「命令拒否に罰則」の悪法 コロナ関連法の改悪阻め 改憲と戦争体制づくりが狙い
「命令拒否に罰則」の悪法
コロナ関連法の改悪阻め
改憲と戦争体制づくりが狙い
菅政権は1月22日、緊急事態宣言の法的根拠となる新型コロナ特措法と感染症法などの改悪案を閣議決定し、国会に提出した。2月上旬成立、中旬施行を狙っている。改悪の柱は罰則の導入である。入院勧告を拒んだ感染者や、営業時間短縮・休業の命令に従わなかった事業者に罰則を科す。これは「感染症対策」に名を借りて労働者人民を恫喝し、国家による監視と統制、支配を強めるものである。戦争体制づくりであり、コロナに便乗した改憲攻撃そのものである。絶対に許してはならない。コロナ関連法改悪阻止・菅政権打倒へ総決起しよう。
人民に責任を転嫁し脅す
菅政権はオリンピックや「Go Toキャンペーン」を優先することで感染症を全国に広げ医療崩壊をつくり出した。感染者と医療・介護労働者に過酷な状況を強いている。また、緊急事態宣言の発出で解雇され、賃金を削られ、貧困・飢餓に突き落とされる労働者家族が激増している。人民の怒りは渦巻き、菅政権は危機を深めている。
だからこそ菅政権は強権支配を強めてこの危機を突破しようとしている。罰則導入を強く主張しているのは菅首相自身である。
政府提出の改悪案の主な内容は次のとおりである。
(1)新型コロナ特措法の改悪案
①緊急事態宣言下で事業者が休業や営業時間短縮の命令に従わなかった場合、50万円以下の過料
②宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設。知事が飲食店などに営業時間の変更・短縮を命令できる。違反者に30万円以下の過料
③命令を出す場合に立ち入り検査や報告を求めることができる。拒否した場合に20万円以下の過料
(2)感染症法の改悪案
①入院を拒否した感染者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
②保健所の聞き取り調査(行動歴など)を拒否した場合には50万円以下の罰金
③国や知事が病院などに患者受け入れを勧告でき、従わない場合には病院名を公表
----以上が、改悪案の要点である。罰則の導入で感染拡大が抑えられるわけではない。改悪の真の狙いは「国民の命と生活を守る」ことではなく、感染拡大、医療崩壊をつくり出した国家・政府の責任を覆い隠し人民に責任を転嫁し、支配階級の延命のために人民の怒りと闘いを暴力的に抑えつけることにある。
入院したくてもできないで重症化し、自宅で死亡する人が相次いでいるではないか! その現実を何も解決しないで、罰則で人民を脅しつけるとは何事か! 怒りに堪えない。
入院を拒否する人には、家族や仕事など、よほどの事情があるに違いない。改悪されれば、罰則を恐れて検査を受けない人や、検査結果を隠す人も増えるだろう。それでは逆に重症化と感染拡大を招いてしまう。
「休業命令や時短命令に従わなかったら過料」というが、そこで働く事業者・労働者の賃金・生活補償はどうするのか。改悪案では、「必要な財政上の措置を講ずる」と、まったくあいまいだ。現に今、生活困窮者が激増しているのに、政府は第3次補正予算で「Go Toトラベル」の1兆円の追加予算を生活困窮者・医療従事者の支援に回すことを拒否した。持続化給付金や家賃支援も打ち切った。本気で補償するつもりは全然ないのである。
「まん延防止等重点措置」の新設も重大な攻撃である。緊急事態も宣言しない段階で、政府が独断で、罰則つきで営業時間などを制限できる。発出の要件はあいまいである。憲法上の国民の権利を制限するものであり、首相独裁、改憲攻撃の先取りである。
「受け入れ拒否の病院名を公表する」というが、医療体制の崩壊で、感染者を受け入れたくても受け入れられない状況をつくり出しているのは日帝・政府そのものではないか。その困難な状況の中で医療従事者はみんな、懸命に働いているのだ。それを病院名を公表して陰湿なバッシングをあおり、分断・敵対・差別を扇動することをどうして許せるか!
