埼玉県立病院をなくすな 独法化は医療崩壊促進だ

週刊『前進』04頁(3181号02面04)(2021/02/08)


埼玉県立病院をなくすな
 独法化は医療崩壊促進だ


 今年4月から、埼玉の県立病院が独立行政法人化される。すでに昨年2月、病院を経営する「地方独立行政法人埼玉県立病院機構」の定款が県議会の全会一致で可決された。埼玉労組交流センターは現場の医療労働者・自治体労働者、そして都立病院独法化絶対反対で立ち上がる東京の仲間とともに独法化に反対し、医療崩壊に立ち向かう決意だ。
 埼玉県も、新型コロナウイルスの「緊急事態宣言」下にある。県のホームページによれば2月2日現在、埼玉県内の入院患者数は970人で病床使用率73・4%。そのうち重症患者は71人で病床使用率50・4%。県内の陽性者で「自宅療養」となっている人のうち、「入院調整」が48時間以上続いている人が52人となっている。
 自宅待機中に亡くなる人も出ており、すでに「医療崩壊」が起きていると言っても過言ではない。医療労働者も保健所関係職員も、すでにマスコミなどで報道されているように「過労死寸前」、ギリギリの状態で維持しているのが現状だ。
 こうした状況の背景となっているのが「全国最低」と言える県内の医療体制だ。2018年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、人口10万人当たりの医師数は全国平均では246・7人。しかし、埼玉県は169・8人で47都道府県中、最下位となっている。このような現実の上にコロナ感染が爆発しているのだ。この現状を逆手にとり、「医師を確保するため」として強行されようとしているのが今回の独法化だ。
 埼玉の県立病院は総合病院が一つもなく、循環器・呼吸器病センター(熊谷市)、がんセンター(伊奈町)、小児医療センター(さいたま市)、精神医療センター(伊奈町)の四つの専門病院がある。この四つの医療機関が、前述した一つの「機構」によって運営されるようになる。これにより事務部門のリストラが狙われている。
 そして独法化による「医師獲得」の「目玉」として打ち出されているのが医師の年俸制であり、毎年病院長が行う面接による「評価制度」の導入である。そこでは、医師免許とは関係ない「専門医資格」による5段階評価とともに、「病院運営・経営への協力(病床稼働率の向上、コスト削減など)や人間性・協調性も評価の軸にする」と言われている。「経営や効率化」、すなわちカネのために命を選別するようなあり方に転換するということだ。医療と社会保障の崩壊が、さらに促進される。
 実際、医療現場からは「給与が高ければよいというのではなく、病院の体制(安心して医療を提供できる環境)があり、倫理観のある医療従事者がいて、はじめて労働に見合った給与が発生する」という声が上がっている。
 「医療も介護も社会保障!」「医療にもうけは必要ない!」を掲げたストライキこそ、こうした声に応え、先頭に立つ闘いだ。これに続く闘いを埼玉においても必ずつくり出し、医療を社会保障として取り戻す。
(埼玉労組交流センター・A)
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