保健所は命と健康の砦 保健師・医師をもっと増やせ

週刊『前進』04頁(3185号02面04)(2021/03/08)


保健所は命と健康の砦
 保健師・医師をもっと増やせ

(写真 左奥に見える都立墨東病院の労働者に向けて激励のシュプレヒコールを行うデモ隊【2月21日】)


 都立病院なくすな2・21集会&デモは地域の怒りと結合する感動的な地平を開いた。小池都知事は今都議会に都立病院の独立行政法人化に必要な定款(根本規則)案を提出できないところに追い込まれている。独法化は絶対に阻止できる。そして保健所は公立病院と連携する地域の命と健康の砦(とりで)だ。保健師・医師をもっと増やせ! 集会では保健所の現場から闘いの報告がされた。

過労死してからでは遅い

 「感染拡大の中で、毎日22時、23時、あるいは日付をまたぐような残業で必死に業務を行っています。所属の職員だけでなく、応援の保健師、応援の事務職員も同様に残業しています。......過労死レベルの労働時間が続いています」(現場の「緊急要請書」から)。これが保健所の現状だ。休日の確保と超過勤務・負担の軽減は当然であり、人員増が絶対に必要だ。
 保健師のコロナ対策業務は膨大だ。昼夜の電話当番、医師の指示の下での病状確認、PCR検査の対象か否か、検査日時・場所の確認と連絡、陽性の場合は感染経路を調べ、入院や施設・自宅療養の振り分け、濃厚接触者の確認と検査の勧奨、自宅療養の場合は1日2回の病状確認の電話など多忙を極めている。
 「過労死してからでは遅い」と、現場から闘いが始まった。それ自体が労働組合の再生をかけた闘いだ。

コロナ以前から残業が恒常的に

 集会当日に日曜出勤を余儀なくされた保健所の労働者がメッセージを寄せた。「本来、住民の健康と命を守らなければならない国や自治体が『健全財政』の名のもとに医師をリストラしてきた」。東京・特別区では保健所の数を53から23に減らし、保健所を医師が不在の保健センターに切り替えたことで、人口70万人の区ではかつて12〜13人いた医師がわずか3人になった現状を弾劾した。
 保健師不足も深刻だ。コロナ発生以前から残業が恒常化し、欠員状態が続く中で、コロナ以外の感染症、食中毒などでも迅速な対応ができなくなっていた。
 地域担当の保健師は、乳幼児から高齢者まで全世代の健康を見守り、サポートする。勤務先の仕事と忙しさ、経験のなさ、貧困と病気、障害の程度、家族関係など困難は重なり合っていることが多い。家庭訪問を重ねて、困難を抱える保護者と子ども、あるいは高齢者や障害者の状態を把握し、信頼関係をつくって援助していく。児童相談所や福祉事務所、保育園、学校、医療機関などと連携して生活を支え、「児童虐待」の予防を担う。そうした業務は正規職でしか務まらない。
 しかし今や保健師の人手不足が進み、大都市圏の地域担当は1人で平均1万2千人もの住民を担当し、2〜3万人担当の保健師も出ている。1日に何軒訪問できるか、何カ月かけたらカバーできるのか、想像することも困難だ。サービス残業が日常化し、コロナ対応での応援にも駆り出されている。保健所の恒常的機能の全てが危機に陥り、破綻的な状況が続いている。

大リストラが生んだ現実

 こうした保健所の現実は新自由主義による大リストラが生んだものだ。
 メッセージで保健所労働者は、戦後の保健所法から1994年制定の地域保健法に変わり、「保健所は強化されるどころか弱体化」されたこと、95年に847あった保健所は20年には469に減らされ、医療経験を有し権限を持つ医師が所長を務める保健所から、事務職の係長が所長となる保健センターに縮小・格下げされたことを指摘した。
 「乳幼児健診は重要で直営でやることを提言されていますが、自治体の委託の流れに組み込まれつつあります。自治体が会社になってしまい、公の意味、公のやる意味を見失っています。それが保健所、保健センターの弱体化、都立病院の独立行政法人化につながっています」と弾劾した。

怒りを総結集し労働組合再生へ

 87年の国鉄分割・民営化と一体で、「医療費の増加は財政再建、行政改革の上でも、租税・社会保障負担の上でも最大の問題」とする「医療費亡国論」が横行した。その下で医療・社会保障費が徹底的に削減され、公的事業の民営化と保健所のリストラ、労組破壊が強行されていった。
 この新自由主義の攻撃に終止符を打たなければならない。労働組合の闘いが情勢を開く。職場・地域の怒りを結集し形ある闘いとしよう。都立病院独法化、全国の公立・公的病院つぶしを絶対に阻止しよう。職場の団結を再生し保健所闘争を巻き起こそう。

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保健所のリストラ
・統廃合で命と健康支える拠点を大削減
・医師が不在の保健センターに格下げ
・人員不足で乳幼児〜高齢者支援も回らず

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