焦点 米安保戦略指針 中国を「唯一の競争相手」と名指し
週刊『前進』04頁(3187号03面03)(2021/03/22)
焦点
米安保戦略指針
中国を「唯一の競争相手」と名指し
米バイデン政権が3月3日、外交、軍事、経済政策の基本路線を示す「国家安全保障戦略」の新たな策定に向けた指針を公表し、中国を「国際システムに対抗しうる唯一の競争相手」と名指しした。米軍の戦略配置については中東を「適正規模」に縮小し、インド太平洋などへの戦力の重点配備を進めることを明記した。
同盟国動員し対中対決
トランプ前政権が2017年12月に策定した国家安保戦略では、「強国同士の競争の時代が再び戻ってきた」という時代認識を基調に据え、「(米基軸の世界秩序に対する)修正主義勢力である中国とロシア」に対抗することを最重要課題とした。核による先制攻撃をも辞さないことも明言し、実戦での使用を想定した新型核兵器の開発・製造に踏み出した。またロシアとのINF(中距離核戦力)全廃条約を一方的に破棄した上で、対中国を念頭に、日本を含むアジアの同盟国に中距離ミサイルを大量配備する新たなミサイル網構想を打ち出した。対してバイデン政権の「指針」は、中国を「唯一の競争相手」とし、対中関係を「21世紀最大の地政学上の試練」(ブリンケン国務長官)と位置づけることで、トランプ以上に徹底した対中対決戦略を進めることを明らかにした。他方で、前政権からの転換点として強調されているのは同盟国との関係である。「指針」では「世界中の同盟国や友好国との関係を復活させる」と明記し、これらの同盟関係こそ「米国の最も重要な戦略的資源」と強調した。
政権交代を前にした昨年12月、歴代政権の対日政策に大きな影響を及ぼしてきた有力シンクタンクCSIS(国際戦略問題研究所)の第5次アーミテージ・ナイレポートが公表された(3175号本欄で既報)。レポートは「日米はこれまで以上に双方を必要としている」として「対等な日米同盟」への転換を要求、日米安保を「相互運用」から進んで「相互依存」のレベルまで高めるよう提言し、特に日本のミサイル防衛網の強化と米・英・加・豪・ニュージーランドの5カ国による機密情報共有機構「ファイブ・アイズ」への日本の加入を求めた。バイデンの同盟国重視戦略も基本的にこれを踏襲している。要するに、アメリカ帝国主義の没落とその世界支配力の著しい衰退の中で、日本などの同盟国の力を可能な限り動員する以外に対中対決戦略も成り立たないということだ。
日米安保の原理的転換
そしてこのことは、中国との戦争を具体的に想定し、そこに米軍のみならず自衛隊を最も重要な前線攻撃部隊として動員し、沖縄をはじめ日本全土をその出撃拠点にするといった、本格的な戦争遂行同盟へと日米安保を原理的に転換していくことを意味する。すでに米軍と自衛隊の日常的一体化が進み、沖縄や本土でオスプレイなどを使った危険極まる低空飛行訓練が常態化しつつある。また米インド太平洋軍は、沖縄からフィリピンに至る第1列島線に沿って米軍の対中ミサイル網を構築するため、2022会計年度から6年間で総額273億㌦(約2・9兆円)の予算を投じるよう求める要望書を米議会に提出した。住民の命と生活を踏みにじり、巨額を投じた大軍拡と改憲・戦争政策を進める菅政権に、沖縄をはじめ怒りの声が沸騰している。この声を結集し改憲・戦争阻止!大行進の大発展をかちとろう。