焦点 北朝鮮核問題 米日の戦争政策こそが危機の元凶

週刊『前進』04頁(3179号03面02)(2021/01/25)


焦点
 北朝鮮核問題
 米日の戦争政策こそが危機の元凶


 1月5~12日に開かれた朝鮮労働党第8回大会で、北朝鮮・金正恩政権は米帝を「最大の主敵」と規定し、これに対抗するための核戦力の強化を経済危機の突破と並ぶ最大の国策として掲げた。米本土を直接狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の高度化や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発、戦術核兵器の開発などを推し進めるとしている。金正恩はこの大会で総書記に就任。名実ともに父の金正日、祖父の金日成と同じく国家の独裁権を握る位置に立ち、「最強の軍事力を育てることに全力を尽くす」と宣言した。
 1月20日には米でバイデン新政権が発足し、トランプ前政権の内外政策の「見直し」が打ち出されている。朝鮮半島の「非核化」をめぐる米朝交渉は2019年2月のハノイ会談の決裂をもってすでに破綻していたが、朝鮮半島での軍事的緊張が再び強まっていくことは間違いない。

経済制裁は戦争行為だ

 菅政権と日帝はこの情勢をも利用して、「敵基地攻撃能力」の保有と改憲攻撃に突き進もうとしている。だが朝鮮半島での戦争の危機を一貫してあおってきたのは、北朝鮮よりもむしろ圧倒的に米帝や日帝の側なのだ。
 何よりも、2006年に始まり17年には石油や食糧などの生活必需物資を含む一切の貿易・金融の遮断にまでエスカレートした北朝鮮への経済制裁は、それ自身がまさに北朝鮮全土への戦争をしかけるにも等しい攻撃だ。米帝や日帝を先頭にしたこの経済制裁は、北朝鮮の権力者を罰すると称して実際には約2500万人の北朝鮮人民全員を標的にし、兵糧攻めにして大変な被害と苦しみを強制し続けてきたのである。
 2018~19年の米朝会談の本質は、17年の韓国ろうそく革命によって帝国主義の東アジア支配が崩壊する危機に直面した米帝と、経済制裁の重圧にあえぐ金正恩政権とが互いの利害に基づいて行った一時的取引にすぎない。米帝の側は、「非核化」と引き換えに金正恩が求めた制裁解除に応じる意思など最初からなかった。その逆に米帝は自らの世界支配力の後退を巻き返すために「核戦略見直し(NPR)」を打ち出し、戦場で実際に使うことを想定した小型核兵器の開発にのりだした。当時の日帝・安倍政権はこれを「核の傘の強化になる」として全面支持し、日米安保の核戦争同盟化を図る一方、核兵器禁止条約への署名も拒否したのだ。

労働者の国際的団結を

 こうした中で昨年、コロナ危機が爆発した。北朝鮮では、経済制裁下で唯一の頼みの綱だった中国との輸出入が昨年1月からの中朝国境封鎖によって途絶し、対中貿易総額は前年の4分の1に激減した。加えて昨年夏には大洪水が穀倉地帯を襲った。これに追い詰められた結果が今回の金正恩政権による「核戦力強化」宣言だ。
 だがこれは同時に、北朝鮮スターリン主義の歴史的破産をも示している。プロレタリア世界革命による帝国主義の打倒を否定し放棄して、核には核で対抗することによって自己の権力の延命を図るという路線は労働者階級の闘いを根本的に裏切り、それに敵対するものだ。結局は帝国主義による侵略戦争のえじきとなるしかない。
 戦争を阻止し、核兵器を全世界から廃絶する力はただひとつ、世界革命に向けた労働者階級の国際的に団結した闘いの中にある。このことを明確にして闘おう。
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