デジタル改革法案許すな 住民総背番号制と地方自治破壊
デジタル改革法案許すな
住民総背番号制と地方自治破壊
〈コロナ×大恐慌〉情勢の真っただ中、菅政権は絶望的な最末期帝国主義の延命をかけコロナ危機を利用して改憲・戦争国家化攻撃をかけてきている。通常国会には反動法案が目白押しだ。菅政権は2月9日にデジタル庁の創設を核心とするデジタル改革関連法案を閣議決定し、早期成立を図ろうとしている。この法案は戦後の国の在り方を抜本的に改悪する改憲・戦争国家化攻撃そのものだ。絶対に粉砕しよう。
「クーデター計画」数年がかりで準備
デジタル改革関連法案は6法案からなり、その内の一つは約60もの法を一括で改悪する悪名高い一括法案だ(表参照)。これらの複雑きわまる法案体系は日帝が「失われた30年」とも言われる争闘戦敗北からの脱却をデジタル化にかけ、数年がかりで準備してきたものであり、まさに「戦後の国の在り方を抜本的に改悪しようとする」クーデター的な一大攻撃である。
このような重大攻撃を一般人には理解しがたい技術用語をちりばめた一括法案にして、専門知識の無い国会議員をけむに巻き、ろくに審議もせずに一気に成立させようとしている。だがコロナ危機になんら責任を取らず、逆に資本の金もうけの材料にしようとする菅政権への怒りの声は、昨年の医療労働者の根底からの決起を先頭に世に満ちている。特措法反対闘争を突破口にデジタル法案反対闘争の爆発で菅政権を打倒しよう。労働者階級の団結でコロナ危機を突破しよう。
マイナンバー制を住民総背番号制に
同法案の反動的狙いは多岐にわたるが第一に、マイナンバー制度を住民総背番号制度に換骨奪胎することである。
国家が個人情報を一括管理することへの危機感からマイナンバー制度への労働者階級人民の反発は依然根強い。マイナンバー制度の核心点の一つであるマイナンバーカードの普及率はいまだに24・6%にとどまっている(1月現在)。
そもそもマイナンバー制度は、民主党政権時代に自治労・連合の主導で「所得の把握を確実に行うために税と社会保障制度共通の番号制度を導入する」として法案化されたがいったん廃案になった。それを第2次安倍内閣で手直しのうえ成立させたものだ。
そのような経緯もあり民主党政権で制度設計されたマイナンバー制度は、建前上「国民総背番号制度」ではないものとされていた。
マイナンバー制度は外国人も含むが、それを住民総背番号制度にしない保障の一つに、マイナンバー制度の根幹をJ―LIS(地方公共団体情報システム機構)が担う点にある。
このJ―LISは現在は地方公共団体が共同で運営していて、そこの代表者会議が管理する。事実上は総務省の天下りの職員が運営に関与しているが、代表者会議の委員は自治体の首長と学者で構成されており、組織上は国から独立して運営されている。
住民総背番号制度の技術的核心は、各省庁・自治体に分散して存在する個人データの各人の識別番号に唯一無二の共通の背番号(マイナンバー)を使うことで、突合(突き合わせ)と呼ばれるマッチングをして特定の個人の情報を一カ所にあらいざらい集め(名寄せ)て利用することを可能にする点にある。
現在のマイナンバー制度では、この突合・名寄せ可能なデータ(マイナンバーにひも付けされたデータ)を法的に制限し、突合可能であっても行いにくくするためのさまざまな法的・技術的制約がJ―LISを使うことで設けられている。
そこで今回の法改悪ではこの制度の根幹であるJ―LISを国と地方の共同団体の管理に変え、デジタル庁と総務省で共同主管し、デジタル大臣と総務大臣が目標設定・計画認可し、改善措置命令に違反するとJ―LIS理事長を解任するなど、事実上の国家管理化を狙っているのだ。J―LISが国の管理となれば、住基ネットとマイナンバー制度が全住民への総背番号制度に化けることになる。
実際、コロナ危機に乗じて医師や看護師の国家資格をマイナンバー制度にひも付けようとしている。さらには医療データや教育データまでひも付けようとしている。これらを許せば、まさに戦時における徴兵・徴用が徴兵検査抜きに可能になる。「現代の赤紙制度」と呼ばれる理由だ。
地方自治制度解体し「内務省」を復活
同法案の反動的狙いは第二に、各地方自治体が自治体労働者と住民の闘いを背景に独自に設定してきた個人情報保護条例を解体して全国共通ルールに一元化することである。これはデジタル化推進にあたってEU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)に合わせることを口実に、各自治体ごとの個人情報保護条例を否定するものだ。
「国―地方で情報共有を容易にするためのシステム標準化と個人情報を一本化する」と称して、アマゾンのコンピュータシステムであるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を「第2期政府共通プラットフォーム」に採用し、昨年10月には稼働を始めている。
個人情報保護基準が国の低い水準で一本化され、コンピュータシステムまで一本化された時、戦後の地方自治制度の根幹が否定され、まさに戦前の内務省の復活を許すことになる。
これらの攻撃に対して、東京の小金井市議会が「法律による自治体の個人情報保護制度の標準化に反対する意見書」を全会一致で採択、国立市議会、あきる野市議会も慎重な検討を求める意見書を採択している。
全住民の個人情報をIT企業に開放
同法案の反動的狙いは第三に、争闘戦の敗北を取り戻そうと、デジタル情報を強欲なIT企業に開放して競争力の回復を狙うことである。
以上見たように、すでに明らかになっているだけでもデジタル改革関連法案の超反動性は明らかである。自治体労働者を先頭に戦争・改憲阻止!大行進の正面課題として国会闘争に総決起し、他の反動法案もろともデジタル改革関連法案を粉砕しよう。労働者の団結で菅政権を打倒しよう。
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デジタル改革関連法案の全体
(すべて仮称)
デジタル社会形成基本法案
IT基本法を廃止。基本原則記述
デジタル社会形成関係整備法案
約60本もの法を一括改悪。自治体の個人情報保護を一本化など
デジタル庁設置法案
首相直轄の強い権限を持つ庁を設置
公的給付支給預貯金口座登録法案
スマホ等で給付の口座登録が可能に
個人番号利用預貯金口座管理法案
複数の預貯金口座をマイナンバーにひも付け(災害時の利便性を口実に 全財産を国が完全に掌握)
地方公共団体情報システム標準化法案
地方自治体のコンピュータシステムをAWSに一本化する(本文参照)