ改定で、千葉支社管内では内房線、外房線、鹿島線に新たにワンマン運転を導入した。事故が起きたのはその3日後だ。すべての責任は危険なワンマン運転の導入を強行したJR東日本資本にある。運転士に責任を負わせることは許せない。
 列車運行の安全は、運転士と車掌がペアになって仕事をすることで保たれてきた。列車が駅に停車するたびに、車掌はホームに降りて安全を確認する。乗客の乗降が済んだことを見極めて、車掌はドアを閉め、運転士に発車の合図を送る。列車が動き始めても、ホームを通過し終わるまではホーム上の安全を確かめ続ける。その車掌を廃止するワンマン化は、安全を根本から破壊するものだ。
 ワンマン化のためにJRが新たに導入した車両は、車両の両端にカメラが取り付けられ、そのカメラが撮影したドア付近とホーム上の映像が運転台上のモニターに映し出されるようになっている。「モニターがあるから安全の確認はできる」というのがJR資本の言い分だ。だが、それは机上の空論にすぎない。
 モニターでは、車内での乗客の動きは把握できない。降りようとしている人がいても、運転士には分からない。高齢者や体に障害を持つ人々ほど危険な状態にさらされる。ワンマン運転は直ちに中止すべきだ。
 この事故で重傷を負った男性は、駅員の手配した救急車で病院に運ばれたという。太東は駅員のいる駅だったから、まだしもこうした対応ができた。とはいえ、太東駅も業務はJRの子会社のJESS(JR東日本ステーションサービス)に外注化されている。駅員がホームに立って安全を確認することもない。ホーム上で起きた事故を、駅員が必ず把握できるとは限らないのだ。
 それ以上に深刻なのは、外房線や内房線では駅の無人化が次々と進められているという事実だ。事故が無人駅で起これば、受傷した乗客は誰にも気が付かれずに放置されることさえあり得る。
 動労千葉は「ワンマン化が強行された後こそ本当の闘いだ」という決意のもと、地域の人々との連帯をさらに深めて、闘いを継続している。ワンマン化は鉄道の安全と地域住民の生活を破壊する。労働者と住民とが手を携えて展開されるワンマン化反対の粘り強い運動は、民営化を軸に強行された新自由主義の攻撃に立ち向かう重要な闘いの柱になりつつある。

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