多くの団体と人民が改悪反対の声を上げている。1月14日、日本医学会連合(日本感染症学会など医学系136学会が加盟)は、罰則導入に反対する声明を出した。声明は「かつて結核・ハンセン病では患者・感染者の強制収容が法的になされ、まん延防止の名目のもと、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、著しい人権侵害が行われてきました」と負の歴史を語り、「罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を惹起(じゃっき)することにもつながり、......公衆衛生施策において不可欠な、国民の主体的で積極的な参加と協力を得ることを著しく妨げる恐れがあります」と述べている。その通りである。さらに日本公衆衛生学会、日本疫学会などが罰則に反対する声明を続々と発している。
新自由主義打倒こそ必要
そもそも日本での感染拡大と医療崩壊は、歴代の自民党政権が長期にわたり財界と一体となって「命より金もうけ」の新自由主義政策を展開し、医療・介護事業をも営利事業化してきた結果である。この30年あまりで全国の保健所は半分近くまで減らされ、感染症などの急性期病床は「もうからない、利益が少ない」という理由で政策的に減らされてきた。その結果、日本の医療体制は感染症の拡大に対応できないものに変えられてしまったのだ。
ここまで感染拡大と医療崩壊を引き起こしながら、菅政権は「Go To」になおも予算をつけ、病床削減と公立・公的440病院の再編・統合を強行しようとしている。また5・3兆円という過去最大の防衛予算を計上し、日米戦争同盟強化、対中国・北朝鮮戦争体制づくりに巨額の税金を投入しようとしている。
小池百合子都知事も同罪である。菅政権と一体でオリンピックのために税金と職員を動員し、都立・公社14病院の独立行政法人化(営利優先と労働組合つぶし)を強行しようとしている。コロナ関連法改悪は、こうした反人民的な政治の継続であり、わき起こる労働者人民の怒りと闘いを、国家暴力で抑えつけようとするものである。
本音は「改憲の実験台」だ
もともと帝国主義国家の感染症対策は治安的観点から立てられている。資本家階級が労働者階級を支配し搾取する国家体制を維持し防衛することが核心であり、人民の生活と健康、命を守ることなどは二の次、三の次だ。それは戦争で、兵士・人民を消耗品のように酷使して何十万何百万人も殺し、それで帝国主義国家が延命を図るのと同じ考えである。今回の改悪案で、新型コロナ特措法と緊急事態宣言そのものの治安的本質、反人民的な本質があらわになった。
昨年1月30日、自民党幹部の伊吹文明は、党の会合でコロナ緊急事態宣言について、「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台だ」と述べた。首相独裁・憲法停止・人権剥奪(はくだつ)を可能にする「緊急事態条項」(国家緊急権)を憲法に創設することは、9条破棄とともに自民党が改憲で狙う最大の項目である。戦争体制づくりとプロレタリア革命の圧殺のために、支配階級はどうしてもそれを必要としている。
だから、どんなに人民がコロナ禍に苦しんでいても、自民党にとっては「憲法改正」こそが大目標であり、コロナ禍はその格好の「実験台」でしかないのだ。これは自民党全体の考えであり、菅政権の考えである。
もともとコロナ特措法には、緊急事態宣言下において、△NHKに「必要な指示」ができる、△住民にみだりに外出しないよう要請できる、△学校・集会場等の使用制限・停止の要請または指示、△土地・建物・物資の強制使用、△医薬品等の売り渡し要請、収用、保管命令----などが規定されている。一つ一つが「緊急事態」を口実にして人民の基本的権利を制限するものである。自民党・菅政権は、これを最大限に利用して、「人権の制限、国家の強権発動」を当然とみるような風潮をつくり出し、改憲への道を切り開こうとしている。
ところが緊急事態宣言には、「宣言を発出すること自体はやむを得ない」(日本共産党・志位和夫委員長)とか、「後手後手の対応だ」(立憲民主党・枝野幸男代表)などと全政党が賛成してしまっている。政府や資本家が宣言を利用して大合理化(賃下げ、首切り、労働強化)や強権発動を正当化している時に、こんな資本家政府に強大な権力を渡しておいて、どうして労働者人民の命と生活を守ることができようか。今必要なことは、一ミリも譲ることのできない労働者人民の生存をかけた闘いを、自分たち自身の力で現場から巻き起こすことだ。
国会闘争に総決起しよう
「命より金」の新自由主義が、感染症にこれほどにももろい社会をつくり出した。労働者を搾取して社会の富を奪う資本家階級には〈コロナ×大恐慌〉を解決する力はない。危機の時代の変革の主役は、生産と社会活動の現場を握る労働者だ。世界の労働者階級の団結した力、共同性の発揮こそがコロナ危機を克服し、真に豊かに健康に、失業・貧困・飢餓・戦争の不安なく、平和に暮らす社会をつくることができる。労働者階級が政治と経済、社会の実権を握ろう。それはまったく可能であり、現実的だ。そのために職場で団結し、階級的労働運動の前進をかちとろう。
政府・東京都はオリンピックを中止し、数兆円の経費・施設・資材、人員をコロナ対策に回せ! 選手村を開放し、コロナ感染者のために使え!
「Go To」予算、軍拡予算を中止し、コロナ対策に回せ! 公立・公的440病院の再編・統合と都立病院独法化をやめろ!
すべての困窮者に十分な補償を! 金持ちに、もっと課税を! 消費税廃止!
医療従事者、エッセンシャル・ワーカーへの十分な補償、医療体制の圧倒的拡充を!
緊急事態宣言反対! コロナ関連法改悪阻止! 菅政権打倒! 国会闘争へ総決起しよう。
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■新型コロナ特措法改悪の政府案
△緊急事態宣言下で事業者が休業や営業時間短縮を命令できる。命令違反には50万円以下の過料
△宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設。知事が営業時間の変更を命令できる。違反者に30万円以下の過料
△命令を出す場合に立ち入り検査や報告を求めることができる。拒否した場合に20万円以下の過料
■感染症法改悪の政府案
△入院を拒否した感染者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
△保健所の聞き取り調査を拒否した場合には50万円以下の罰金
△国や知事が病院に患者受け入れを勧告。従わない場合には病院名を公表