ロシアで反体制の大デモ ナバリヌイ氏逮捕に抗議
週刊『前進』04頁(3180号04面04)(2021/02/01)
ロシアで反体制の大デモ
ナバリヌイ氏逮捕に抗議
(写真 「ナバリヌイ氏を自由に」「プーチンのいないロシアを」と叫びデモをする人々【1月23日 モスクワ】)
100都市でデモ3500人超拘束
ロシア全土で「ナバリヌイ解放」「プーチン打倒」のデモが闘われている。反体制指導者ナバリヌイ氏は昨年8月、プーチン政権による毒殺未遂に遭いながら一命をとりとめ、今年1月17日に療養先のドイツから帰国。モスクワ郊外の空港で拘束・勾留されている。過去に禁錮3年6カ月の判決を受け執行猶予中のため、定期的な出頭義務を怠ったとされ実刑に切り替えられる恐れがある。それでもナバリヌイ氏は帰国し闘うことを選んだ。18日に警察署内から抗議デモを呼びかけ、19日に「プーチンの宮殿」を動画で暴露。人々の怒りは沸騰した。
恐怖にかられた当局は21日、ナバリヌイ陣営の関係者多数を予防検束した。
しかし23日、厳寒のロシアでナバリヌイ氏の解放を求めるデモが100都市以上で行われた。3500人以上が拘束された。
モスクワでは4万人がプーシキン広場と周辺の歩道を埋め尽くした。参加者は「ナバリヌイに自由を」と書いたプラカードを掲げ、「プーチンのいないロシアを」「プーチンは泥棒だ」とシュプレヒコールを上げ、治安部隊に抵抗した。
デモ参加者は、年金受給年齢の引き上げ、低賃金・低年金、貧困、政府官僚・資本家らの腐敗・汚職、極端な貧富の差、言論統制、事実上のスト禁止、弾圧・暗殺、不正選挙などへの累積した怒りをぶつけた。
毒殺未遂犯を特定「宮殿」動画を公開
ナバリヌイ氏は以前からプーチン政権の腐敗・汚職を暴露してきた。2017年3月、プーチンの側近として長く首相や大統領の地位を占めたメドベージェフの大別荘3軒など秘密資産を暴露。メドベージェフは首相を更迭され、安全保障会議副書記に追いやられた。ナバリヌイ氏は「プーチンの天敵」となった。たまらずプーチンは作年8月、連邦保安局(FSB)を使い、致死性の猛毒、神経剤「ノビチョク」でナバリヌイ氏を襲撃した。瀕死(ひんし)のナバリヌイ氏は飛行機でドイツに運ばれ治療を受けた。快復したナバリヌイ氏は英調査報道機関ベリングキャットやCNNなどの協力を得て、昨年12月、毒殺を図ったFSBのメンバー8人を特定した。反撃開始だ。
ナバリヌイ氏はFSBの仲間を装ってFSB職員に電話し、ノビチョクを仕掛けたという言葉を引き出し、音声と映像を公開した。プーチン以外にノビチョクを使った暗殺を指令できる者はいない。
そのなかでナバリヌイ氏は帰国し、「プーチンの宮殿」を暴露したのだ。宮殿は、ロシア南部の黒海を臨む7800㌶の土地に建ち、延べ床面積1万7千平方㍍を超す超豪華な大邸宅だ。建設費は1千億ルーブル(約1400億円)。広大なブドウ畑やワイン貯蔵所もある。動画の再生回数は24日に7千万回を超えた。
労働者階級の力でプーチン打倒へ
ロシアでは9月に下院選が控えている。プーチン与党の勝利は困難だ。昨年7月の全国投票で憲法改定が承認され、プーチンは24年の次期大統領選に出ることも、2期12年、2036年まで大統領を務めることもできることになった。ロシアの危機は深刻だ。2014年のクリミア半島併合以来の経済制裁と国際エネルギー価格の低落で経済成長は止まっている。石油・天然ガス輸出に依存する構造から脱出できない。アルメニアがアゼルバイジャンとの戦争で敗け領土を奪回されてもロシアは何もできなかった。ロシアの国際政治力の低下は著しい。
新型コロナ感染者・死者数は米国に迫るほど多い。政府は12月末、20年のコロナ関連死者は18万人で、以前の公表数の3倍だと認めた。ベラルーシに続いてロシアでも反政権の毎週デモが始まる。
問題はロシアの労働者階級がプーチンを倒す革命勢力へと自らを組織できるかどうかである。