コロナワクチン強制するな 労働組合の力で選択の権利を

週刊『前進』04頁(3183号03面03)(2021/02/22)


コロナワクチン強制するな
 労働組合の力で選択の権利を


 新型コロナのワクチン接種がEU(欧州連合)諸国やG7(主要7カ国)諸国で始まったことで、世界はコロナ感染拡大から解放されたかのような報道がされている。ワクチン接種で集団免疫を獲得して感染拡大を防止したコレラ、ポリオ、結核などの成功例があることは事実だ。だが新型コロナワクチンは、まだわからないことが多すぎる。医療の現実を無視したワクチン万能論や医療労働者へのワクチン強制を認めてはならない。
 ワクチンには副反応がある。2016年にはHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)が社会問題化した。日本政府による公費補助のもとで10代の女性に接種させた結果、重篤な副反応が多発したのだ。
 ワクチン副反応の危険性を示した最悪の例は、デング熱ワクチンで発現した「抗体依存性感染増強」現象による重症化だ。命にかかわる「アナフィラキシー反応」(重いアレルギー反応)は、どのワクチンでも数パーセントの割合で起きることが知られている。
 こうした理由から、WHO(世界保健機関)は20年12月に「新型コロナワクチン接種の義務化は想定していない」という見解を発表し、受ける受けないの自己決定権を重んじている。日本の予防接種法「定期接種・臨時接種」にも「接種同意を拒む権利」が明記され、ワクチンの義務付けはできないとされている。また予防接種法は国の健康被害補償も明記している。
 しかし、新型コロナのワクチン接種は、20年12月の予防接種法改定で緊急の必要がある臨時接種と位置づけられ、「国民には原則として接種の努力義務が生じる」とされた。日本帝国主義はオリンピック開催とも一体で、あくまで事実上の接種強制を狙っている。
 新型コロナワクチンは開発時間をめぐって研究所・医薬品会社の猛烈な競争があり、開発後は各国政府によるワクチン争奪戦が激化。新自由主義医療と医療資本による独占が進められている。
 米ファイザー社、独ビオンテック社が共同開発したワクチンは、遺伝情報を記録したメッセンジャーRNAの一部を人工合成して作製した。英アストラゼネカ社などは従来型のワクチンを改良・変形した。日本はこれらの他に米モデルナ社とも契約している。また中国、インド、ロシアが開発したワクチンもそれぞれ実用化している。WHOによると、現在開発中のワクチンも20種以上ある。肝心の集団免疫獲得すら証明されていない段階で、国家間のワクチン争奪戦とワクチン外交が激しく展開されているのだ。
 2月17日には国内で、医療労働者へのワクチン先行接種が始まった。日本政府・厚生労働省は、3月中に約370万人の医療労働者に、4月以降に65歳以上の高齢者約3600万人に接種するとしている。09年に新型インフルエンザが流行した際に「ワクチンの医療従事者優先接種」が決まり、接種を希望するか否かを問われた医療労働者のうち約290万人が希望すると回答した。現在、政府が予定している医療労働者への先行接種計画には「希望・同意の有無」が明記されているのか。
 資本・権力による医療労働者への優先接種を「ワクチン拒否による感染は自己責任」論へと誘導してはならない。ワクチン接種の安全性などわからないことが多いことを公然と認め、討論し、労働者の側のヘゲモニーで「接種同意か拒否か」を選択する権利が重要だ。コロナ対策の第一は医療現場の人員確保・防護体制強化であり、医療労働者の労働条件の改善ではないだろうか。
(林佐和子)
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